74, 黒霧の中
『んっ⋯⋯⋯。ん"ん"っ⋯。』
ハーディは、何処からか聞こえてくる唸り声に気づき、目が覚めた。
(シャルルさん?)
そっとベッドを降りて部屋を出る。廊下の奥の窓から微かに廊下を照らす月明かりを頼りにシャルルに使わせている部屋に近づき扉を開ければ、途端に視界が漆黒で塗りつぶされた。
「ひゃっ!!」
(霧ですかねぇ。火事って感じじゃ無さそうですし⋯⋯。)
何かが肌を包み込むような、謎の感覚。数回空を切るように手を彷徨わせれば、手が壁の感触を探し当てた。
「シャルルさん?」
「⋯⋯⋯。」
記憶を頼りに真っ暗な部屋を進むと、ベッドらしき物にたどり着いた。そして、何かひどく熱いものがハーディの手に触れる。
「⋯⋯、ハー、ディ?」
しばらく経って聞こえてきた小さく掠れた声は、予想していた少年のものではなく、既に懐かしい青年のものだった。
「シャルルさん?大丈夫ですか?」
「何で、ハーディ、ここに居るの。早く⋯部屋から出て。」
ハーディの手に触れているそれはモゾモゾと動いて、ハーディの腹をを弱々しく押す。
(まさか、この熱いのシャルルさんの手ですか!?)
「シャルルさん、なんで」
「⋯っ」
「⋯⋯もしかして、魔力暴走のせいですか?」
「わかって⋯ら、逃げ」
「魔石を探せば良いんですか?」
「⋯⋯⋯?」
「だから、この症状を解決する方法です!!」
「魔石なんて、ない」
「昼間もらいましたよ〜!!ゾエさんから。」
「は⋯⋯?ゾエ?なんでハーディさんがゾエのこと知って⋯⋯。」
余程驚いたのか、さっきよりも少しはっきりとした声が聞こえてくる。
(ひょっとして、小さなシャルルさんのときの記憶がないのでしょうか。意識が切り替わったら記憶も変わるのかな?)
「⋯⋯、あるなら欲しい。」
「わかりました!!」
ハーディは離れていこうとする手を1回ぎゅっと握ると、すぐに手を離してその場に屈んだ。
(えっと⋯⋯、寝る前に確認したときは机の下の辺りに鞄を置いてましたよね〜?)
赤ちゃんがする(と聞いたことがあるだけで実物を見たことはないが)四つん這いのポーズで部屋の中を徘徊する。
「あ、これですね!!」
「⋯⋯。」
ハーディはまたベッドまで戻り、シャルルに複数個の魔石を渡した。
「ゆっくりで良いですから、この中に魔力とやらを注いでくださいね。私はその間、少しでもシャルルさんの熱を下げるために濡れタオルとか準備してきます。」
「⋯⋯⋯ごめん。」
「お役に立てるのならば光栄です。」
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