73, 夜ご飯
ハーディは音を立てないように気をつけながらソファーに近づき、彼に声をかけた。
「シャルルさん。夜ご飯は何が良いですか?」
「えっ⋯?」
シャルルは驚いたようにハーディを見上げる。きっとその驚きは急にハーディが近付いてきたことではなく、夕食の相談をされたことに対してなのだろう。
「お姉さんが好きなもの作ってあげますよ!!」
「いえ。家に泊めてもらうだけで充分なので、何でも良いです。」
シャルルは既に半分が透明から黒色になりつつある魔石を握りしめるとそう言った。
(この反応は⋯⋯、今更緊張してきたやつですね。)
実は、シャルルは2階に上がってきてからずっとソファーで体を丸めてじっと座っているのだ。借りてきた猫のようとでも言うのだろうか。
(まぁ、シャルルさんからしてみれば、突然巨大化した幼馴染さんに大量の魔石渡されて、初対面な女性と一緒に居るんですし、怖くなるのも納得ですね。あれれ?落ち着いてみればこの状況、普通に誘拐もどきじゃないですか?え、本当にここにきてよかったの?)
取り敢えずハーディは思考を一旦捨ててソファーの前まで歩いていくと、シャルルの前にしゃがみ込んだ。
「ここはしばらくあなたの家です。まぁ、シャルルさんの魔力暴走が収まるまでですけどね。」
「その、魔力暴走って何なの?」
「シャルルさんが苦しいよ〜!!ってなることですね。」
「俺、別に苦しくないよ。」
「例えですよ。でも、違和感はあるんでしょう?」
「⋯⋯わからない。」
「そうですか。まぁとにかく!!今は貴方は私に好きなものを教えないといけないんですよ〜!!」
ハーディはシャルルの髪の毛をワシャワシャと両手で撫でた。実際は撫でるのが下手すぎて掻き回したの方が正しいのだが、まぁ、ギリギリ許容範囲内だろう。
「なにそれ」
下から聞こえるシャルルの声が少し柔らかくなった気がして、ハーディは微笑んだ。
「さぁ、食べたいものは?」
「⋯⋯⋯⋯⋯。」
シャルルはハーディの顔をしばらく眺めて、口を開いた。
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