42, 月の聖女
「腐りそうな物は全部食糧庫に入れて、あっ、2階のカーテンも閉めなきゃ。」
「何で私が手伝わないといけないの?」
「ごめんね、イヴちゃん。詳しくは話せないんだけど、もしかしたらしばらく戻ってこれない可能性があるから。」
「⋯。」
ハーディはイヴに手伝ってもらいながら、着々と準備を進めた。
(きっと、早くても来週には捕まるだろうから、気をつけなきゃ。)
きっと私は、あの人たちには逆らえない。あの人たちから逃げられない。
「ねぇ、イヴちゃん。もし、私が姿を消しても、魔法騎士団の人たちには言わないでね。」
(みなさんに迷惑かけたくないから。)
「何で?ねぇ、ハーディ、どうしたの?何かあったんでしょ?」
「ごめん。」
「⋯。」
「それに、もしもの話だよ。私はここでジュース屋さんを開いて、すごく幸せな生活を送ってる。そう簡単に消えたりなんてしないよ。」
「⋯。」
イヴが心配そうに階段からこちらを覗き込んだ。
「じゃあ、2階の作業を続けてもらって⋯」
コンコン、とお店の扉がノックされた。
(あれ?プレートはOPENにしてなかったはずだけど⋯。)
「はい。すみません、しばらくお店は閉めさせてもらう予定なんで」
「関係無いですよ。私は貴女に用があるんです。月の聖女様。」
「⋯!」
(何が何でも速すぎるよ⋯。)
扉の前に居たのは、純白の修道女の服を着た先ほどの女性。ハーディは足に力が入らなくなって、その場に座り込んだ。
「いけない人ですね。保護者に嘘を付くなんて。」
「ごめんなさい。」
「まぁ、この地を離れる用意を済ませてくれたので不問にしましょう。もし本当に偽物でも、背中に紋章があるか確認すればいいだけの話です。」
「⋯。」
「ちょ、ハーディ。」
「ごめんね、イヴちゃん。」
ハーディはふらりと立ち上がり、店の外に出て扉を閉めた。
(こんなに従順になって、私、自分でも驚きだな。)
「さぁ、行きましょう?月の聖女様。」
「⋯⋯⋯はい。」
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