33, 帰還の鐘の音
無事に祝福の実を仕入れる契約をザナとローツと結び、ハーディは沢山のお土産(祝福の実)を持って家へと帰ってきた。
「この2日間、すごく楽しかったな。」
○△○
『うわ~、妹ができた気分やったのに〜。ハーディちゃん帰らんで〜』
『アホローツ。ハーディちゃん困っとるよ、離してあげりぃや。』
『ま、また来ますので⋯』
帰り際にローツが号泣してハーディに抱きついていたのも今では良い思い出だ。
○△○
(すごく可愛がってもらったなぁ。)
ハーディは扉を開けるために一旦祝福の実の入った木箱を足元に置いた。
「よし、お二人にすごく褒めてもらったし、祝福の実のジュースはあのときの作り方で確定しよう。」
「新作って、祝福の実を使うんだ。」
「はい!!って、え?」
ハーディは思わず振り向いた。真っ先に目に入ったのは綺麗な黒髪。こちらを見下ろすジトッとした瞳には、驚いて口を開けたままの私が映っていた。
「誰も当たらなかったよ。新作ジュース予想大会。」
「し、シャルルさん?」
「お久しぶり。まぁ、1週間程度だけど。」
「え?」
そのとき、街に鐘の音が響いた。カランカラン、と軽快に、人々に用件を伝える。
「騎士団の、帰還。」
「あと1時間くらいであいつらも追いつくと思う。」
(本当に、帰ってきたんだ⋯)
じわりじわりと、彼の声が体の中に広がった。植物が水を全身で受け止めるように。不足していたものがようやく戻ってきたのだと確認するように。
何で鐘が鳴るよりも先に街に居るのだとか、聞きたいことは山のようにあるけれど。
「帰ってきてくれて良かった。本当に良かった⋯。」
「⋯!」
(嬉しいな。嬉しいな。)
今まで、騎士達の帰還の鐘を聞いても、何も思わなかった。私にとってただただ、鐘が鳴っているだけで。
「シャルルさん、どこも怪我していませんよね?」
「え、まぁね。怪我するような敵でもなかったし。」
「喉は、渇いていませんか?」
「まぁ、渇いてるけど⋯。」
「今から祝福の実のジュースを作ります。魔法騎士団の人たちからはお金は取りません。ぜひ飲んでください。お祝いです。」
「じゃあ、ありがたくいただこうかな。」
(鐘の音って、こんなに安心させてくれるものだったんだ。)
ハーディは涙でぐちゃぐちゃになりながら、シャルルを店の中に招き入れた。
○△○ オマケ ○△○
「ここの木箱って?」
「祝福の実です。」
(きっと、いや絶対、祝福の実の果樹園のオーナーに可愛がられたんだろうな。)
シャルルはお土産の祝福の実がぎっしりと詰まった木箱達を見てそう思った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
シャルルさんがいなかったのは作者も思ったより寂しかったです。




