25, 出陣
「ハァ〜〜〜〜〜。面倒くさい。」
「仮にも団長がそんなこと言うんじゃねぇよ。」
「団長がサボり魔な時点で終わりでしょ?」
「お前がそれを言うのかァ?」
「ほらほら、出陣、次俺等だよ?」
シャルルは左腕である隊長の苦笑いを見てもう一回溜息を吐きながら愛馬に乗る。
「お前も久しぶりの遠出が出陣とか嫌だろ。」
よろしくの代わりに撫でながらそういえば、言っていることがわかるのか分からないのか、馬は軽く嘶いてみせる。
「ハーディさんに一言でも言えたらよかったが⋯。」
「なんで彼女が出てくるんだ。」
「え?団長、自覚無し?」
「は?」
2人は驚いたようにこちらを見たあと、
「副団長、こっち。」
「おう。」
そう言って奥の方に行ってヒソヒソと何かを話すとこっちへ戻ってきた。
「何だよ。」
「いいえ!」
「なにもねぇ。」
(⋯、本当に何なんだ。)
シャルルはローブをかぶり直す。
まずここから面倒くさい。
出陣するのに人目気にしてローブ被るとか我ながらふざけている。
(でも、煩わしい音を遮断するのにはもってこいなんだよな。)
全ての音が、雑音に変わる。
(何で黒髪なんかを団長にするんだ。)
俺が強いから。そんなことはわかってる。けど、黒髪差別主義の多い世の中ではそれは通用しないだろう。
(汚い手口を使ったなーだの。金を積んだだろ、だの。実にバカバカしい。)
全てが不愉快で、だから逃げる。そんな自分がさらに嫌になって、また逃げる。
前の列に続いて詰所と外を隔てる門を出れば、人々がこちらをみているのがわかった。
ただでさえ長い門への道のりが、さらに遠く思えてくる。
(そういえば、ハーディは、俺の髪の色を気にしたことはなかったな。)
太陽を受け輝く綺麗なブロンドの髪と、蜂蜜が溶けたような柔らかな瞳を思い出す。
憧れるとは思わない。自分は、一応黒髪を気に入っているから。認める人が少ないから隠すだけで。
(キレイって、言ってくれた。)
乙女なワケじゃないが、自分の髪を褒めてもらって嬉しくないやつがどこにいる。
(しばらく会えないのか。)
彼女の作るジュースは美味しい。本当に、とても美味しい。
(今回はすぐに帰れると良いな。)
最近毎日のように彼女の店に通ってたから、しばらく口の中が彼女のジュースを求めて寂しくなりそうだ。
「おーい!!シャルルさん!!魔法騎士団のみなさーん!!」
突然指名で呼ばれ、シャルルは思わず顔を上げた。
「こっちです!!左斜め前!!」
言われるがままにそちらを見れば、人混みの中にピョンピョン跳ねる人影を見つけた。いや、たまに見える指先、が正しいのか。
「ジュース!新しいのを作っときますので、楽しみにしててくださいねー!!ってうわっ!!ありがとうございます!!」
誰かが見かねて彼女を持ち上げたのか、突然彼女が人混みから生えてきた。
「とにかく!!応援しています!!待ってます!!だから、帰ってきてくださいね!!そしてシャルルさん、流石に森の中は探せませんからねー!!」
「⋯、ふはっ、流石にそこまでサボらないよ。」
シャルルは思わず噴き出した。愉快な気持ちが心を包む。
(新しいジュース、楽しみだ。)
彼女に敬意を込めて手を振る。いや、親しみを込めての方が近いのかもしれない。
「⋯、お前ら。」
激しい歓声のなか、魔法騎士団の面々に問いかける。
「ハーディの新作ジュース、何だと思う?」
○△○ オマケ ○△□
「どうですかー?ハーディちゃん?」
「ありがとうございますアルトさん。すみません。」
「まさか真横にあなたが居るとは思いませんでしたぁよー。面白い偶然ですねぇ。」
「というか、アルトさんって意外と腕力凄まじいですね!!」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
時間があったので2話目です。




