16, 団長シャルル
紅く燃える炎が彼の近くで勢いよく爆ぜる。
それを難なく躱した彼に、今度は激しい剣撃が襲いかかった。彼は剣の平らな部分を敵の剣にぶつけ、宙へとそれを跳ね飛ばし、そして次の敵の処理に取り掛かる。
囲まれたときは魔法を使って宙を駆け、至近距離に入りこまれたときは胸ぐらを掴んで投げ飛ばす。
(⋯⋯きれい。)
人数の差なんて気にならないとでもいうように、まるで踊っているのかのように滑らかで、洗練されたシャルルの動きを、ハーディは瞬きも忘れて見入った。
『お前ら、全員で俺に攻撃してみろ。手段は問わない。一度でも攻撃が入れば、お前らの勝ちだ。』
ハーディから離れた後、シャルルは他の騎士たちにそう言った。
『えー?!無理っすよ本当に。』
『観客の前で団長を負かせてしまうこと、恨まないでくださいね?』
軽口を叩きながら騎士たちがわらわらと集まってきて、そして訓練という名の戦いが始まった。
ハーディがいつも見るあの気怠げな雰囲気は鳴りを潜め、代わりに、圧倒的な強者がそこに居る。細められた漆黒の瞳は、状況判断のために周りを見渡し、その指先はきれいな魔法を作り出す。
(⋯だから、どんなにサボる団長でも、団員さんたちは信頼して、慕っているんだな。)
やるときはちゃんとやるタイプ。やればできる子。
そんな言葉が湧き上がるが、今の彼を表現する的確な言葉は何一つでてこない。
「⋯、かっこいいな。」
(まぁ、サボるのは本来、やったらいけないことだけどね⋯。)
そして数分後、とうとう体力を使い切り地べたに倒れ込んだ騎士たちで、シャルルがミステリーサークルを作っていたのは見なかったことにしよう。
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