12, 魔力紡ぎの糸工房
「で、話を戻しますと、私はあなたの工房にコップを作ってもらいたいのです。」
「うん⋯。話の流れ的に、なんとなくそうかなって思いましたよー。仕事を失いかけているので内心今すぐに契約書を持ってきたいですけど」
「じゃあ」
「だからこそ、今日は契約できないですー。」
「え?」
ハーディは目の前の男性を見上げた。今まで順調だったのに、何でできないのだろうか。
「そもそも、私たちはお互いの名前も知らないですよね?」
「ゔっ」
「私にだって生活があるんですー。こちらに非のある出会い方をしたからって、ホイホイ仕事を仕入れて居られないんですー。」
「⋯。」
(やっぱりそうなのか⋯。でも、私はお店に来た人にいろんなところでジュースを楽しんでほしい。だからこのチャンスを諦められない。)
「明日、あなたの店の何だっけ、居座り亭?のジュースを持ってきてください。」
「え?」
「店側の人や新しい工房の奴らはほとんど知らないし気付かないですがー、魔力のコップって、作る人や作った環境、そこに入れたジュースの種類によって僅かに味が変化するんですー。」
「?」
「だからー、簡単に言いますとー、コップとジュースには相性があって、それが合わないと微妙に、本っっっっ当に少しだーけ、味の質が落ちちゃうんですー。」
「そうなの!?」
「魔力コップの開発をした最初の工房が言うのだから本当ですー。」
「え?」
(今、何かすごく重要なことを言われた気がする。)
「今世間様が作っている魔力コップの作り方を確立したのはうちの祖父ですよー。」
「⋯!!」
ハーディはニカッと笑う目の前の男性を、目を見開いて見つめた。
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