9-37.アリアの実演2
さぁ、アリアによるゲームの実演が始まるよ!
夕飯は想像の通り、散々な物だった。
これなら普通に魔族の料理を出して貰った方が美味しかったんじゃないかな?
私はお昼のお弁当の残りと冒険者用の携帯食料を上手く使って、エルフ族と人族の分の食事を提供した。当然、また注目の的になった訳だけれど、カジノに滞在しているアサリの話と、旅で携帯しているハムとかは別に魔族に提供する必要はないもんね。
それどろこか、デザートの提供に続いて、パスタの提供まで失敗するのは、もう単にレシピだけの問題じゃないと思うんだよね。良い加減気付いて諦めて欲しいところ。
さて、そんなこんなで酷い食事を提供されつつ、ゲーム会場の準備と教団側の対戦相手5人が決まった。法皇や枢機卿が自ら対戦相手として出場するかと思いきや、全員教団で採用している職員なんだって。
これまでの謁見の場では食事の提供の邪魔になるとのことで、別室の広めの遊戯室が会場に設定されたよ。伏兵が居たり、罠があったり、情報を漏洩するような印が無いことをステラ達と確認してから入出したので、横やりが入らない環境であることは確認済みだよ。
1戦目:アリアが10個以上の差をつけられて負け。
2戦目:アリアが4個差で負け。
3戦目:アリアが8個差で負け。
ここまで立て続けの3連敗。
大差で負けている訳では無いので大丈夫だと思うのだけど、アリアに念話で声掛けしておこうかな?
<<アリア、大丈夫?>>
<<ヒカリ様、お声かけありがとうございます。引き分けに調整するのは難しいかもしれません。勝つだけなら簡単にできますが……>>
<<それは、相手が弱すぎるっていうこと?>>
<<弱いだけであれば誘導し易いのですが、対戦相手が緊張しているのか、やたらとミスをするのです。
『ここまで見えているのだから、そこに置くでしょう?』と、ちゃんと1-2手先を読めば分かるのですが、気が付かないのか、それともミスをしてしまっているの分かりませんが、勝つための最善手を打ってくれないのです。
当然、こちらもそれに合わせようとするのですが、そのミスを2回も3回もされてしまうと、こちらも終盤修正が間に合わなくなって、今の様な結果になっています>>
<<それは確かに、アリアにとって必要な条件が満たせないねぇ……>>
<<もう一つの条件も重要なんです。
私が引き分けか負ける以外で勝負を終えてしまうと、教団が最後まで勝負をせずに勝負を無効化したり、私達を暗殺してくる可能性があるのです。
ですので、引き分けで私の正当性を示すか5戦目で勝利して、相手の権利を封じる形で実演の5回戦を終わらせる必要があるのです>>
<< 確かに、5戦目を待たずにアリアが勝利しちゃうと、アリアが引き分けにできる可能性が無くなるから、そこは調整が必要だったね。
でも、この部屋の中には屈強な騎士がいた所で対応できるし、この部屋に入る前に結界や印といった仕掛けが無いことをステラと一緒に確認しているから安心て良いよ。
もし、5戦目がアリアの勝ちで終わったとしても、ステラが『飛竜を呼んで無差別に石を落としますが構いませんね?』って、脅しをかけてくれるから安心して勝っていいよ>>
<<ヒカリ様の支援に感謝します。
ところでフウマさん達による教団資金の凍結の件はタイミング的に私の実演の結果と被っても大丈夫でしょうか?>>
<<ああ。その件は上手く行ってるみたい。裏帳簿に記載のあった換金可能な物は運び出しが終わっているって。残りは表の帳簿に記載がある資金だけだから、大したこと無いって>>
<<承知しました。それでは残り2戦は全力で引き分けに持ち込みます。ヒカリ様とステラ様に後は任せます!>>
<<うん。ゲームに集中して頑張って!>>
ふむふむ。
私が状況を共有してなかったためにアリアには余計な気を遣わせちゃったね。この辺りのことは念話でみんなに共有しておこう。それと、4戦目、5戦目で引き分けたとき、万が一に備えて防御姿勢とカウンターからの制圧に入れる準備も伝えておいた方がいいね。
4戦目。
見事にアリアが引き分けに持ち込んだ。
人族とエルフ族側からは安堵感のため息が漏れ、魔族側ではお互いが顔を見合わせ、信じられないことが起きた様子。かなり動揺が走っているね。
これでアリアの「条件付きで引き分けが起こせる」ということは証明できたし、教団側が提示した「5連勝した場合には、教団側のルール設定に問題がないこと」に関しても不問に出来なくなった。
けれどアリアは「念のため、教団の方が構わなければ5戦目を希望します」って先に申し出た。教
団としても最後に一勝できれば一矢報いることができるし、状況次第では国王陛下に刑の軽減の交渉ができるかもしれないと考えたのか、アリアの申し出にのることになったよ。
最終5戦目。
またアリアが引き分けに持ちこんだ。
5回戦の戦績で言えばアリアは3敗2引き分けだから、ゲームの勝負としてはアリアの負け。けれど教団側ルールに不備があったことを示す根拠としては、明白な結果を残せたことになるよ。
と、この5回戦の結果を受けて、国王陛下から意を決した発言があったよ。
「皆の者、静粛に。
アリア殿、5人の熟練者を相手に自らの主張を皆の前で示すことが出来たことは素晴らしい。
さて、法皇と枢機卿、そして賭け事ギルドへの経営に係る幹部全員を国王の名の元に勾留する。大人しく拘束されて欲しい。
良いな?」
法皇と枢機卿は諦めていたのか、それとも予想の範疇外の結果で準備すらしていなかったのか、反駁の言も述べずに、項垂れて王国の近衛兵に拘束されたよ。アリアと対戦した教団側の5人は茫然とその様子を見守るだけ。きっと「本気だ勝ちに行け。勝てば褒美を与える」ぐらいな指示で連れて来られたんだろうね。今何が起きているのか良く分かってない雰囲気。
指示する者がいなくなった5人の教団メンバーに対しても国王から教団へ帰るように指示を出すと、遊技場の場には魔族の王族と朝面会に集まったエルフ族や人族、その関係者だけが残されたよ。
「ステラ様、アリア様、お一つお伺いしたい。
貴方たちの来訪の目的は魔族の制圧だろうか。それとも魔族の国にある教団の解体。あるいは他に我々がエルフ族や人族の逆鱗に触れる様なことをしていたのだろうか?」
「ディアブロ陛下、私は諸国放浪の旅の一環として、こちらの王都に立ち寄り、そして賭け事を楽しんだところ、運に恵まれたに過ぎません。他意はございません」と、ステラ。
「ディアブロ陛下、私もステラ様に同行して家族でこの地をを訪れた際、偶々面白そうなゲームに出会い、大会に参加させて頂いたに過ぎません」と、アリア。
「うむ……。うむ……。
ステラ様、もう一つ質問させて頂きたい。
今回の賭け事の対価の条件が飛竜に係る内容であった訳だが、こちらはどの様な意図があるのだろうか?」
「そうですわね。今ならディアブロ陛下に私の発言を素直に受け止めて頂けると信じて申し上げます。
飛竜の怒りに触れると、この国だけでなく、魔族は壊滅的に滅ぼされ、生き残りも徹底的に死に追い込まれることになるでしょう。私はそうなることを避けたくて、助言ではなく、強制的に飛竜に関わらない様な条約の締結を申し出ました」
「むむ……。
それは……。つまり……。今日の実演で起きている様な、我々の知らない世界があるということだろうか……」
「今日のいくつかの実演の結果が、ディアブロ陛下の思考に変化を齎す結果となりましたら幸いです」
「ステラ様、貴方の助言に感謝する。
アリア殿にも、もう一つ質問がある。アリア殿から見て、教団はどの程度危うい存在なのだろうか?」
「もし教団に通貨の発行権や技術指針を決めることができたり、平民掌握能力や他種族との外交権があるとすれば、王国の統治にとって脅威であると考えます」
「つまり、ワシは教団の傀儡であると?」
「私は一観光客に過ぎませんので、この国の内情を判断できません」
「ステラ様、アリア殿、回答頂き感謝する。
今日は同行された一行と共に国賓として宿泊頂くよう手配する。
それと、ステラ様にお願いしてる飛竜召喚の実演であるが、保留頂くことは可能だろうか?」
「ディアブロ陛下、可能ですわ。
ですが、実演の有無にかかわらず飛竜を傷つける行為が発覚した場合には制圧を行う契約は無効にできませんが、宜しいでしょうか?」
「ステラ様、承知した。
では皆の者、今日はここで解散とし、ゆっくりと休んで欲しい」
ふぅ……。
国王陛下が理知的な対応をしてくれる人で良かったよ。
飛竜の召喚もしなくて良さそうだし、教団の解体もすんなりと進みそうな雰囲気だしね。
割と良い結末が迎えられるんじゃない?
いつもお読みいただきありがとうございます。
ここ最近、予約投稿が間に合っておりませんが、何とか週一回のペースは守りたいと思います。
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