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6『伊能、測量スキルの応用で地下水脈を見つける』

 3日後の昼下がり。


「ミスリル♪ ミスリル♪」


 若き奴隷商もとい何でも屋のナタンは、ワクワクしながら『例の集落』へ向かっていた。

 荷馬車の中には、子供用の古着と裁縫道具が積み上げられている。

 それと、少量の食料。

 本当はもっとたくさんの食料を持っていってやりたかったのだが、最果ての村(ナタンが便宜上、そう呼んでいる名もなき村)で奪われるような勢いで買われてしまったのだ。


(あの村、長くは保たなそうだよなぁ。儲けなんてほとんど出てないし、もう無視したほうが……でも、付き合いもあるし、見捨てるのも忍びないし)


 ナタンはつくづく商人に向かない、お人好しなのだった。


(それより今は、あの子供たちの集落についてだ。飢え死にしてなきゃいいけど……)


 ナタンは恐る恐る、くだんの集落の中へと入っていった。

 そうして、


「な、な、な、なんじゃこりゃ~っ!?」


 びっくり仰天した。

 子供たちが、元気いっぱい走り回っていたからだ。

 しかも、どの子も頬がふっくらとし、健康そうだ。

 先日見たときには、ガリガリで今にも餓死しそうだったにもかかわらず、だ。


「ふぉっふぉっふぉっ、よう来なさったな」


 こんな芸当ができそうな唯一の人物が、泰然とした笑みを浮かべながらやってきた。

 異国の服装を身にまとった、銀髪の美少女だ。


「なぁおい、これも嬢ちゃんがやったのかい?」

「これ、というと?」

「しらばっくれるなよ」

「ふぉっふぉっふぉっ、この森はウサギが豊富でのぅ」


 言われてみれば、集落のあちこちにウサギの毛皮が干されている。


「嬢ちゃん、それでミスリル鉱石は――」

「用意しておるとも。じゃが、こっちも価値あるものではないか?」


 少女が懐からツノを取り出した。

 少女が手招きすると、別の少女がうれしそうな様子でやって来た。


「ジスカ――この娘が言うに、ポーションの材料になるそうなのじゃが」

「こりゃあ、一角ウサギ……いや、癒し一角ウサギのツノじゃないか! おいおいおい、まさかあの毛皮全部――」

「全部ではない。せいぜい10羽に1羽じゃよ」

「あの毛皮、パッと見ただけでも100以上はあるぞ!? おいおいおい、癒し一角ウサギって言や、すばしっこくって有名なんだぜ!? 一流冒険者だって狩るのに苦労するってのに、いったいぜんたいどうやって?」

「もちろん秘密じゃよ」

「っ。だろうな」


 と返事をしながら、ナタンは内心、震えていた。


(面白い……面白い、面白い、面白い! この嬢ちゃんについて行けば、きっと大儲けができるぜ!)


「それと」


 少女が懐から鉱石を取り出した。

 エメラルド色に輝く鉱石だ。


「ほれ、約束の品じゃ」

「うっひょー! 待ってました、ミスリルちゃん!」

「積み荷を見せてもらっても?」

「もちろんでさぁ、お嬢様!」

「食料は少ないが……衣服のほうは十分じゃな。ミスリル鉱石とそのツノで、積み荷はすべてもらえるかの?」

「俺と嬢ちゃんの間柄だからな。特別サービスしてやるぜ」


 本当は、こちらが金を払わなければならないほどの商いである。

 先日のミスリル鉱石を商工ギルドに卸したとき、その価格が想定より1桁多くて、ナタンは度肝を抜かれたのだった。

 とはいえ、お人好しとはいってもナタンも商人の端くれ。

 自分の不利益になるようなことは、口が裂けても言うわけにはいかない。

 ……が、情けないことに、露骨に目が泳いでしまった。


「ふぉっふぉっふぉっ、若いのぅ。あきんどたるもの、動揺を知られてはならぬぞ」

「な、何の話だ?」

「お釣りの代わりに、ちと手伝ってもらえんか? ちょうど井戸を掘っておったのじゃ」

「井戸掘りぃ? 商人であるこの俺に、井戸を掘れって?」

「やってくれねば、そのツノは取り上げるぞ」

「うっ」


 本当は、ミスリル鉱石単体でも馬車の積み荷すべて――どころか、馬と馬車とナタンの衣服すべてを合わせても支払いきれないほどの価値があるのだが、さすがに同じ失敗は繰り返さないナタンである。


「分かったよ」

「ふぉっふぉっふぉっ! ワシはイノー・タダタカじゃ。今は、この集落のまとめ役をやっておる。改めてよろしくな」

「ナタンだ。しがない何でも屋さ」


 2人は握手した。

 少女イノーの、小さいくせに妙に力強い手に、ナタンは驚かされた。

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