46『伊能、貴族になる』
「……え? えぇえええええええええええええええええっ!?」
伊能、おっ魂消る。
伊能の視界の端では、同席していたジスカが小躍りしている。
「だ、男爵でございますか!? それがしが!?」
「何もおかしなことはないだろう。手柄を上げた者を国が取り上げるのは、自然なことだ。そしてそなたは、手柄を上げた。ミスリル鉱脈を見つけ、盗賊団を倒し、村を立て直し、ドラゴンを倒した。さらなるミスリル鉱脈も見つけ出すことだろう。この街も、上手く治めてくれるに違いない」
「後半は未来の話ですぞ!? そ、それに……」
伊能は恐る恐る、民衆を見る。
民衆の顔には、
『こいつで大丈夫か?』
と書いている。
「大丈夫じゃ!」
高らかに宣言したのは、リリンだ。
「イノー男爵の統治能力は、確かじゃ。余が保証する。それに、イノー男爵家は我がケルブ辺境伯家の派閥の一員――『寄り子』となる。いざとなれば余がフォローしてやるから、安心するがよい」
――わぁああああああああああああああああっ!
――リリン辺境伯様がバックにおられるのなら安心だ!
――リリン様ばんざーい!
――イノー男爵様ばんざーい!
――新領主様ばんざいーい!
「リリンちゃん閣下……!?」
伊能はヒソヒソ声でリリンに抗議する。
「知っておりましたな!? どうして教えてくれなかったのじゃ!」
「ふふん、聴かれなかったからのぅ」
「さて、男爵領について説明する」
国王の話は続く。
「まず、ベリアブルクを含む旧ベリアル伯領南半分はすべて、イノー男爵領とする」
「なっ!? それでは、私に残されたのは旨味のない寒村ばかり。今までの生活水準を維持できません!」
相変わらず自白魔法の影響下にいるベリアル男爵が、言わなくてもよいことをポンポン発言して、その人間性をさらけ出していく。
「次に、イノー村およびミスリル鉱脈も男爵領としたい。ケルブ辺境伯領を多少削られることになるが、よいな?」
「構いません。何しろ、イノー男爵が2つ目のミスリル鉱脈を見つけてくれましたので」
そう。
この数日のうちに、伊能はケルブ辺境伯領で新たなミスリル鉱脈を見つけていた。
「なんと! イノー男爵の能力は本当にすさまじいな!」
「新生イノー男爵領の領民たちよ!」
リリンが堂々と演説する。
「喜ぶがよい! そなたらは再び、ミスリル鉱脈を手に入れた! ミスリル都市ベリアブルク――いや、『イノーブルク』の誕生じゃ!」
――うぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
――ミスリル都市ばんざーい!
――イノーブルクばんざーい!
(いや、イノーブルクて)




