表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
43/48

43『伊能たち、力を結集させる』

 砲弾はドラゴンの下顎にめり込み、顎を砕き、ドラゴンをのけぞらせた。

 ……。

 …………。

 ……………………が、それだけだった。


「あぁ……そんなっ」


 さしもの伊能も、悲痛な声を上げてしまう。


 至近弾であった。

 2度と訪れないほどの絶好の機会だった。

 しかも、伊能たちはその機会を余すところなく最高の形で使い切った。

 ……なのに、倒せなかった。


 ドラゴンが羽ばたき、飛び上がった。


 ――ゴォォオオオオオオオオオオオオオオッ!


 灼熱のブレスが、伊能たちに襲いかかる!





「【パペサタン・パペサタン・アレッペ・プルート――第二地獄暴風(ミーノース)】ッ!!」





 猛烈な風が巻き起こり、ブレスを上空へ吹き飛ばし、さらにはドラゴン自体すらをも舞い上げた。


「あはぁっ、危ないところじゃったのぅ」


 伊能たちの前にひょっこりと現れたのは、幼き領主・リリンだ。


「は、ははは……なるほどのぅ。ウワサの地獄級風魔法使いとは、あなた様のことでしたか」

「ふふん、敬うがよいぞ」

(圧倒的じゃなぁ、魔法使いの力というものは。じゃが……)

「そう。余の魔法は、ドラゴンとは相性が悪い」


 伊能の心を読んだかのようなタイミングで、リリンが言った。


「じゃが、見ておったぞ、イノー。そなたのミスリル砲弾ならば、奴の強固な甲殻をも破ることができるじゃろう」


 空では、ドラゴンが体勢を整えつつある。


「ギデオン!」


 リリンが短く命じると、ギデオンたちが大急ぎで2発目のミスリル砲弾を装填しはじめた。


 さらなる風魔法を警戒しているのか、ドラゴンは中・低空をものすごいスピードで飛び回りはじめた。

 こちらの隙を突いて、ブレスを浴びせかけようとしてくる。

 が、大きく息を吸い込んだタイミングで、サムソンが剣(ギデオンたちが持ってきた)で攻撃を仕掛けるため、ブレスを撃てない。

 ドラゴンとサムソン、千日手の様相を呈しているが、サムソンはすでに一晩中戦ったあとだ。

 いつまでもこの状況は続けられないだろう。


「イノー、撃て。必ず当てよ」


 泰然とした笑みとともに、リリンが言う。


「いや、当てたところで、あれにミスリル砲弾は効かぬのですぞ?」

「いいや、効く。なぜなら、地獄級風魔法使いたる余が、飛翔体の速度・威力を倍加させる上級魔法【エアリアル・ブースト】を大砲と砲弾にかけるからじゃ」

「信じますぞ? 速度はきっかり2倍なのですな?」

「きっかり2倍じゃ」

「承知」


 今、ドラゴンは時速数十キロもの速度で中・低空を飛び回っている。

 いくらライフリングが施されているとはいえ、高速移動体に大砲を当てるのは現代地球でも現実的ではない。

 普通、ああいう相手には数十、数百発もの弾を『面』としてぶつけることで、命中させるものなのだ。

 だというのに今、手元には2発しか残っていない。


「【測量】ッ!」


 だから伊能は、自分が唯一使えるスキルを最大出力で使った。

 ありったけの魔力を注ぎ込み、脳が焼き切れるほど集中して、ドラゴンを測り、量る。

 ドラゴンの現在高度、進行方向、速度、目線、筋肉の動き。

 加えて、この数分のうちにドラゴンが見せた軌跡、運動の癖、性格。

 様々な諸元が伊能の脳に蓄積されていく。





 異世界に生を受けて、半月あまり。

 度重なる使用により、伊能のスキル精度はもはや『未来視』の域に達しつつあった。





「方向、よし! 仰角、3度上げ!」

「【(ヒート)】!」


 ドヴァリンがミスリル砲弾を絶妙の熱加減でわずかに熱膨張させ、ガッチリとライフリングに噛み合わせる。

 続いて、


「【エアリアル・ブースト】!」


 リリンの詠唱と同時、大砲が光り輝く。


「待て、待て、待て……てーっ!」


 リリンの言葉どおり、砲弾は2倍速で射出された。

 大砲にヒビが入った。

 果たして、果たして砲弾は――、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ