表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
38/48

38『伊能、ドラゴンの巣への潜入を決意する』

「嬢ちゃん、問題が発生した」


 ある日の昼下がり、ドヴァリンが青い顔をしてやって来た。


「どうしなさった?」


 伊能の問いに、


「火力が足りねぇんだ」


 ドヴァリンが答えた。


「火力?」

「ミスリルを精錬・加工するための火力だ。一応、即席の炉を作ってはみたんだが、まるで温度が足りねぇ」

「つまり、ミスリルの砲弾を作ることができないと?」

「そのとおりだ」

「大問題ではないか!」

「だから、問題だって言ったんだよ」

「ううむ」


 伊能はうなる。


「東のほうに行けば、相応の村がある。もっと東に行けば、ケルブ辺境伯領領都のケルブルクがある。そこの炉を借りるというのは?」

「そこにドワーフ鍛冶師はいるのかい?」


 伊能はサムソンを呼んできた。


「多分だけど、いないと思うわぁ~。少なくとも、剣コレクターのアタシが入り浸るようなドワーフ鍛冶工房はないわねぇ」

「なら、駄目だな。並の鍛冶師が造るような炉なら、俺らでもここで造れる。ってか造った。が、駄目だったんだよ」

「どうすればよいというのじゃ?」

「無茶を言うんだがよぉ」


 ドヴァリンが――今までサバサバズバズバ言い続けてきた歴戦のドワーフ鍛冶師が、言いにくそうにした。


「ベリアブルクの、俺らの工房の炉を使いたい」

「……はい?」


 伊能は、呆けた。


「それは……未だドラゴンが居座るベリアブルクに忍び込んで、堂々と火を炊くということですかな?」

「まぁ……そういうことだな」


 伊能は天を仰いだ。





   ◆   ◇   ◆   ◇





「突入メンバーを発表する」


 西村の広場に人を集めた伊能は、重々しく告げた。

 いつもはひょうひょうとしている伊能だが、今回ばかりは暗くならざるをえない。


「まずはワシ、そしてサムソン殿――あらため、さすらいの冒険者・サム殿」


 サムソンは、家紋の入ったプレート鎧を脱ぎ、剣も携えていない。

 ベリアル伯の許可を得ないまま他家の従士が越境するのはルール違反だからである。

 そのため、砲兵派遣隊の面々は同行できない。

 サムソン1人が入るだけでも、バレたら言い逃れできないグレーな行為――というよりアウト行為である。


「最後に、ドヴァリン殿およびドヴァリン殿が選抜した鍛冶師数名じゃ」

「そんなっ、私も行く!」


 ジスカが抗議したが、


「駄目じゃ」


 伊能は却下した。


「敵はドラゴンじゃ。今までの相手とは比べ物にならぬ。しかも、道中の小麦畑には多数の魔物がうろついておる。今までのいくさとはわけが違う」

「連れていってくれなかったら、勝手について行くから」

「…………」


 伊能はジスカを睨みつける。

 が、ジスカが折れる様子はない。


「これでイノーちゃんが死んじゃったら、私は一生後悔する」

「それはワシも同じじゃ」

「…………」

「…………」


 睨み合いが続き、嫌な沈黙が広場を支配しはじめた、そのとき。





 ――パンッ





 と、ルーベンが手を叩いた。

 一同がハッとなる。


「日が沈みはじめる前に出発しなければならないのでしょう? 揉めている時間はありませんよ」

「じゃから――」

「だから――」

「ですので、こうしましょう。ジスカもイノー村長とともに行く。ただし、私も同行する。いよいよ危険だと感じたら、私がジスカを引きずってでも連れて帰ります。これでどうですか?」


 ジスカが驚いたような、喜んでいるような、あるいは怒ったような顔になる。

 一方の伊能は、


「……承知した」


 深々とため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ