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35『伊能、ドラゴンを襲う』

 改造した大砲と砲弾を馬に引かせ、伊能たちは一路、北へ向かう。

 次のオーク集団はベリアブルクと領境の間にある小麦畑をむさぼり食っているため、接敵の恐れはなさそうだ。


 一行は領境となる小山の頂上に立った。

 傾きかけた太陽の下、遠く城壁に囲まれた街・ベリアブルクが見える。


「【測量】! うむ。ドラゴンは未だ、城壁の中におるな」

「というか、煙が上がってるわねぇ~ん。普通の射撃なら絶望的な状況だけど、アタシたちにとってはむしろ好都合かしら」

「飛距離を2キロメートルにまで伸ばすわ、視界外でも確実に当てるわ……イノー村長殿は本当に規格外ですね。砲兵としての自信を失くしますよ」

「では、大砲をここに。角度はこう。仰角1度上げ」


 砲兵派遣隊が火薬と弾を詰めていく。

 仕上げに、ドヴァリンが弾へ【(ヒート)】をかけた。


「てーっ」


 ライフリングを施された砲身から、ドングリ型の鉄の塊が射出された。


 ――ビュゥゥウウウウウウウウウウウウウウウッ!


 風切り音とともに、砲弾が山なりに飛んでいく。

 果たして、


「…………。…………。頭部に当たった!」


 伊能の言葉に、一同が沸く。


「それで、ドラゴンはぁ!?」

「ふらついておるようじゃな。あ、倒れた」

「やったー!」


 ジスカがピョンピョン飛び跳ねる。

 大人たちも、みな笑顔だ。

 だが、


「……まずい、起き上がった」


 伊能の言葉に、一同が青ざめた。


「逃げるわよぉ!」


 サムソンの号令で、一同は一目散に山から降りた。


「イノーちゃん! どう、来てるぅ!?」

「隠れるのじゃ!」


 一同は木々の下に隠れる。

 数十秒後、巨大な何かがはるか上空を通り過ぎていった。


「村が心配じゃ。急ぐぞ」





   ◆   ◇   ◆   ◇





 結果として、村は無事だった。

 ドラゴンも、しばらく領境周辺を飛び回っていたものの、やがて北に戻っていった。

 今は、小麦畑をサラダにオーク肉を食らっているようだ。

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