33『砲兵隊隊長、自信喪失する』
「……駄目じゃったな」
数度の試射ののち、伊能はそう結論付けた。
「精度がものすごく向上したかと思えば、逆に大外ししたりもする。なんでじゃろうな?」
「イノーちゃん、思ったんだけど」
話しかけてきたのは、歴戦のアーチャー・ジスカだ。
「弾が真ん丸なのが駄目なんじゃない? 矢は細長いから回転を維持できているんだと思うの」
ジスカの言うとおり、砲弾は真球だ。
空気抵抗を真正面から受け止めざるをえない形をしている。
「なるほど! では、砲身を細長くすれば?」
「それなら、先端は尖らせたほうがいいと思うぜ」
ドヴァリンらドワーフたちも会話に混ざる。
結果、砲弾はドングリのような形が好ましいのでは? という結論になった。
近現代地球と同じ結論である。
「そうと決まればさっそく加工していきたいところだが……」
ドヴァリンが困った顔をする。
「火は魔法で何とかできるにしても……さすがに、ハンマーと金床がなけりゃ加工は無理だぜ。おーいお前ら、ハンマーと金床持ってたりするか? って、さすがにいねぇか」
「おいら、ハンマー持って来てるぞ」
「金床だったらこれ使え」
次々と工具を取り出すドワーフたちに、ドヴァリンが爆笑する。
「お前ら、最高に鍛冶師だぜ」
◆ ◇ ◆ ◇
というわけで、砲弾2つをつなげて伸ばして尖らせて、ドングリ型の砲弾にした。
撃ってみたところ、
「ひゃ、百発百中……!」
本職の砲兵・ギデオンは、震えていた。
目の前で繰り広げられている光景が、まるで信じられなかった。
「500メートルでも百発百中。どころか、1000メートルでも百発百中! 将軍閣下、これは戦争が変わりますよ!」
「ギデオンちゃ~ん、リリンちゃん閣下に、大至急鳩を飛ばしてぇ~ん」
「は、はい!」
「そ・れ・と、このことはくれぐれも、く~れぐれも他言無用よぉん」
「もちろんです!」
当のイノー村長――兵器の歴史を数百年分すっ飛ばしてしまった異次元の人物は、
「すっごいのぅ! これなら、領境からドラゴンを狙い撃てるぞ!」
年相応の少女のようにピョンピョンと飛び跳ねていた。




