25『伊能、救援を求める』
数時間後、伊能は西村で『人影』を待ち構えていた。
動ける大人をすべて西村に呼び寄せて、逆に少年少女らは東村に避難させて。
もっとも、ジスカだけは伊能の隣で弓を携えていたが。
果たして、森の中から現れたのは――
「ここは……村?」
着の身着のままの初老の男性――ドワーフだった。
さらに数十人のドワーフたちと、数百人の人間がぞろぞろ、フラフラと現れた。
彼らはみな満身創痍で、立っているのもやっとという有様だ。
(盗賊の線はなさそうじゃな。じゃが、相手はワシらの10倍以上の勢力。警戒を緩めるわけにはいかぬ)
ジスカなどは、弓を引き、今にも矢を放ちそうだ。
大人たちの中にもスリングを回している者たちがおり、ルーベンが慌ててなだめて回っている。
「ワシは伊能忠敬、この村の村長じゃ。お主らの素性を聞きたい。事と次第によっては――」
「待ってくれ! 俺たちに敵対する意思はない!」
初老のドワーフ――リーダーらしき男が伊能の前で膝をついた。
「俺たちはベリアブルクから逃げてきたんだ」
「ベリアブルク?」
「ベリアル伯領の領都よぉ~ん」
サムソンが補足してくれた。
「何から逃げてきたのじゃ?」
「ど、ドラゴンだ!」
――ざわり
と、東村の大人たちがざわめき立つ。
「迷いの森のほうからドラゴンがやって来て、街を火の海にしちまったんだ。街を守っている衛兵たちもやられちまって、俺たちはちりぢりに逃げるしかなくて……」
――ドラゴンだって!?
――伝説上の生き物じゃないのか?
――信じられるか、そんなこと。俺たちの村を乗っ取るための口実じゃ?
――いや、でも、こいつらがボロボロなのは事実だぞ。
「みな、静かに。むぅ――【測量】!」
伊能は長く鋭く、遠く北方向にだけ【測量】の索敵能力を飛ばした。
果たして――
「……ふぅ。サムソン殿、さっそくで悪いが、リリン辺境伯閣下のお力添えを頂けんじゃろうか」
「ってことは、いたのぉ~ん?」
「いた。遠く北方向、石壁で囲われた大きな都の中に、身の丈数十メートルの異形が」
「あらまぁ」
「大至急、大砲をありったけ持ってきてくれ。それと、大砲の扱いを教練できるお方を1名以上。これが、初回の納税分じゃ」
伊能はサムソンに癒し一角ウサギのツノを手渡す。
「大砲だけでいいのぉ~ん?」
「そりゃあ、軍隊も来てくれるとうれしいが……この村には、軍隊を食い支えられるだけの食料がない」
「道理ね。分かったわぁ~ん、できるだけ急いで戻ってくるわね」
サムソンが東へ向けて猛ダッシュしはじめた。
プレートアーマーを着ているというのに、馬よりも早い。




