24『数百人の集団、襲来する』
3人は森に入った。
「【測量】! いた。それも、『癒し』のほうじゃ。ジスカや、前方76メートル先じゃ」
「こう?」
「よいぞ。仰角1度上げ。――撃て!」
――ビュッ!
「……。……。……。当たった。見事じゃ」
「えへへ。行ってくるね!」
ジスカがうれしそうに、森の奥へ走っていく。
「な、な、な、何なの、今のぉん!? なんでウサギがいるって分かったの!? しかも76メートル先って本当に!? いえ、っていうか目視もせずに『癒し』一角ウサギのほうだって分かったのもなぜ!? さすがに冗談……よね?」
サムソンが瞠目している。
やがて、癒し一角ウサギを絞めたジスカが、うれしそうに戻ってきた。
「な、な、な……」
サムソンが震える。
「イノーちゃん、アタシ今、猛烈にあなたをスカウトしたい気持ちをガマンしているわ。あなたが領軍にいてくれたら、リリンちゃん閣下が誇る弓兵は無敵の部隊になるわよ」
「ふぉっふぉっふぉっ、サムソンちゃん殿はお世辞が上手いのぅ」
「いや、お世辞じゃないんだけどぉ」
「そうなのよ! イノーちゃんは世界最強なんだから!」
伊能の代わりに胸を張るジスカである。
「ジスカちゃん、だったかしら? イノーちゃんの補助があるとはいえ、あなたの弓の腕もすごいわねぇ。あなたもスカウトしたいくらい。たっぷりお給金出すわよぉ~ん?」
「……え」
「だ、駄目じゃ! 絶対に駄目じゃぞ!」
伊能は本気で慌てる。
「ジスカはワシのじゃ! ぜぇったいに譲らぬ!」
「~~~~っ!」
ジスカが真っ赤になってピョンピョン飛び跳ねる。
「本気だったんだけど。あなたたちの中に割って入るのは無理そうねぇ」
「さて、もう1匹狙ってみるか。【測量】! ……ん? んんん?」
「どうしたの、イノーちゃん?」
「今日は妙にウサギが少ないのぅ」
「そうなんだ?」
「どれ、索敵範囲をぐっと広げて――……」
伊能は言葉を失った。
「イノーちゃん? イノーちゃんってば、どうしたの?」
「ジスカや、今すぐ東村に行って、ルーベン殿以下大人全員を西村へ連れてきてくれ」
「なっ、あの人とはお話したくない……」
「気持ちは分かる。が、今はお主を子供扱いしてやれるときではない」
「どういうこと? イノーちゃん、さっきから何か怖い」
「人影が、数百人。北の山から、こちらに向かってきつつある」
ジスカが青ざめた。
サムソンも、わずかに目を見開く。
「そ、それってまさか、盗賊!?」
「分からぬ。が、時間がない」
「分かった! 行ってくるね!」




