16『伊能、56名の村民を得る』
2人は村に戻ってきた。
ちょうど、盗賊たちが全員縛り上げられたところだった。
「ジスカ!」
伊能はルーベンの背中から飛び降り、ジスカのもとへ駆け寄る。
「怪我はないか!?」
「ふふっ、大げさよ」
ジスカの体をペタペタと検めていると、ジスカがくすぐったそうに笑った。
「まったく……一番槍を望むなど、無茶しおって。肝が冷えたぞ」
「いちばんやりって何? ふふっ、心配してくれたんだ?」
「まったく。ともあれ――」
伊能は周囲の村人たちに向けて、声を張り上げる。
「いくさは終わった。我々の勝利じゃ!」
――うおぉおおおおおおおおおおおおおっ!
村中が勝ち鬨を上げた。
「ところで、こいつらのことですが」
ルーベンが伊能に尋ねた。
「うむ。明日、ナタンがここに来る手筈になっておる。全員、奴隷として売っぱらってしまえ。悪党に情けはいらぬ」
「いえ、そうではなく。代金の話です。お受け取りいただけますよね?」
「ん? お主ら自身で倒したのじゃから、お主らの取り分じゃ。あぁいや、ジスカも命を懸けたし、テオたち男児組も後方支援で働いたから、1割ほどもらおうかの」
「いえいえいえっ、全額あなた様のものです! この勝利は、あなた様の指揮あってのものなのですから。それと――」
ルーベンが伊能に平伏した。
他の男たちも、一斉に平伏する。
「どうか、我ら56人を御身の傘下に加えていただけませんか!?」
「いや、御身て」
ドン引きの伊能。
「はて、どうするか……いやはや困った」
「当然よ。イノーちゃんはこの村を――ううん、この世界を統べるに相応しい偉大な人物なんだから!」
「いや、世界て」
さすがに冗談だろう、と思う伊能だったが、ジスカの目は本気のようだった。




