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35/96

35狩り目

 あれからしばらく、結局東山君は『オススメメニュー!当店No. 1』を注文した。


 ……皆で静かな中ご飯を食べて、お腹も心も落ち着いてきたところで突然口を開いたのは、東山君だった。


 私が素を出せない、こういった時に突破口を切り開くのはいつだって唯夏であったから正直意外に感じた。そしてその東山君が語る内容に泣きそうになった。


 東山君は、そっとこちらを見た。さっきの私の気持ちを伝えた時から東山君は黙ってしまってこちらを見る事が出来ない様子だった。


 だからただ、「あぁ、私の気持ちは彼に届かなかったのか」そう、思った。

 正直賭けだった。でもきっと受け取ってくれると、なぜだかそう思っていたんだ。

 少しずつ暗くなっていく視界、思考。


 ーーー手にそっと、暖かな手が重なった。ふと顔を上げると、唯夏が、いつかの教室の前の廊下のようにこちらを見ていた。そっと唯夏が口を『信じて』そううごかしたように見えた。


 東山君の方に向き直る。彼はそっと口を開いて、ただ一言、しかし、始まりの一歩を踏み出した。


「……美味しいな」


 分からない人が聞いてもきっと分からない。けど、けどね。あのゲームをした人なら、彼を攻略した事のある人なら分かる。


『美味しい』それは彼の攻略ポイントについて最初の壁であり、試練なのだ。

 この言葉から彼のルートは少しずつ進んでいく。私は、彼を狩るに当たって最初の障害を壊してやった!


 これから真面目に貴方を狩りにいくから、覚悟しといてね!

 ……とか、まぁ東山君に伝えてないから心の中言っても意味ないっちゃないんだけどね。

東山君攻略の中で『美味しい』はヒロインと学園食堂で一緒にご飯を食べてる時に、そっと美味しい?と聞くヒロインに対してこくりと頷いてそしてゆっくりと『美味しい』と言うといった初期イベントにある。

ここから少しずつヒロインと一緒に感情を探していくのだ。

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