33狩り目
「……唯夏」
私の呟きに少し正気になったらしき東山君。
「……北原野か?」
その問いかけに唯夏はいつもの自信満々の魅力的な笑みで答える。
「当たれ前でしょ?こんな顔が周りに何人もいてたまるかってんの!」
「いや、しかし……その、喋り方が」
小さな声で困惑したように東山君は言ったがその声を目敏く唯夏は聞き取って
「何、文句あんの?学校でも家でもないんだからちょっとぐらい素を出しちゃっても良いでしょ?」
と、東山君を睨むように言った。
その迫力に東山君は少し唯夏から目を逸らして私の方に顔を向け、その無表情の顔で助けを求めているようだった。
……可愛い。
……あ、いや、そ、そんな、こんな時に見惚れてなんかないですよ?
思考が逸れたのを振り払うように頭を少し振ってから唯夏を止めにかかった。
日頃のお嬢様の仮面は唯夏には窮屈すぎるものらしく、私や唯夏の家族だけの場では彼女はいつも、こんな風に鬱憤を晴らそうとする。
「唯夏、目立つよ」
ぽそっと言った私の言葉に唯夏はピキッと音が鳴るように固まった。確かに色々な事を東山君にバラすつもりでここまで来たし、問題はないっちゃないんだけども。いくら何でもこんなに叫んだら人が集まってしまう。
そういう思考に唯夏もたどり着いたらしくこちらを見て一つ頷いた。それにこちらも頷き返して未だに助けて状態の東山君に声をかける。
「人が集まってしまいそうですし、少しだけ移動しましょう?」
それに東山君も同意して三人で移動。その間は誰も喋ろうとしなかった。
……ちなみに東山君は移動の間唯夏側に寄ろうとせず私にくっ付いてる見たいだった。唯夏の素を見た事が衝撃的だったようだ。まぁ、こんなんでも美声の人魚姫なんてあだ名があるしね。仕方ない。




