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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第2章 暗躍編

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第83話 祝賀会(1)




 あれから……


 武術大会後の夜に行われるはずの祝賀会は3日ほど延期された。

 武術大会の一般部門は、季節を変えて行われるらしい。

 攫われた依頼主のステラは、皇都の屋敷の自室に転移して運び込んだ。

 怪我もなく具合も大丈夫のようだ。


 そして、祝賀会当日……


 ランドル家の屋敷では、


「ラビス、今日はお前の準男爵の授与式もあるから時間より早く城に行くぞ」

「わかりました。父様も呼ばれているのでしょう? 」

「あぁ、きっとお前のお目付役なのだろうがな」


 侍女のエリスに新しい服を着付けてもらっていると


「ラビス、どう? 」


 メリーナ姉さんとシェリーさんがドレスを着て登場した。


「よく似合ってますよ。シェリーさん。それと姉さんも」

「何で私を付け足しみたいに褒めるのよ〜〜」

「そんな事ないよ」


 するとニュイも着替えてきたようだ。綺麗なピンク色のドレスを着ていた。


「ニュイ、その色、似合うじゃないか? 」

「……うん」


 ニュイは赤くなって下を向いてしまった。

 こういうところは女の子らしい。


 姉さんとシェリーさんは武術大会の審判役をしたので祝賀会に呼ばれたらしい。


「お〜〜みんな綺麗じゃないか? アマンダも来れれば良かったのだが、お祖父さんが腰を痛めてこちらに来るのは無理のようだ」


 あの祖父さん、変な事ばかりするから腰を痛めるんだよ……


 俺は、この祝賀会が終わったら西の海に行かねければならない。

 出来るだけ目立たず、役などを押し付けられないようにしないと……


 そう考えていると、姉さんが


「ラビス、今夜は私とダンスを踊ってね」

「ダンスですか? 姉さんに足を踏まれるのはちょっと〜〜」

「私、ダンス上手なのよ。小さい頃、2人で練習したじゃない。もう忘れたの? 」


 足を踏まれた事しか覚えていない……


「俺はシェリーさんと踊った方が気が楽なのですけど……」


 するとシェリーさんが顔を赤くした。


「それ、どういう意味よ〜〜!! 」


 殴りかかろうとする姉さんを必死で止めていると父さんが、


「さて、私とラビスは先に行くよ。女性達は後から来なさい」


 父さんがそう話とメリーナ姉さんは殴るのを諦め、そしてニュイは不満そうな顔をしていた。




 時間より早めに登城した俺と父さんは、応接室で待たされた。

 そして、衛兵が呼びに来て謁見室まで案内された。


 俺は、父さんの後を進んで並んで座っている貴族達の末席の席に腰掛ける。


 すると、王家執務長のロバートさんがやって来て


「これより、ミスティナ皇国爵位授与式を開催する。17代ミスティナ王 エリオット様の御前に名を呼ばれた者は参るように」


 こういう堅苦しい場は、苦手だ……


「ラビス=ランドル、スミス=ランドル。前へ」


『はい』


 父さんは、自分も呼ばれて少し戸惑っている。


 王様の前で片膝をつき、首を垂れる。


 そして、執務長ロバートは


「ラビス=ランドルは、伝説の黒竜の元から無事生還を果たした。ここに準男爵の爵位を授ける」


 俺は、一歩前に出て王様の前でまた片膝をつく。

 王様は、俺の前に来て書状とミスティナ皇国の貴族の証である金でできた紋章を渡した。

 俺はそれを受け取り


「ありがたき幸せに存じます」


 と、礼の言葉を述べた。


 王様は、ニコっと笑ったが何も言わなかった。


 さらに、執務長ロバートの話が始まる。


「スミス=ランドル前へ」

「はい」


「スミス=ランドル。皇都魔獣襲撃事件において事前にその情報を伝え被害を最小にとどめた。また、襲撃犯からも王家の者達を守り抜いた。そう功績を称え子爵の爵位を進呈する」


「はい。ありがたき幸せに存じます」


 父さんは子爵になったのか……


「次にシモンズ=ブリュッセル。前へ」

「はい……」


 シモンズ伯爵の裁定が行われるようだ……


「シモンズ=ブリュッセル。皇都魔獣襲撃事件においてロワード帝国の者達を引き入れ皇都に多大な損害を与えた事は許しがたい」


 シモンズさんは青い顔をしてその言葉を聞いている。


「しかし、それは本意ではなくロワード帝国の者達に脅迫されていた事は明確である。それに闘技場において魔獣を倒し王家者達のみならず民の命を救った事は事実である。よって、シモンズを外交官の職を辞す」


「……あの〜お言葉ですがそれだけでしょうか? 」

「何か不服か? 」

「いいえ。滅相もありません」

「これからも皇国の為に尽力を尽くせ」

「は、はい。ありがとうございます」


 どうやら伯爵の地位はそのままのようだ。

 王家に間者が紛れていたせいもあり、罪を軽くしたのだろう。

 俺も依頼が果たせてホッとする。


「次に、アステル教会聖騎士リヒト。聖女リアス前へ」


 立花達もいたのか……


「闘技場の出現した魔獣を倒し、それに怪我人を治癒した功績を認め、ここに勲章と金1000枚を授与する」


『はい。ありがたき幸せに存じます』


 どうやらこれでお終いのようだ。

 王様はニコニコしながらも少しやつれた様子だった。


 授与式は滞りなく行われて、今度は、祝賀会となる。







 祝賀会は、武術大会に出場した学院の生徒も招待された。

 王城の舞踏場では、豪華な料理と楽団が音楽を奏でている。


 俺は、遅れてやってきたニュイ達と一緒に出席する。

 ニュイは、豪華な料理に目がいっていた。


「立食なんだね」

「そうよ。人数が多い場合はそれが普通だわ。疲れたら、テービル席があるから腰かければいいのよ」

「そうなんだ……」


 こういう社交界は出たことがないのでよくわからない。


 俺は、ニュイに取り皿に料理を乗せて食べさせていた。すると、


「主任、じゃなくってラビス様、準男爵の爵位、おめでとうございます」

「これはヒュール商店のユオさんではありませんか。どうしてここに? 」

「はい。今日の料理の仕入れをお手伝いさせて頂きましたので、それ故、招待されました」

「そうでしたか。どれも美味しいですよ」

「お口に合ったようで嬉しゅうございます」


 まさかユオに会うとは思わなかったよ……


 すると今度は、厄介な人物がとうとうこちらに来た。


「ラビス君……」

「これは、聖女様。ご無沙汰しております」

「本当にラビス君よね。生きてて良かった……」

「ご心配おかけしました」

「お父様から聞いたのよ。ラビス君が生きて戻ったって。本当はもっと早くお会いしたかったのだけど……」

「そうでしたか……」

「ひとつ聞いてもいい? 」

「何でしょうか? 」

「ミツトの街で会ったわよね。その時は、何故嘘をついたの? 」

「あの時は、記憶を失っていました。皆さんに会った事で過去を思い出したくなったのです」

「そう、記憶を無くしてたのね……」


 すると今度はリアナ嬢が来て


「ラビス君だったのか? 生きてて良かったよ」

「これはリアナ様。ご心配をおかけしました」

「うん、でもリアスほどじゃないけどね」


「お姉様、変な事は言わないで下さい」


 リアス嬢は顔を赤くして怒っている。


「わかった。悪かったよ」


 リアナ嬢も妹には弱いようだ。

 すると今度はリヒトこと立花がやってきて


「やぁ、ミツトの街で会ったね。それに迷宮で薬をくれたんだって? ありがとう。助かったよ」

「いいえ。聖騎士様のお役に立てれば幸いです」


 立花、さっさとリアス嬢達を連れてどっかに行ってくれ……


「ねぇ、ラビス、一緒に踊ろうよ」

「姉さんとですか? 」

「約束したでしょう? 」

「そうだけど〜〜」


 すると、今度はもっと厄介な人物がやってきた。


「ラビス様。もしよろしかったら私と一曲お相手願いますか? 」


 そう話しかけてきたのはソレイユ王女だった。

 これは断れない……


「私でよろしければ……」

「では、参りましょう」


 俺は、姉さん達に軽く礼をしてその場を立ち去る。

 王女からの誘いなら誰もが断れない。

 メリーナ姉さんもその事は心得ていた。

 気になるニュイはユオが見ていてくれたので助かる。


 みんなの注目を集める中、ソレイユ王女とのダンスが始める。

 軽やかなメロディーが会場を包み込んでいった。


 王女は身体を寄せ、踊りながら話しかけてきた。


「ラビス様、お聞きしたい事があります」

「何でしょうか? 」

「本当の事をおっしゃって下さいますか? 」

「はい。もちろんです」

「ラビス様は使者様ですよね? 」

「……いいえ。違います」

「何故、本当の事を言ってくれないのですか? あの聖騎士の男性もアステル神の加護を持っています。でも、精霊視で見ると白い光のままです。ラビス様のように虹色に輝くお方は使者様しかおりません」

「王女様は何故そのような事をお聞きしたいのですか? 」

「はっきりさせたいのです。使者様は私を信頼してくれました。それに報酬を渡さなければなりません」

「報酬ですか……」

「そうです。私を差し上げるとお約束しました」

「それはお口に出さない方がよろしいかと思いますよ。王家の人間が軽々しく言葉にしてはいけないはずです」

「わかっております。でも、私は約束を違えるつもりはありません」

「使者様という方が羨ましいですね。こんな素敵な王女様に慕われて……」

「ラビス様、はぐらかさないで下さい。では、その胸につけてるネックレスは何なのですか? 」


 隠しきれないが、誤魔化すしかない……


「これは使者様に依頼を出した時に薬と一緒に置いてあったものです」

「そうなのですか? 」

「はい」

「では、その腕輪もそうおっしゃるつもりなのですか? 」


 しまった……腕輪を忘れていた……


「私も使者様から頂いた同じ物を着けております。ここで使者様に連絡を入れたらどうなるのでしょうか? 」


 そう言うよね……


「今は何も言えません。それで勘弁してくれませんか? 」

「何か隠さないといけない理由がおありなのですね? 」

「今は答えられません」

「そうですか……」


「王女様、ひとつクイズを出しても良いですか? 」

「クイズですか? 」

「はい。ソレイユ様、あるお方が使者様に手紙を書きました。その内容は、武術大会で優勝したい。それと妹と昔みたいに仲良くなりたいと書いてありました。さて、誰が書いた手紙でしょうか? 」

「武術大会に出られる方で妹のいる方ですね。すみません。私それほど人を多く知りませんので……」

「身近なお方ですよ」

「私が知ってるお方というわけですね」

「はい。とても身近な人です。ソレイユ様の事をとても心配されております」

「えっ……それってソフィア姉様? 」

「答えはご自分で確かめて下さい」


「では、その事を知っていると言う事はラビス様は認めたと言う事になりますけど」

「それは今は内緒です」

「ラビス様は意地悪なお方ですね」

「はい。よく言われます」


 そう話しているとダンスの音楽が終わる。

 俺とソレイユ王女は、みんなからの喝采を受けていた。


 すると今度はリアス嬢が近寄ってきてダンスを一緒に踊る羽目になってしまった。


 周りの年頃の男性からは冷たい視線を投げかけられる。


 リアス嬢は踊りながら


「さっきソレイユ王女様と何を話されていたのですか? 」

「たわいもない世間話です」

「そうですか……」

「リアス様は聖女様になられたのですね」

「聖女なんて名ばかりです。それに昔のようにリアスと呼んで下さい」

「では、リアス」

「何でしょう? ラビス君」

「リヒト様はお優しいですか? 」

「リヒト様ですか? はい。お優しい方ですが時に意味のわからない事をおっしゃいます」


 相変わらず残念なやつだ……


「お二人はお似合いですよ」

「ライル君、それはどういう意味ですか? 」

「言葉の通りですが……」

「確かにリヒト様は類い稀なお力を持っておりますが、私は幼い頃から心に決めた男性がおります」


 それって……


「そうでしたか……」


 何を言えと言うんだ?


「その方とは2度と会えないと思ってましたが、奇跡的にもお会いする事が出来ました」

「それは良かったです」

「ラビス君は私の事をどう思っているのですか? 」

「アステル神がお好きな幼友達とかですかね……」

「幼友達ですか……でも、私は諦めません。こうしてお会いする事ができたのですから」


 慕ってくれるのは嬉しいが、どうすればいいんだ?


 曲が終わったようだ。リアス嬢はいつまでも俺の手を離さないでいた。

 そんな俺を見て今度はユオがダンスを申し込んできた。

 リアス嬢は名残惜しそうに俺の手を離す。


 曲が始まった。


 ダンスも三連ちゃんは結構、キツい。


「主任が困ってたのでお誘いしました」

「助かったよ。ユオ」

「はい。主任の困った顔を見て今日は食事も美味しいです」

「ユオ、後でお仕置きだぞ」

「それは勘弁してください。で、どうなのですか? 」

「ソレイユ王女にはほとんどバレてる……」

「リアス嬢の方はどうなのですか? 」

「わからないが違う意味で困っている」

「モテるのも大変ですね〜〜」

「リアス嬢はてっきり立花とうまくいってるものだと思っていたのだが……」

「立花先輩のドストライクはニュイちゃんですよ。気づかなかったのですか? 」

「はい!? あいつ、小さい子が好きなのか? 」

「そうですよ。前世から言ってたじゃないですか〜〜俺の嫁は〜〜とか言って小さい女の子が出てくるアニメのキャラを自慢してましたよ」

「そうだったな……まさか、ニュイに手を出すつもりじゃないだろうな! 」

「そこんとこは私がうまくガードしときました。今はメリーナさんがいますから大丈夫ですけどネ」

「全く、あいつには困ったものだ。そう言えば、モフモフも好きだったぞ。ユオなんか好みなんじゃないか? 」

「速攻で拒否します! 」

「マジか……」

「マジです」


 ユオとのダンスは緊張しないで済む。

 一緒に大人になったせいか、もう家族のような存在だ。


「主任もハーレム作ってウハウハ生活すればいいじゃないですか? 」

「俺がそんなに器用な人間に見えるのか? 」

「見えないです」

「なら言うな」

「わかりました〜〜。でも、今回のパーティーで主任は敵をだいぶ作りましたよ」

「あぁ、さっきから冷たい男性の視線を感じるよ」

「気をつけて下さいね」

「あぁ、わかっている」


 嫉妬に狂った男達は、何をしでかすかわかったものじゃない。

 嫌味を言われるくらいなら相手にしなければ済む話なのだが……


 曲が終わり、一息いれる。

 するとニュイは寄ってきて俺の足を思い切り踏んづけた。


 ニュイなりの抗議のつもりなのだろう……


 お菓子で機嫌が治れば良いけど……



 祝賀会はまだまだ続いていった。








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