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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第2章 暗躍編

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第81話 武術大会




 武術大会が始まった。場所は、王立学園と王城との間にある闘技場だ。

 王城の武道館とは違い観覧席にしか屋根はないが、倍以上の広さがある。

 ここには、時の鐘を中心とした五芒線には入っておらず、今回の安全地帯として指定されていると父さんから聞いた。


 闘技場に入り、まず目に入るのは王家や来賓の豪華な観覧席である。

 遠目から見てソフィア王女やソレイユ王女の顔を確認できた。

 ソレイユ王女は、このような場所に来る事自体珍しいようだが、自分が予知した終結を見届けたいのだろう。


「主任、準備は出来ました。いつでも結界張れますよ」

「わかった。出番が来るまで待機だ」


 ユオは、魔獣召喚の魔法陣を包み込むように結界を張ってもらう。

 大規模な結界になる為、時間がかかったようだ。


 時の鐘周辺の住民は、この闘技場に来てもらった。病気や幼子は王城脇にある王家の保養施設に待機してもらっている。


 俺は、闘技場内の観覧席に進み、ニュイと共に貴族席にいる父さんの隣に座る。反対側にはヘンリー辺境伯が座っていた。


 王家の人々はその上段にあり、ここからすぐ近くにある。

 来賓席はその下にあり、ターゲットのガイブール伯爵は例のシモンズ伯爵と並んで座っていた。その隣は、ライアット国の来賓だ。確かシュプール公爵と資料に書いてあった。


 今回出場する学生は、学年選抜で選ばれた者達らしい。

 闘技場で誇らしく整列して、開催の合図を待っていた。


 ミスティナ皇国の王の挨拶が始まる。

 拡声魔法で闘技場全体に王様の声が聞こえる。


『今日の良き日に、勇ましい君たちの勇姿を見ることができて嬉しく思う。日頃の厳しい鍛錬の成果を思う存分、奮ってほしい』


 王様の挨拶が終わると会場は大きな歓声に包まれた。


 そろそろ第一試合の始まりだ。そこで、進行役の騎士から審判が紹介された。


「今日、審判を引き受けてくれたのは冒険者ギルドAランクパーティー『純情可憐』のメンバー、メリーナさんとシェリーさんです」


 えっ、姉さん……


 父さんも驚いて、登場したメリーナを見ている。そして、来賓席でも、一際大きな音を立てて椅子から立ち上がった人物がいた。シュプール公爵だ。


「シェリーじゃないか! 」


 その声は、周りの観客の声でけされてしまったが、俺の耳には届いていた。


 もしかして、シェリーさんの父さん?


 偶然にも程があるだろう……


 思わぬ再開を果たしたのはうちの父さんだけではなかったようだ。


「父様、メリーナ姉さんが審判って聞いてましたか? 」


「いいや。でも、審判は公平を期す為、冒険者ギルドに仕事を回すんだ。たまたま、あの子が受けたのだろう。でも、皇都に来てるなら屋敷に来ても良かったじゃないか? そう思うだろう? ラビス」


 きっとお見合いの話をされるのが嫌だったのだろう……


「姉さんの考えは私にはわかりませんから〜〜」


 そう答えるしかできなかった。


「父様は姉さんといつ以来なのですか? 」

「2年前、メリーナが皇都に来て以来だ。お見合いを勧めたのだが逃げられてしまったよ」


 姉さんが屋敷に寄り付かない原因がはっきりしたようだ……


「そうでしたか」


 第1試合が始まったようだ。

 まだ、幼い剣士が互いに剣を振るっていた。


「学生は学年ごとで戦うのですか? 」

「そうだ。学年毎に選抜された2名が戦い、勝ったものが学年トップという事になる」

「そうでしたか……」


 学年は5回生までだから5試合か……

 あっ、剣術科の他に魔法科もあるから計10試合になる計算か……

 それなら午前中で終わるだろう。


 ニュイがつまらなそうにしていたので、父さんに言ってニュイと共に席を外した。

 行き先は時の鐘の近くにある公園だ。

 そこのベンチに腰掛け、来る途中で買ったポップコーンをニュイと一緒に食べる。


 ここなら、時の鐘も近くだし何かあった時に直ぐに対処できる。


 今回の魔獣召喚の件で腑に落ちないことがひとつあった。それは、明確な理由が無い点である。

 ロワード帝国がミスティナ皇国の皇都に打撃を与えて何の利益があるんだ?

 戦争を仕掛けるにしてもきちんとした理由付けは必要だろう。

 でなければ、教会からの指導を受け祝福を得られなくなる可能性もある。


 その答えがまだ導き出されないでいた。


 もしかしたら、あいつが狙っているのは……


 今回の関係者は、天空の島の司令室で監視している。

 何かあれば直ぐにでも連絡が入るはずだ。


 武道館から歓声が聞こえる。

 盛り上がっているようだ。


 皇都内はいつもより増して兵の数が多い。

 きっと例の件があるからだろう。


 俺達を見つけた兵士が1人寄ってきた。


「君達は武術大会を見ないのか? 」


「観戦していたのですが、この子が飽きてしまって……」


 ニュイをダシに使ってしまった。


「そうだったのか。女の子にはつまらないかもしれないな」

「はい」

「でも、ここら辺は武術大会が終わるまで立ち入り禁止だ。出来るだけ闘技場に行くように」

「わかりました。食べ終わったら戻ります」


 立ち入り禁止にしたのか……余計な事を……


 その兵士は連れの兵士を伴って、巡回を再開した。


 ここで長居する事は出来ないようだ。

 仕方なく闘技場に戻ろうとすると、


「ライル、遅くなった」


 声をかけてきたのはナハトだった。


「元気だったか? 」

「あーー、俺はいつだって元気だぜ」


 ニュイがナハトの尻尾に興味があるようで、動く尻尾を見つめている。


「ニュイ、久し振りだな。相変わらずライルにべったりか? 」


 ナハトがそう言うとニュイは堪え切れなくなったのかナハトの尻尾を掴んだ。


『ギャハーー! 』


 突然、尻尾を掴まれたナハトは、気味の悪い声を上げる。


「ナハト、その『ギャハーー』はないと思うぞ」


「な、何言っている。尻尾は敏感なんだよ。お前ら人族にはわかるわけねぇけどな〜〜。ギャハーー! 」


 また、ニュイがナハトの尻尾に悪戯したようだ。


「ニュイ、わかった。これで手を討とう」


 ナハトは、バックからペロペロキャンディを取り出しニュイに渡す。

 何故、ナハトがそんな物を持っているのかは疑問だが……


 ニュイは、そのキャンディーを受け取って美味しそうに舐め始めた。

 ナハトへの尻尾攻撃は一段落したようだ。


 すると今度は、


「みんないるから来ちゃった〜〜」


 リールが転移してやって来た。

 俺は、周りを見渡し誰もいない事を確かめ、


「リール、いきなり転移はマズいだろう? 」


「ライル〜〜私ちゃんと確かめたよ。ナハトみたいにバカじゃないもん」


「そうか、悪かったよ」


「おう、リール。来た早々俺様をバカ扱いしやがって、覚悟はできてるんだろうな? 」


「だって〜〜本当の事だもん」


「わかった。リール、お仕置きだーー!!。ギャハ! 」


 リールに掴みかかろうとしたナハトの尻尾はニュイに握られていた。

 ナハトは情けない声をあげ、その場に座り込んだ。


「ナイス! ニュイちゃん」

「うん」


 リールとニュイはお互い親指を立てて合図している。

 意思の疎通ができてるようだ。


「みんな揃ったから、闘技場に行こうか? 」


 俺は座り込んでいるナハトを置いてみんなを連れて闘技場の一般席に連れて行った。





「結構、派手にやってんじゃねぇか〜〜」


 ナハトは、試合を見ながら大きな声で話す。

 皇都には獣人もいるので外見では目立たないが、声の大きさは別である。


「うるさいよ〜〜静かに見てなよ〜〜」


 リールはナハトに文句を言うが自前の声の大きさはそんなものでは変えられない。


 今は3回生の魔法士同士の戦いである。

 水魔法と風魔法の使い手同士の戦いだ。


【アクアショット】水の弾丸を相手に放った。

 相手は、風魔法でそれをそらす。


「これは、魔力が尽きたものが負けそうだな」

「確かにね〜〜でも、みんな頑張ってて見てて勇気がもらえるよ」

「そうだな。真剣に勝負してるところがとても良い」


 戦いは魔力切れで水魔法の使い手が勝ったようだ。


「やはり、魔力切れが勝敗を分けるようだな」

「でも、それって負けた方は悔しいよね」

「確かに悔しい思いをしてると思う」


 優勢だったのは風魔法使いだった。相手の攻撃をそらす為、風魔法で防御をして魔力を消費しすぎたのが敗因のようだ。


 次は4回生同士の剣での試合だ。

 登場した人物の1人はあのロワード帝国の馬鹿息子だ。


「あいつってライルがチェックした人物だよね〜〜」

「そうだ。今回のターゲットの息子だ」


 俺とリールが話しているとナハトが


「あいつ、俺と同じ大剣を使うのか? あの体格じゃ無理だろう〜〜」


 確かに剣に振り回されそうだ。

 しかし、試合が始まると、身体強化を使ったのか剣を普通に使いこなしている。


「なんだ。普通に振れるじゃねぇか。でも、スピードは出てないな」


 打ち合いが始まった。相手の女性剣士は俊敏だ。

 剣を大振りする馬鹿息子の相手ではない。

 だが、おかしい。その女性剣士はしだいに遅くなってきた。

 まだ、体力的には問題ないはずだ。

 でも、とうとう……


「何かあの女の子、動きがおかしかったね〜〜」

「リールもそう思うか? 」

「うん、だってあの女の子強いよ。剣筋もいいしそれに速さだってナハトに負けてないもん」


「なんで俺を引き合いに出すんだよ。俺様はもっと速いっつーーの! 」


 ナハトは、自慢気にそう言いだす。


 確かにナハトよりは大分落ちるがあの女の子速さは本物だった。


 あの馬鹿息子、何か仕掛けたな……


 試合は終わったようだ。

 ロワード帝国の馬鹿息子が勝利のポーズをとっていた。


「さて、俺様はそろそろ行くぜ! 」

「あぁ、頼む」


 ナハトはそう言って闘技場を出て行った。


「じゃあ、私も〜〜」

「リール、頼むから自重してくれよ」

「ライルは何で私の時だけそう言うの? 」

「気にするな。挨拶みたいなものだ」

「本当、失礼しちゃうんだから〜〜これでも女の子なんだからネ」

「そうだな。ニュイをよろしくな」

「わかってるって〜〜。じゃあ、ニュイちゃん、行こう」

「うん」


 そう言ってリールもニュイと一緒に出て行く。


「さて、俺も戻るか……」


 俺は、一般席から貴族席にいる父さんのところに移動する。


 あとは作戦通りに事が運べば終わりだ。


「待ってろよ、悪人ども……」





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