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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第2章 暗躍編

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第79話 立ち合い稽古




 宴会が終わり、みんなに内容を伝えた俺は、お面をかぶって王城に赴く。


 城の最上階にあるテラスに笹竹に手紙が吊るされていた。


 ここは、王家のプライベートルームのはずだが……


 俺の存在を確かめるなら、見張りができる場所を選ぶはずだか……


 何かイヤな予感がする……


 俺は、手紙を受け取って王城の屋根に上がり中を確認する。

…………………………

 使者様へ


 武術大会の一般の部で優勝できますように。

 そして、妹と昔みたいに仲良くなれますように。


 ソフィア=ミスティナ

…………………………


 第1王女か……

 やはり、手紙を書いてきたな。

 武術大会って例の日だよな……

 相手の力量も知らずに生返事はできない。

 妹というのはソレイユ第二王女の事か……

 第二王女。嫌われてないぞ……


 さて……1度立合う必要があるかな。


 そのまま、俺は本部の自室に転移した。





 翌朝、ニュイを連れて実家のランドル家を訪れる。

 ニュイを見て、エリスは


「まぁ、可愛い子ですねーー」

「ニュイって言うんだ。宜しくね、エリス」


「はい。ニュイちゃん、仲良くしてね」

「…………うん」


 ニュイの人見知りが出たようだ。


「父さんはいるかな? 」

「まだ、書斎にいると思いますよ」


 2階のに上がり父さんの書斎に行きドアをノックする。

 中から返事が返ってきて、ドアを開ける。


「ラビス、今日は城に行けるか? 」

「何か用ですか? 」

「ヘンリー辺境伯が武術大会の観戦の為に、今日城に来るんだ。お前を会わせたい」

「ヘンリー辺境伯ですね。すっかりご無沙汰してますが……」

「お前が黒竜に連れ去られた時、随分心配してくれたんだ。お礼を言わなければならないからな」

「わかりました。それと、ニュイを連れて行ってもいいですか? 」

「その子か? アマンダから手紙をもらって聞いているよ。構わんよ。ニュイちゃん、宜しくな」

「……うん」

「可愛い子だな」


 ニュイは俺の後ろに隠れ、覗くように父さんを見ていた。

 大人の男の人はどうやら怖いようだ。


 ニュイを連れて登城すると、ヘンリー辺境伯が城のエントランス脇にある喫茶室で待っていた。


「おーー!! ラビス君か!! 大きくなって、生きてて良かった」


 大きな声を出して出迎えてくれた。


「ご心配かけました。ヘンリー様」


「いいや、構わない。君が無事でいてくれたのが1番嬉しい。それに、リアスも喜ぶよ」


 そうだ。リアス嬢達とはミツトの街であっている。

 どうやって誤魔化すか……


「良かったな。スミス。ラビス君が生きて戻ってくれて」

「はい。その節は、ご心配かけました」


 父さんもヘンリー辺境伯に礼を言う。


「そういえばラビス君は準男爵になったそうじゃないか? 君も立派な貴族だ。これからも宜しくな」


「ありがとうございます」


 ニュイは、俺の背後に隠れて出てこない。

 大きな声を出す人も苦手なようだ。


「ラビス君は可愛い子を連れているな」

「ニュイと言います。旅であった身寄りのない子供です。今、一緒に行動してます」

「そうか、ニュイちゃん、宜しくな」

「……うん」


「ヘンリー様は、武術大会の観戦にいらしたのですか? 」

「あぁ、毎年来ている。審査員のようなものかな? 」

「そうなのですか。王家の方々も出場されるのですか? 」


 出来ればソフィア王女の情報を知りたい。


「ここ何年かは、ソフィア王女だけだな」

「王女様も出られるのですね。1度、戦っているところを拝見したいです」

「まだ、優勝経験はないが、毎回良い成績を収めている。今年は、もしかすると優勝するかもしれないぞ」

「お強いのですね」

「あぁ、今も武道館で鍛錬しているはずだ。良かったら、一緒の陣中見舞いにでも行くか? 」

「宜しいのですか? 是非ともお供させて頂きます」


「私は仕事がある。ヘンリー様、ラビスを宜しくお願いします」

「あぁ、任せておけ」


 父さんは仕事のようだ。

 俺は、ヘンリー辺境伯の後をついて武道館に赴いた。


 武道館は、王城裏手に隣接しておりしろから渡り廊下を通っていける。


 武道館に近づくと木剣の打ち合う音が聞こえてきた。


 中に入ると、そこは周りに観覧席を備えた本格的なものだった。


 鍛錬をしている兵士がヘンリー辺境伯を見つけて深々と礼をする。


 昔、騎士団長を務めていただけあって兵士達から羨望の目で見つめられていた。


「ラビス君、今、立ち会い稽古しているのがソヒィア王女だ」


 ヘンリー辺境伯が言うように、王女はイケメン騎士と試合形式の稽古をしている。使っているのは真剣だ。


 20歳ぐらいのイケメン騎士は、近衛騎士団の一員のようだ。


「随分、王女は力強い剣を振るうのですね」


 その体格に合わず、男のような剣捌きだ。


「そうなんだ。前から言ってるのだがね。でも、あの体格であれだけ動ければ大したものだろう? 」


 確かにそう思うがもう少し振りを小さくすれば、次の攻撃までもっと早く動作に移れる。それに攻撃の後の隙もできないだろう。


「はい。力強いです」


 稽古が終わったようだ。ソフィア王女は、ヘンリー辺境伯を見つけて近寄ってきた。


「やぁ、ヘンリー元団長、息災か?」


「相変わらずです。王女は、今年は優勝を狙っているのでしょう? 剣に凄味が感じられましたよ」


「優勝を狙っているのは、出場する誰もだよ。あれ、君は確かラビス君だったかな? 黒竜の元から生還した」


「はい。先日は、謁見させて頂きありがとうございます」


「ヘンリー元団長と知り合いだったとはな」


「父の縁で幼少の時、お会い致しました」


「そうか、確かスミスは元団長の右腕だったと聞いている。君も剣を嗜むのか? 」


「我流ですが、少しだけ経験があります」


「そうか、良かったら私と立ち会わないか? 黒竜からの生還者と立ち合ってみたい」


「私のような者でよろしければ、お願い致します」


 俺は、うまく王女と立ち合う事が出来た。


 使う剣は、木剣だ。


 武道館で訓練していた者も王女と見知らぬ男が立ち合い稽古するとあって、話のタネに近寄ってきた。


「木剣でも当たりどころが悪ければ大怪我をする。大丈夫か? 」


「構いません。本気でぶつかってきて下さい」


「ほほぅ。後で泣き言を言われても知らんぞ」


「えぇ、承知しています」


 王女と立ち合っていたイケメン騎士が審判を引き受けた。


 ここで王女を鑑定すると、

………………………………

 ソフィア=ミスティナ(16)女性

 ミスティナ皇国第1王女

 Lv 15 

 HP 32/38

 MP 35/35

……祝福……

 剣技

 聖剣

……スキル……

 ブレイド・トルネード

 礼儀作法

 身体強化

………………………………


 同じ歳だったのか……

 聖剣を扱えるのか……

 ブレイド・トルネードは初めてだな……



 開始の合図とともに、王女は剣を握る手に力を入れた。


 筋肉の動きで攻撃のパターンがわかってしまうな……

  でも、いきなり斬りかかってこないのは合格だ。


 俺は、片手で剣を握り斜に構える。

 剣の切っ先は王女に向けてあった。


 王女は、剣を握りながらなかなか動こうとしない。俺に隙がないからだ。


 相手の力量を判断できる眼力もある。


 俺は、わざと隙を見せる。

 すかさず王女は、斬りかかってきた。

 剣で弾くと次の攻撃に移る。体格に似合わない動作の大きさで隙だらけになる。

 魔獣相手なら有効だが、対人相手では部が悪い。


 王女は、振り抜いた剣を軌道を修正して横から薙ぎ払うように振る。


 その技量はセンスはいいが、脇が甘い。

 ここで俺に攻撃されたら防御はできないだろう。

 俺は、その剣を剣で受け止め、相手を押して一旦、距離をとる。

 すると王女は、


「少しだけの経験などと私を偽ったな? 」

「本当の事です。私は、剣はあまり得意な方ではありません」

「剣はか……」


 そして、王女の連打が始まった。


 肩の力の入れ具合、目の矛先、腕や足の筋肉の動き、次の攻撃を読むことができる。素直と言えば聞こえは良いが、実戦では致命傷だろう。


 さて、どうするか……

 このまま勝ってもつまらない。

 少し遊んでやろうか……


 王女の剣を全て受け止め、今度は俺が攻撃を仕掛ける

 右から斜めに斬り下ろす動作をしながら、相手がそれを読んだと見て

 逆に左斜めに振り下ろす。


 王女は一瞬、驚くが何とか剣で受け止めた。

 それを今度は横から薙ぎ払う動作をしながら下から上に斬りあげる。

 王女は慌てて、後退し距離を取る。

 だが、そこは俺の間合いだ。


 突き刺す剣を避ける暇を与えない。

 俺の剣の切っ先は王女の喉仏の僅か数ミリのところで止まった。


『それまで! 』


 イケメン騎士の終わりを告げる言葉が述べられる。


 王女の汗が両目脇に垂れ、頬に辿って床に落ちた。


「私の完敗だ……」


「王女、ひとつよろしいですか? 」


「なんだ……」


「王女はなぜ、大振りな攻撃をするのでしょう? もっと体格にあった剣捌きなら私も勝てる自信はありませんでしたが……」


「そうか……そんなに大振りな剣捌きをしていたか? 聖剣を使う練習が仇になったと言うことか……」


 聖剣を扱うために、そのような剣になったのか……


「聖剣がどのようなものか私にはわかりませんが、いろいろなパターンを覚えた方が剣技にも磨きがかかると思います。それに、剣が素直すぎます。良き指導者に教えを請いたのはわかりますが、実戦では攻撃を読まれてしまいます。魔獣相手では通用すると思いますが、対人となると些か不安を感じます。私が振るった剣を思い出してください。相手の意表をつければ勝機はあります」


「確かに君の言う通りだ。君の攻撃は予想に反して違う軌道を描く。それは相手の隙を作る行為なのだな? 」


「はい。王女の持ち前のスピードと小刻みな剣捌きで相手に隙を作らせ、そして相手の意表をついてその力強い剣を振る得れば負ける事はないと思います」


「わかった。心得ておくよ。しかし、君は凄腕だな。どこでそんな技を覚えたんだ? 」


「大森林で生き抜くための剣でした。負けたら死ぬだけでしたので必死でした」


「そうか、実践から学んだのだな」


「はい。そうするしかありませんでしたので……」


 嘘も方便だ……


「良かったら騎士団に入らないか? 」


 ソフィア王女がそう言うと審判をしていたイケメン騎士が俺に威圧を放つ。


「嬉しいお誘いですが、正直、剣は苦手なんです」


「それだけの腕を持ちながら苦手は通用せんぞ」


「ですが、過去の事をいろいろ思い出してしまうので辛いだけなのです」


「そうか……無理にとは言わん。だが、気が変わったら言ってくれ。君なら私も堂々と推薦できる」


「ありがとうございます」


 俺は、道場を後にする。審判をしてくれていたイケメン騎士が睨んでいた。


 王女に勝つのは無礼だったかな?

 おまけにアドバイスもしてしまったし、まあ、気にしないでおこう……


 ヘンリー辺境伯は、そんな俺を見て


「さすがスミスの息子だな。今度は俺と立ち合ってほしいものだ。わははは」


「できればご遠慮させて頂きます。小さい頃、父様と撃ち合っていたヘンリー様の剣を覚えています。正直、俺では敵いません」


「そんな事はないぞ。わははは」


 豪快な人だ……


 剣の道に王道はない。優勝するかそうかはソフィア王女の鍛錬あるのみだ。

 だが、もう一つ依頼があったな?


 妹と仲良くか……


 これは、ソレイユ王女の心の問題かな……


 俺は、そう思いながら、ニュイを連れて王城を出ようとすると先程、審判役を務めたイケメン騎士が追いかけてきた。








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