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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第2章 暗躍編

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第76話 皇都での依頼(5)




 本部の自室で休んでいるとセレーネから呼び出しが入った。

 シドさんが帰ってきたようだ。


 俺は司令室に向かう。


「よぉ〜〜ライル君。待たせて悪かったな」

「シドさん、お腹が立派になったって本当ですか? 」

「セレーネから聞いたのか? 参ったな〜〜ほんの少しだけだからな! 」

「そうかもしれませんね〜〜。そうだ。シドさんの盾が出来上がりました」


 俺は亜空間収納から盾を取り出してシドさんに渡す。


「おーー! これは凄い盾だな。どうしたんだ、これ? 」

「シドさんの就任祝いに作ってもらいました」

「そうなのか? これをもらってもいいのか? 」

「はい。その為に作ってもらったのですから」

「おーー! あるがとよーー! ライル君〜〜」


 男に抱きつかれても嬉しくない……


「それと剣は素材が無かったので、また、今度です」

「それなら、昔から使っている剣があるから大丈夫だ。剣は使い慣れたほうがいいしな」

「そうですか。でも、素材を手に入れたら作らせてもらいます」

「そうか、悪いなぁ〜〜。今度メンデルと一緒に迷宮でも行くかな? 」

「程々にして下さいよ」

「わははは、わかってるって」


 ひとしきり大きな声で喜びシドさんに、今までの状況を伝えた。


「そうか……貴族の事は俺にはよくわからないがライル君がそうしたいのであれば、俺達はそれをバックアップするだけだ」


「すみません。わがまま言って」


「それが最善と判断したんだろう。気にする事はない」


「はい、ありがとうございます」


 しばらく司令室で今後の方針を話し合った。

 メンデル長官も今日あたり迷宮から出てくるはずだ。


 20階層より先に進まなければだが……


 メンデルさんとリールの顔を思い浮かべ不安になる。


 本部の自室に戻るとニュイがベッドで寝ていた。

 きっと疲れたのだろう。


 夕飯になるまで寝かせておこうか……


 すると、ドアをノックする音がした。

 扉を開けるとミルフィーがお茶を持ってきてくれたようだ。


「ライル様、お帰りなさい。お茶をお持ちしました」

「ミルフィー、良かったのに……」

「そういう訳には参りません」


 こういうところは頑固なんだな……


「そう言えばミルフィーに聞きたい事があるのだけど……」

「何でしょうか? 」

「昔の事を思い出させてしまうから遠慮してたんだけど、そうもいかなくなってしまってね」

「ロワード帝国の事ですね」

「うん……実は、今回の件はロワード帝国の差し金のようだ」

「あの国なら利益になるならどんなことでもしますからね」


 ミルフィーの怒りが伝わってくる……


「ガイブール伯爵って知っているかい? 」

「もちろんです。私の両親と兄弟の殺害に直接指揮した人物です」

「そうか……実は、その伯爵が今回の件のターゲットだ」

「そうでしたか……」

「ガイブール伯爵は、武術大会の来賓として皇都にくる予定だ。その息子は今、王立学院に留学生として通っている。そして、依頼主の婚約者の弟でもある」


「親子揃ってどうしようもないクズですね」

「息子の方はまだ調べてないからわからないが、その可能性は高い」

「婚約者の弟というとロワード帝国に依頼主の婚約者がいるのですね」

「そうだ。次代の当主と言ったところか」


「それからもうひとつ、そのガイブール伯爵は、ミルフィーの領地を引き継いでいる」


「…………」


「今回の件で俺はそいつを殺すと思う。それでいいか? 」

「いいえ。ダメです。是非とも私にやらせて下さい。ライル様、お願いします」

「…………ミルフィー」


 それ以上は何も言えなかった。

 怒りというものは時間が経てば収まるものだが、復讐心はやり遂げなければ収まらない。大切なものを奪われたのなら尚更だ。


「ミルフィーもお茶を飲みなよ。ニュイは寝ちゃったし」

「ありがとうございます」


 2人でテーブルを挟んで見つめ合いお茶を飲む。


 俺とミルフィーの間にあるのは、恋とか愛とかそんな甘いものではなく、怒りと決意だけだった。





 その日の夜、俺はブリュッセル伯爵の資料持って父さんのところに向かう。

 皇都にある屋敷にいるようで、その書斎に転移した。


 俺は、足が震えるくらい緊張している。

 大きく深呼吸して隠密と気配遮断を解くと


「誰だ! 」


 父さんの威嚇の声が響く。既に手は剣を持っていた。


「お久しぶりです。父様」


 父さんは、その言葉に驚き俺の顔を見ながら席を立ち、何も言わず抱きしめてきた。


「アマンダから聞いていた。私のところにも来て欲しいと何度も神に祈ってた」


「父様……遅くなりましてすみませんでした」


「いや、構わない。ラビスが元気に生きているならそれだけでいい……」


 父さんも震えているようだ。


「ラビス、もう一度顔を見せてくれないか? 」

「……はい」


 俺の震えはいつ消えるのだろう……


「ラビス、大きくなったな。もう、一人前の男性だ。アマンダによく似ているよ」


「父様は王城勤めなのですか? 」

「せっかく会いに来てくれたのに仕事の話か? そうだ。領地はお前の兄レナードに任せている」

「そうでしたか……」


「何だ。そんな遠慮するな。11年振りの親子の対面だぞ」

「えぇ……心配かけてしまって申し訳ありませんでした」

「わかっている。その時の状況がそうさせただけだ。今は、もう、違うぞ」

「あ……ありがとうございます……」


 涙が溢れ出て言葉にできない。

 父さんも目に涙を浮かべ言葉を探しているようだった。


「ラビスは、今16だろう。酒でも飲むか? 」

「少しなら……」

「なら用意するから待っててくれ」


 父さんが書斎を出て一階に降りて行く。

 すると、物凄い音を立てて走り寄ってくる人達がいた。


 ノックも無しにいきなり書斎のドアが開く。

 そこには、侍女のエリスと護衛騎士のフリードが息を切らして立っていた。


「ラビス様ーー!! 」


 抱きついてきたのは侍女のエリスだ。

 大きな声を出して泣いている。


 フリードさんも目に涙を浮かべていた。


「どうして、どうして、もっと早く会いに来てくれなかったのですか? 」

「ごめん、エリス……」

「ごめんじゃないです。ラビス様は大馬鹿です!! わっ〜〜」


 エリスは怒りながら泣いていた。


 そこへ父さんがやってきて、


「みんな、下で酒を飲まないか? 」


 その言葉で俺達の再会は、飲み会へと変わった。


 屋敷の1階にある応接室で久々の再会を祝って乾杯する。

 そこには、父さん、エリス、フリードさん、そして奥さんのミリーさんが一緒にいた。


「みんな皇都に来てたんですね」

「そうだ。領地の方はレナードが連れてきた友人達が頑張っているよ」

「そうだったんですか」


「ラビス様、お身体の方は大丈夫なのですか? 」

「うん、今はすっかり良くなったよ。小さい頃はエリスに迷惑かけてばかりで申し訳ないと思っているよ」

「そんな事はありません。でも、良かった。ラビス様が亡くなられたと聞いて、私どうしたら良いかわかりませんでした。こうして会えるだけでも幸せです」


 そう言ってまた、涙ぐんでしまった。


「奥様から聞いたけど黒竜が住む里にいたんだって? 」

「えぇ、とても良いところです。フリードさんも行きますか? 」

「わはは、行きたいけど正直怖さもある。でもラビス様が一緒なら大丈夫かな」


「折を見て皆さんを招待します」

「それは嬉しいな。私もラビスが生活していたところを見てみたい」

「わかりました。近いうちにお連れします」


 すると、エリスが


「ラビス様は今どう過ごされているのですか? 」

「うん。ちゃんと話すよ。でも、今日は父様に協力してもらいたいことがあって訪ねてきたんだ」


「私にか? 」


「はい、実は……」


 みんなにこれまでの事を話し、そして、この皇都で起きようとしている件を伝えた。


「そうか……」


 父さんはブリュッセル伯爵の資料を見ながら何か考えている様子だ。

 するとエリスが


「ラビス様があの噂の使者様だったのですかーー? 」

「俺だけじゃないけどね。そうだよ」

「立派です。あの病弱だったラビス様が立派になられて嬉しいです」


 そう言ってまたエリスは泣いてしまった。


「そうか、あの使者様がライル様だったなんて、弱きを助け強きを挫くと、もっぱらの噂だよ」


 フリードさんまで自慢気だ。


 すると今度は父さんが


「ラビスが言いたい事はよくわかった。これが本当なら由々しき事態だ。直ぐにでも王様に申し上げなければならない。だが、ラビスの言うブリュッセル家の件だが存続は厳しくなると思う」


「父様の力でもダメでしょうか? 」


「ラビスも知っての通り、私は新興貴族だ。発言権は低いものと思って欲しい」


「ブリュッセル家は実際どんな立ち位置なのですか? 」


「主に外交部門を担当している。それは知っているか。先代の当主はとても優秀な人物だった。今は病気で療養しているが、王様からの信頼も厚かったし私も世話になった事がある。だが、現当主は、真面目なのだが先代の影に埋もれてしまって身立たないという印象だ。でも、立派な貴族だぞ。それは保証できる」


「そうですか……」


 ミルフィーが探ってくれた噂と同じだ。


「ところで、ラビス。奇跡を起こす気はあるか? 」


「奇跡ですか? 」


「あぁ、ブリュッセル家の存続をかけた奇跡だ」


「それはどのような方法なのですか? 」


「奇跡を起こすには、奇跡の証明が必要だ」


「奇跡の証明ですか? 」


「奇跡に出会わない人間には到底理解ができないからな」


「確かにそうですね」


「だから証明する事が必要なのだ。例えば、黒竜に連れ去られて死んだと言われていた人間が生きて生還するという奇跡とかだ」


「えっ、それって……」


「そう、ラビスが奇跡になるしかない。そして社交界のデビューを果たせ! 」


「はい!? 」


「良いのですか? 旦那様。ラビス様は二男です。ランドル家を継ぐ事は出来ませんよ」


 エリスは心配そうに尋ねる。


「あぁ、構わないさ。それに社交界デビューというのはそういう意味ではない。公の場でラビスが生還したと公表する事だ。それに伴ういろいろな面倒ごとが舞い込むかも知れない。でも、もう子供じゃない。狙われても対処できるだろう? 」


「父様、言ってる意味がよくわかりません。それに、そこまでしなくとも……」


「あとは父さんに任せておけ。明日、一緒に登城するぞ! 」


「えーー!! 」


 俺は何かを間違えたのかも知れない……






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