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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第2章 暗躍編

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第67話 迷宮(4)





 10階層のボスを倒し、ボス部屋の奥にあるエントランスのような広い場所で、床から突き出た水晶に触れ、そして階段を降りて安全地帯に入った。


 ここから先は、魔物の数が今までとは比べられないほど多くなり、20階層のボス部屋を攻略できるのは、稀だと言う。


 殆どのパーティーが、この先には行かず、先程触れた転移水晶で地上に出るのだと長官が言っていた。


 でも、安全地帯には、3張ほどテントが張られており、攻略者もいるようだ。


 俺達がテントを張っていると、こちらをチラチラ見ていた騎士らしき振る舞いの女性がこちらに歩いて来た。


「私達は、アステル教会 乙女桜騎士団の者で、私は、副団長のセイシャルと言う。こんな事を頼むのは、面目ないのだが、少し、食料を分けてもらえないだろうか? 」


 冒険者にとっては、食料や水は命の生命線だ。それを、譲って欲しいと頼むのは余程の事なのだろうと察する。


 すると、長官がテント張りの作業を中断して、


「アステル教会の人達なら断る道理もない。食料だけで良いのか? 水とかは足りているのか? 」


「感謝する。水も心許ないが、生活魔法を使える者がいるので何とかなる。食料は、先の先発隊に殆ど分け与えてしまって、私達の分は残り少ないのだ」


「わかった。食料は、何人分用意すればいい? 」


「ここにいるのは2名だが、今、街に買い出しに行っている者が1名いる。明日には、戻って来るだろうから、出来れば2名分程、1日分の食料を分けてもらえないだろうか? それが無理なら1名分でも構わない」


「わかった。テントを張り次第、騎士様達の食事を用意しよう。良かったらみんなで一緒に食べようじゃないか」


「かたじけない。食事の誘いは嬉しいのだが、もう1人は、テントの中で寝ている状態なのだ」


「寝ている? 具合でも悪いのか? 」


「ここに来るまでに魔物に襲われて腕を失ってしまった。顔にも傷が残ってしまい、今は安静にさせている」


 長官と乙女桜団のセイシャルが話をしていると、リールがテントを張り終わって、2人のところまで来た。


「あ〜〜その人見た事ある。確か、私をゲスな冒険者から守ってくれ人だ〜〜」


「おや、貴女は、あの時の確か〜〜黒ギャルとかリヒト様が言ってた者だな」


「黒ギャル!? よくわかんないけど、その時はお世話になりました〜〜」


「いいや、リヒト様達が勝手にやった事、私が礼を言われる筋合いはないよ」


 俺は、その『黒ギャル』という単語を使う相手がすぐわかった。


 立花だ……

 あいつ、リールを黒ギャルと呼んだのか?

 しょうがない奴だ……


 仕方がない。リールが世話になったようなので、俺は、


「こんにちは。話は聞きました。その腕を怪我している方にこの薬を飲ませてあげて下さい」


 俺は、バッグから神樹の実を加工した最上級回復薬エクサリーを渡す。

 腕の欠損なら問題なく復元できるはずだ。


「あれ、君は、確かどこかで会ったような……」


「ミツトの街で、お会いしました。誰かと人違いされていたようですが」


「そうだ。確か、聖女リアス様がそう話していた」


 リアス嬢って聖女と呼ばれているのか……


「先程、先発隊と言ってましたが、この間の方々ですか? 」


「そうだ。私達は、怪我を負った者を介抱するために残ったのだ」


「そうだったんですか」


「命に別状はないのだが、念のために休ませている。腕を失った事と顔の傷の事で少し心が不安定なのだ」


 確かに、腕を失えば気落ちするだろう……

 あの薬を飲めば、腕は復元できるし顔の傷も治せるが教会に知られては困る。

 さて、どうするかな……


「そうでしたか。その薬の効果は保証します。私は、いろいろな国を旅しています。その時に路銀に困った薬師さんがいまして、その薬を買ったのです。貴重なものだと言ってました。2本ほどその時に買ったのですが、そのうち1本は、病で苦しんでいた行商人に渡しました。その行商人はその薬を飲んで危篤状態を脱しました。その効果に驚いたほどです。きっと、その騎士様にも効果があると思います。遠慮なく飲ませてあげて下さい」


 もちろん、嘘だ……


「そんな貴重な物を……かたじけない」


 少し胡散臭い設定だったかな……


 そう言って、乙女桜団のセイシャルさんは、テントに帰っていった。

 しばらくして、そのテントは、ほのかに光り出し、


『おぉ〜〜!! 』『えっ〜〜!! 』


 と、乙女らしからぬ叫び声が聞こえてきた。






 テントを張り終わり、食事の用意をし始めた頃


『ドカ、ドカ、ドカ……』


 さっきの乙女桜団のセイシャルが、地響きを起こす勢いでこちらに走ってきた。そして、


「き、君、さっきの薬は、何だ! 」

「薬ですけど……」

「そうだ、その薬だ。あれを飲んだサーラの手が、手が〜〜」

「どうかしましたか? 」

「生えてきたんだ。元に戻ったんだ。それに顔の傷も無くなった! 」

「それは凄いですね。薬が効いて良かったです」


 俺に掴みかかる勢いで捲したてるセイシャルを見兼ねて長官が


「それは、良かった。きっと、アステル教の方々は、アステル神のご加護があるのだろう。普通、高価な薬といえどもそこまでの回復はあり得ない。普段の敬神が神に通じたのであろうな」


「そうか、そういう事なのか? 」


 セイシャルもアステル神という言葉で少し落ち着いたらしい。


「それでも、君があの薬を分けてくれなければ、このような奇跡は起きなかった。感謝する。ありがとう、ありがとう」


 長官は俺の方を向いてウィンクした。

 神の祝福という恩恵が授かるこの世界ならではの奇跡に対する弁明だ。


 でも、これ以上の接触はマズい……

 バックに教会が控えている立花やリアナ、リアス嬢達には絶対にバレるわけにはいかない。


 容態が良くなった女性騎士サーラとセイシャルを招待し夜は、食事会となった。


 俺は、できるだけ接触を控えてその場をやり過ごす。

 メリーナ姉さんが意外とおとなしかったのは、2人がリアナ嬢の配下の者だと知ったからだ。


 姉さんは、未だリアナ嬢に対する苦手意識が治っていないようだ……


 食事会を解散して、俺は長官の元を訪ねる。そして、


「長官、話があります」

「言わなくていい。わかっている」

「今夜、先に行きます」

「そうか、みんなには言っておくが無理はするな。この先は、1人では難しいぞ」

「無理はしません。危険な状態になったら転移して逃げます」

「それと、ニュイだが……」

「長官達にお願いします」

「それは、無理だ。もう、ライル君の後ろにいるよ」

「えっ!? 」


 俺は後ろを見るとニュイがちょんと座っていた。

 嘘、気配に気づかなかったぞ……


「ライル、行く、私も」


 言っても聞かなそうだな……


「わかった。それと、長官達も無理をしないで下さいね」

「あ〜〜危なかったらリールに頼んで転移してもらうよ」


 その言葉を聞いて安心した。


「では、行ってきます」

「気をつけてな」


 俺は、ニュイと共に先に迷宮を進む事にした。





 立花達は、2日前にここを出たようだ。

 順調に行けば14階層辺りにいると乙女桜団のセイシャルが言っていた。


 俺はニュイを背負い隠密と気配遮断を重ねがけして、迷宮を走り抜ける。

 前に立ちふさがる魔物は、斬り捨てるがこちらに気づかない魔物は無視した。


「ニュイ、大丈夫か? 」

「平気」


 夜だから眠いだろうに……


「寝ててもいいぞ」

「平気、昼、寝た」


 そういえば、昼間は、俺の背中で寝てたっけ……


 この迷宮では『衛星』の機能が使いづらい。

 深く潜れば潜るほど、雑音が入って通信も無理そうだ。

 自分の位置は辛うじて示されるが、チェックした人物を探す事は出来なくなってしまった。


 地下の亜空間である竜の里でも使えた衛星が迷宮では利用し難いなんて、ここは、神の力を阻害する何かがあるようだ。


 さて、そろそろ11階層は、終わりだ。

 確かに出てくる魔物数は多いが、見つからなければ問題ない。


 スロープのような下り坂を降りるとそこは12階層だった。

 地下とは思えない平原だ。

 竜の里ほどの規模ではないが、亜空間で出来ているのだろう。


 バックからりんごジュースを取り出してニュイに渡し、俺は水を取り出して飲んだ。


「ニュイ、そろそろ行くぞ」

「うん」


 隠密と気配遮断はそのままだ。身体強化をして一気に草原を駆け抜ける。

 この草原には、多くの魔物がいたが、大概は無視される。

 しかし、鼻の効く魔物もいるようで、俺達の後を追ってくる奴もいた。

 俺は、風魔法を繰り出し後方の魔物を駆逐する。

 前方に立ち塞がる魔物は斬り捨てた。


 しかし、草原が終わると林となった。

 走りづらく、しかも、木の魔物トレントがいるので面倒だ。

 林の木に擬態し枝には毒もあるらしい。

 他の魔物に気をとられ、木に擬態したトレントの毒にやられる冒険者も多いだろう。


 俺は、前方を火魔法で焼き払いながら林の中を進む。

 トレントも木である以上、火魔法は有効だ。


 林の中を進むと突き当たりに切り立った崖があり、そこには洞窟の入り口がある。


 あの洞窟に入れば、13階層に行けるだろう……


 洞窟に到着し入り口に入ろうとしたら、上から岩が崩れて落ちてきた。


 罠のようだ……


 しかし、俺は、そこを駆け抜け中に入る。

 背後では、岩が地面に当たる大きな音がした。


 洞窟を下ると13階層に辿り着く。

 ここも一気に駆け抜ける。


 13階層は、通常の洞窟の迷宮だ。迷路のように入り組んでいる為、全力で走るのは難しい。


 でも、ニュイの千里眼で出口の所在はわかる。

 ニュイは、うさぎを先行させ、魔物を狩りながら最短距離の道筋を見つけた。


 俺は、ニュイの念思でその情報を受け取り、迷路の内を走り抜ける。

 罠が発動してもその場所は、既に走り抜けている為、被害はない。


 でも、この迷路で魔物の囲まれたら面倒だろうな……


 俺は、長官が1人で15階層まで攻略できたのが不思議に思えた。

 余程の強い精神と魔物を倒す技術を持っていなければ無理だろう……


 それに、ここまで来ても、まだ立花達と遭遇しない。

 立花もそれなりに強いというわけか……


 俺は、そんな事を思いながら13階層の出口に向かった。


「ライル、あっち」


 ニュイが示した方向に出口がある。

 だが、そこには、如何にも怪しい甲冑を着込んだ2体の銅像が出口を挟んで立っていた。


「これ、きっと動くようよな? 」

「おもちゃ? 」

「おもちゃじゃないよ」

「そう、つまらない」


 ニュイは不機嫌そうに呟き、その銅像に興味を失った。


 走り抜けても後から追いかけてこられても面倒だ。


【ファイヤーランス】


 火で作り出された槍は、その二体の銅像目掛け放たれた。

 だが、着込んでいる甲冑に阻まれて致命傷を与える有効打にはならなかったようだ。


 銅像の目が光り出し、こちらに向かってきた。

 今度は、風魔法を放つ。

 これも銅像の甲冑に跳ね返されてしまった。


 魔法耐性のある甲冑なのか?


 俺は、剣に魔力を流し黒竜のブレスを纏った黒剣を銅像の騎士めがけ薙ぎ払うように横に剣を振る。


 黒剣が銅像の騎士を両断する。


 腹のあたりを切り裂かれた銅像は、腹から上の部分が地面に崩れ落ちた。

 もう、一体の方は、跳躍して頭から両断した。

 左右に分かれた銅像は、地面に倒れ床に吸収されていった。


 俺達は、13階層の出口を潜り抜け14階層に出たところで地上では、夜が明けた時刻となった。


 俺とニュイは、この場所で仮眠を取ることにする。

 周りには魔物除けの魔石を置き、簡単な寝床をこしらえた。


 まだ、先は長そうだ……







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