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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第2章 暗躍編

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第61話 アステル神




 メリーナ姉さんの冒険者仲間『純情可憐』のメンバーに、俺とニュイは、揉みくちゃにされながら、何とか茶店を脱出した。


 街に来た本来の目的は、教会に行く事だ。

 俺は、ニュイを連れて教会に急ぐと、ニュイが、


「ここ何? 」

「何だろう? 図書館みたいだけど」

「入る? 」

「入りたいの? 」

「うん」


 ニュイがその建物が気になったわけは、何となくわかる。

 道路から見えるところにうさぎの絵が書いてある本が並んでいたからだ。


「しかし、本もだいぶ普及したようだな」


 10年前、紙は貴重なものだった。

 俺達の計画に、紙は必要だったので、教会をはじめ、王家、貴族、そして、庶民へと普及させていった。

 しかし、独占的に、ヒュール商店が紙を扱う事は、他の商人達を敵に回す事になる為、その製法を公開した。

 すると、各国こぞって、紙を作るようになり、扱う商店も増えだした。

 現在では、紙は。庶民価格で買えるほどになった。


「紙が普及すれば、本もできるようになる。そうすれば、知識の共有もでき、飛躍的に文化が発展する。文化が発展すれば、今まで埋もれていた人達も活躍できる場所が出来るようになるわ」


 そう言い出したのは、ユオだった。

 彼女の商才は、確かなものだった。


 俺とニュイは、受付で、お金を払い図書館に入る。ニュイが真っ先に目指したのは、やはり、うさぎの書いた絵本だった。


「うさぎ、たくさん、いる」

「そう言えば、ニュイは、字が読めるのか? 」

「字って何? 」


 そうか、俺は、ニュイに字を教えてなかった……


 これは、マズいと考え、ニュイにその絵本に書いてある字を読んで聞かせた。

 ニュイは、大人しく聞いている。時々、うさぎの絵を見て『ニタッ』って笑っていた事は、秘密にしておこう。


「しかし、よく出来た物語だ。絵も上手し誰が書いたんだ? 」


 俺は、作者を見て驚いた。その絵本の作者は『ユオ』と書かれていた。

 そして、俺は、不安に思う。まさか、他にも……


 俺は、図書館の本をもて見ると、ユオ作の本は、かなりある。

 それに、研究書まで書いていた。


「少しは、自重しろ……」


 その中で、見たくない本の題名が飛び込んできた。


『男性同士の性的行為に関する一考』 著者 ユオ


 マジか……


 俺は、それを見なかった事にした。





 図書館で随分と時間を過ごしてしまったようだ。

 もう、陽が傾き始めている。


 ニュイと共に、急ぎ教会に行き、お布施を払い、拝殿で祈る。


 すると、祝福を受けた時と同じ感覚を味わう。


 辺りは、白くまわりになにもない。


 そして、あの子供が現れた。


『いや〜〜、随分、間が空いたじゃないか? 』


「アステル……」


『私の名前を覚えているってことは、少しは、その恩恵を感謝してるって事かな? 』


「恩恵が無かったら、普通に生きていられたよ」


『まぁ、君は、そういう事には欲がないからね。でも、今は、どうだい? 少しは、欲が出てきたんじゃないか? その能力でチマチマと小さい事をしてるようだけど』


「見てたのか? 」


『だって、まさか、君が、能力を使って偽善者集団を作りあげるなんて思ってもいなかったからね。笑、笑、笑』


「どう思うかは、個人の勝手だ」


『それもそうだね。実は、私も昔は、君と似たような事をしたんだよ。神託を頻繁に出したり、この手で自ら救ってあげたりね。でも、生物は、勝手な生き物だよ。欲も深いしね。それに、私の名前を使って、勝手に戦争しだした時は呆れたよ。聖戦とか言ってね。もう、言葉も出なかったよ。だから、私は、完全な傍観者になったのさ』


「そんな事は、どの世界にだってある。俺にとっては、どうでもいい事だ。俺が知りたいのは、ノーチェの居場所だ」


『君は、忙しない人物だね〜〜、少しは、会話を楽しむとかしないのかな? まぁ、いいけどね。あのハーフバンパイヤの娘、悪魔種なら冥府にいると思うけど 』


「冥府ってのは、どうやって行けばいいんだ? 」


『冥府に行くのかい? 気がしれないね。あんな穢れたところ。でも、その質問には、答えられないよ。これでも、悪魔種とはあまり良い関係ではないのでね。でも、ヒントは教えてあげるよ。迷宮の最下層に行ってごらん。何か見つかるかもよ』


「迷宮の最下層? 」


『未だ、誰も到達した事ないところだよ。君なら、もしかして、ね』


「それは、どこの迷宮だ? 」


『それぐらいは、自分で探してよ。僕は、それ程優しくない。それと、君に言っておきたい事があったんだ』


「言っておきたい事? 」


『封印だよ。君は、竜神と大精霊の封印を解いたね。そして、今度は、海龍神の封印を解こうとしてる。そうだね』


「あぁ、間違いない」


『君は、封印って何だと思う? きっと、真の答えを持ち合わせていないのだろうね。だから、知りたまえ。表面的なものもその裏に隠されているものもね』


「それは、どう言う事だ」


『ヒントは、あげたよ。じゃあ、またね』


 そう言ってアステル神は、消えて行った。


 俺が目を覚ますと、ニュイが心配そうに見つめていた。

 感情を顔に出さないニュイを見て、俺がそう思ったは、きっと、ニュイの不安を感じ取ったのかも知れない。


「ライル、寝てた? 」

「少し、違うかな。でも、もう、大丈夫だ」

「うん」


 服を掴んで離さないニュイを連れて、俺は、サスケ家に戻った。





 アステル神の言った通り、迷宮の最下層に潜れば冥府に行けるヒントが得られるかも知れない。


 それと、封印の件も気になっていた。

 言葉通りに解釈すれば、この場合の封印とは、何らかの生物、事象、また、それらの持つ力を封じ込める現象だと言える。


 竜神様や大精霊の力が何か関係しているのか?


 この件は、情報が足りない。詳しく調べないと……


 まずは、迷宮だ。


 母さんが妹のサマンサ叔母さんと食事の用意をしている。

 俺は、母さんに、


「母さん」


「何? ラビス」


「迷宮って、この世界にどれくらいあるの? 」


「そうね〜〜私が知ってるのだと、3ヶ所かしら。このクロウ勇国にもあるのよ」


「そうなんだ。それで、最下層に辿り着いてない場所はどこ? 」


「それは、ミスティナ皇国の迷宮ね。あそこは、深くて強い魔物が出るから、まだ、誰も21階層以上は行けてないはずよ」


「そうか……」


「因みに、その21階層に行ったのは、私達のパーティーだったけどね。ラビス、もしかして、迷宮に潜るの? 」


「ちょっとね。用があって」


「もし、ミスティナ皇国の迷宮に潜る場合は、1人じゃダメよ。10階層から先は、魔物の数が半端なく多くなるの。1人では、魔物をさばけないわ」


「わかった。肝に命じておくよ」


 アステル神が言ってた迷宮は、ミスティナ皇国の迷宮の可能性が高い。


「それから、母さん、ニュイを学院に通わせる事って、出来る? 」


「ニュイちゃんを? 出来るわよ。ニュイちゃん、学院に通いたいの? 」


「学院? 」


「ほら、みんな同じ服を着て、勉強するところだよ」


「遊びじゃないやつ?」


「そうだよ。学院に通えば字も覚えられるし、友達も出来るよ 」


「友達、遊び……」


 あまり、気乗りしてないようだ。

 そんな様子を見ていた母さんは、


「無理に誘ってもダメよ。ゆっくりやれば良いのよ。それに、お母さんの名前を出せば、いつでも通えるから大丈夫よ」


 母さんは、学院にコネがあるようだ。


「そうか、急ぎ過ぎたよ。字は、俺が教えるから通いたくなったらちゃんと言ってくれ」


「わかった」


 ニュイは、頷いて俺を見てる。他にも何か言いたそうな感じを受けたが、あえて何も聞かなかった。


 海龍神王の封印を解きに行くのは2週間後だ。

 衛星では、迷宮の奥まで見通すことはできない。

 それは、実際に自分で潜らなければ、行けないことを意味している。

 迷宮の最下層まで、辿り着くののどれくらいかかるかわからないが、少しでも潜っておけば、次からは、そこまで転移でいけるはずだ。


「母さん、しばらく留守にするけど、ルシーの事よろしくね」


「わかってるわ。ルシーは、学院に通うそうよ。もちろん、ここから通ってもらうわ」


「そうなんだ。ありがとう、母さん」


「ちゃんと、戻ってくるのよ」


「わかった、ちゃんと戻ってくるよ」


 迷宮に行くとなるとニュイは、ここにいた方が安全だ。


「ニュイ……」


「行く、私、迷宮」


 ニュイは、俺の袖をしっかり掴んでいた。


 置いていかれる事に不安を感じてるのかも知れない。


「わかったよ。一緒に行くか?」

「うん」


 それなら、ニュイの防具を揃えないと……


 迷宮に行く前に、先に竜の里に行って防具を揃えるか……


 俺は、また、ニュイを連れて竜の里に戻るのだった。








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