第59話 新生『ナイト・フォグ』
夜、サウザンド国に動きがあった。
俺は既に王城に忍び込み、認識阻害と隠蔽を使ってとある部屋で聞き耳を立てていた。
「国王陛下とピリカ王子が全快したそうだな? 」
「はい、どういうわけかわかりませんが……」
「まぁ、良い。胡散臭い旅の魔術師から買った呪いの魔道具だ。効果が切れたのだろう」
「ですが、このままと言うわけには、お父様」
「安心しろ、もう、手は打ってある」
「そうですか、でも、これで私の可愛いプラダがこの国の国王になれるのですね」
「あぁ、私達の子供が、国王だ。もう、それは目の前に来ている」
「お父様」
2人は、恋人同士のような熱い抱擁を交わしていた。
それを見た俺は、
親子であんな抱擁するか?
現、国王の子ではないのも理解できる。
プラダ王子は、近親相姦でできた子のようだ。
まぁ、事情などどうでもいい。
腐った奴らは、それなりの罰を受けてもらう……
俺は、衛星で王妃の父親であるグラダ伯爵の自宅を調べ、転移した。
まずは、書斎を探る。
机の中、書棚、どこを見ても証拠らしい物は無い。
きっとどこかに隠し扉があるはずだ。
俺は、風魔法に探知の魔法を重ねがけし、部屋の内部を調べる。
すると、書棚の奥に金庫らしい物を発見した。
隠し場所としては、テンプレな場所だ……
俺は、書棚を動かし、奥にある小さな扉を開ける。
そこには、金貨や、宝石、そして、帳簿らしき物がある。
俺は、その帳簿をめくり中を確認した。
グラダ伯爵は、国の購買部門を担当していたようだ。
請求額と支払額に差異がある。
これは、裏帳簿なのだろう。
正式書類と照らし合わせれば、横領の証拠になる。
やはり、国の金をくすねていたか……
それに、協力者らしい者たちの名前もある。
悪人のやる事は、大方、決まっている。
俺は、その帳簿をバッグに入れ、書棚を元に戻して王城に転移した。
すると、衛星からピリカ王子の部屋に入り込もうとしている間者を確認する。
ドアの前で立ち番している兵を香のようなものを焚いて眠らせたようだ。
俺は、転移して侵入しようとする者達2人を背後から襲い気絶させた。
こいつらだけか?
俺は、そいつら2人を連れて国王がいる居室に転移した。
「貴様、何者だ! 」
国王は、起きていたようだ。今の声で、ドアの前にいた兵士が、中に入ってきた。
「俺は、クロウ勇国にいるプリメラ王女の侍女サマンサから依頼を受けた者だ。現国王とピリカ王子を救って欲しいと依頼された。国王の貴方とピリカ王子の呪詛を解き、薬を飲ませて回復させたのは、俺だ。しかし、依頼は、まだ、終わっていない。ここにいる者達は、ピリカ王子のところに忍び込もうとしていた奴だ。俺が、気絶させた」
「サマンサから依頼を? そうか、私が治ったのは貴殿のおかげか」
「国王様、そんな賊の言うことなどに耳を貸してはなりません」
「信じるか否かは、国王次第だ。それと呪殺を企てたのは、夫人とその父親だ。自分の息子であるプラダを国王にさせたかったらしい。これが証拠だ」
俺は、グラダ伯爵邸に隠してあった裏帳簿を投げる。
「それには、グラダ伯爵の裏金の流れと、協力者の名が書いてある。それと、プラダ王子は、そのグラダ伯爵と王妃との間にできた子だ。国王の貴方とは血は繋がっていない。あとで、ゆっくり、聞くのだな。では……」
「待てーー! 」
俺は、言うことだけ言って屋敷に転移した。
◇
サスケ家屋敷に帰ると、メリーナ姉さんは、起きていた。
「良かった〜〜帰って来た」
「まだ、寝てなかったの? 」
ベッドを見るとニュイは、疲れたようでぐっすり寝ていた。
何故か、うさぎのぬいぐるみを抱いている。
姉さんは、ベッドから起き上がって、
「寝てたんだけど、目が冴えちゃって……」
もう、こうなると病気に近い症状だ。
その原因は、俺なのだが……
姉さんは、ノーチェの父親クローフに顔を知られてる。
俺が、あの場所に姉さんを連れて行ってしまったせいで、狙われる可能性もある。
俺は、もう、隠しておけないと判断した。
「姉さんに、これあげるよ」
俺は、ユオから貰った腕輪を差し出す。
「これ、ラビスが誰かと連絡を取ってた腕輪だよね? 」
俺は、本部に連絡が取れる事、ユオの経営するヒュール商店から本部に転移できる事など、腕輪の機能を説明する。
「いいの? これ、大事な物なのでしょう? 」
「そこまで大事というわけではないけど、悪用されたり、秘密を知られたりするのは、困るかな。でも、それがあれば、姉さん、不安にならなくてすむでしょう? 」
「そうね。確かに、不安は、減るかも……」
「明日にでも一度連れて行くよ。みんなに姉さんの事、紹介したいんだ」
「本当? 」
「それで姉さんが気に病まなくて済むなら、その方がいい」
「ラビス〜〜! 」
これで良かったのかはわからない。
でも、いざとなれば、姉さんを、本部に保護できる。
「姉さん、俺の能力の事は知ってる? 」
「すごい能力を持っているって母様が言ってたけど、詳しい事は知らないわ」
「昨夜は、転移魔法を使ったのは覚えているよね? 」
「うん、一瞬で、景色が変わって驚いたよ」
「その他にも、いろいろあるんだ。俺は、その能力を使ってある事をしている」
「もしかして、使者様? 」
「なんで知ってるの? 」
「だって、ニュイがそんな事言ってたじゃない」
「そうだったね。それを、仲間でしている。明日、見てもらえればわかるけど」
「うん、楽しみにしてる」
俺の全てを見られるようで、正直怖い。
でも、知って欲しい。
大切な人に隠しごとするのは辛いから……
◇
翌日、ニュイとメリーナ姉さんを連れて、本部上層部にある自分の部屋に転移した。
すると、姉さんは、
「何、ここ、すっごい見晴らし。それに、何なの、この豪華な部屋は! 」
「俺の部屋らしいけど、まだ、使った事ないんだ」
「そう言えば、引越しするって言ってたわよね。ここなの? 」
「そうだよ。今まで、竜の里ってところにいたんだけど、やっと、これが完成したんだ」
姉さんは、部屋をあちこち見だした。
ニュイも、ベッドで遊んでる。
「ねぇ、ニュイ、そのうさぎさんどうしたの? 」
「メリーナ、買った、もらった」
「そうだったんだ。良かったね」
「うん」
ニュイの腕の中には、常にうさぎさんのぬいぐるみが抱かれている。
よほど、気に入ったらしい。
「ラビス、ラビス、外、外、見て! 」
姉さんがベランダから外を見て驚いている。
「雲が目の前にあるよ。ここ、どこなの? 」
「ここは、天空の島と言って、空に浮かんでいるんだよ」
「そら〜〜! 」
「そう、驚くのも無理ないけど、これを作るのに竜神様や、古竜と言って、魔法に長けてる竜と協力して10年かかったんだ」
「そうなんだ〜〜」
その時、連絡が入る
……………………………
「ライル様、お部屋にいらっしゃるのですね」
「あぁ、姉さんとニュイを連れてきたよ」
「はい、存じております。長官が皆さんをお連れして司令室に来て欲しいとおっしゃってます」
「わかった」
……………………………
「姉さん、聞いてた? みんなに紹介するよ」
「うん、でもラビスは、ライルって名乗ってるんだよね。私も、ライルって言った方がいい? 」
「ここでは、好きに呼んで構わないけど、地上では、身内以外、ライルの方が無難かな。ラビスは、死んでて当然の扱いになっているし」
「わかったわ。ここや家族の前ではラビス、他の場所ではライルって呼ぶね」
俺達は、部屋を出て転移ではなく階段を使って、司令室に行く。
そこでは、長官を始め、事務員さん達が揃って迎えてくれた。
『ナイト・フォグ、本部司令室にようこそ。ライル様、メリーナ様、ニュイちゃん』
「は、はい、ラビスの姉のメリーナです。弟がお世話になっています」
大分緊張してるな……
「姉さん、みんなを紹介するよ。長官のメンデルさん、今は、ナイトって名乗ってます」
「メンデルさん、え〜〜と、あの時の冒険者のメンデルさん? 」
「久し振りだね。メリーナちゃんもこんなに大きくなったんだ。これは、私も歳を取るはずだ」
「何でメンデルさんが? 」
「姉さん、それは、俺が説明するよ。メンデルさんは、10年前、竜の里の地下亜空間に来てしまったんだ。それから、俺達の親代わりになってくれたんだよ」
「え〜〜そうなの〜〜? 」
「恥ずかしい話だが、黒竜に襲われて自分の不甲斐なさに呆れてね。それで、1人で迷宮に潜っていたんだ。その時、魔物の大群に襲われて奈落に落ちてしまったんだ。着いた先にラビス君がいたから驚いたよ。それから、みんなと一緒にいるんだ」
「そうだったんですか〜〜何でラビスは、言ってくれなかったの? もう〜〜」
「会えばわかると思ったからだよ。事前に説明したらつまらないでしょう? 」
「全く〜〜! 」
「そして、こちらが、事務員さん達、端から、事務総長のミルフィー、ルナ、セレーネ、そしてシエルにチエロだよ」
「ミルフィーです。お姉様、よろしくお願いします」
「ルナです。よろしくニャン」
「セレーネです。お初にお目にかかります」
「シエル、ヨロシク。チエロ、ヨロシク」
「皆さん、メリーナです。弟がお世話になっています。皆さんがいてくれたから弟も道を外さずにこれたのだと思います。ありがとうございます」
一応、挨拶は終わったかな……うむ。
司令室を見渡すとちょこんと座っている女の子と土下座状態のオッさんがいた。
「長官、もしかして? 」
「そう、元リーダーだ。私がスカウトした」
「そうだったんですか〜〜何か隠してる感じがしてましたけど、そういう事だったんですね」
「流石にバレたか、わはははは」
「シドさん、お久しぶりです。それで、何でその状態なんですか? 」
「これは、ケジメだ。俺が不甲斐ないばかりに、君を苦しめた。許して欲しい」
「それって、昔の事ですよね。わかりました。許します。どうか頭をお上げください」
「それと、メンデルから聞いた。君が私の足を治してくれたと」
「はい、そこのお嬢さんの依頼でしたので」
「ありがとう、ありがとう」
そう言いながら、俺のズボンを掴んで離さない。
「いいですよ。もう、長官、どうにかして下さい! 」
メンデルさんの顔は、ニヤケていた。
「お兄ちゃんが使者様なの? 」
「うん、俺だけじゃないけどね」
「あのね。私、使者様がきっとお父さんの足を治してくれるって信じてたよ」
「うん、ありがとう」
「ううん、お礼を言うのは私の方だよ、使者様、ありがとう、お父さんの足を治してくれて、私、とっても嬉しかった」
「ううん、こちらこそ、昔、お世話になったシドさんを治せて感謝してるよ。依頼を出してくれて助かったよ」
「うん」
ここで、メンデルさんがやっと出てきて、
「リーダーには、ここの司令室長をしてもらう事になった。テプタちゃんは、事務員見習いだ。ヨロシク頼むよ。リーダー」
「わかってる。こちらこそ宜しくな」
シドさんとその娘さんテプタが新たに加わった。
新生『ナイト・フォグ』の誕生だ。
そういえば、リールがいなかったな。どこ行った?




