第44話 情報
定例会議の翌日、ショルダンの街から東に位置する大森林の入り口に向かった。
それは、昨日、定例会議の後、ブラドから連絡があり竜神様が会いたいと呼び出しがあったからだ
そこで、竜神様は、
〜〜〜〜〜
『ライル、久しいのう』
「ご無沙汰してます」
『今日は、古竜から連絡がきてのう、例のものが出来上がったそうなんじゃ』
「本当ですか? 」
『そうじゃ、これで、お主達も動きやすくやるじゃろう』
「ありがとうございます」
『それでじゃ、代わりといったらなんじゃが、お主に頼みがある』
「私にできる事ならば」
『大精霊の封印を解いてもう10年程経つじゃろう? 実は、お主に、また、封印を解いて欲しいと古竜を介して連絡が来た』
「古竜様のお知り合いなのですか? 」
『いいや、そうではない。お主の本部を作り上げるのに、海上の島を使う予定だったじゃろう。その時、古竜が連絡を受けたと言っておった」
「封印ですか、その方は、どのようなお方なのですか? 」
『うぬ、海龍王じゃ』
「海龍神王、確か、海を治める神王ですか? 」
『そう、海の神王じゃ。陸を治める我ら竜神とは、縁の深いやつでな、時には喧嘩をし、時には助け合い、そんな関係をずっと続けてきた』
「そうですか」
『海龍王を崇めるのは、人魚族だ。ここから、西に行くとこの大陸が終わり、海となる。そこにある島に封印されているようじゃ』
「海ですか、その封印は、直ぐにでも解いた方が良いのですか? 」
『それは、お主の都合で構わん。ただ、島を1つ貰い受けた分、そう遠くない先でお願いしたいと古竜が言っておった』
「わかりました。日程は、こちらで決めて動きます」
『うぬ、お主達の好きで構わない。それと、お主達の例の島なのじゃが、いつ引き渡せば良いと古竜が言っておったぞ』
「はい。みんなに聞いて予定を組みます。日程が決まりましたら、報告します」
『わかった』
「いいえ。こちらこそ、古竜様にもよろしくお伝えください」
〜〜〜〜〜
と、言うわけで、海龍王の封印を解かねばならなくなった。そして、新しい本部の引き渡しの件をナイト長官に伝えておいた。
その時、ミルフィーが大森林手前の草原で手紙らしきものが落ちてると言われて、今、俺はここに来ている。
「しかし、ミルフィーも良くこんなところに落ちている手紙を見つけたな」
本部には、手紙を衛星を使って探すメンバーが5人程いる。その中でもミルフィーは、優秀な人物で、ここに来る前はロワード帝国の伯爵家の子女として暮らしていた。
この本部にいる者は、誰しも事情があるものばかりである。彼女もその1人であった。
俺は、泥で汚れた手紙を拾い、その中身を見た。
………………
シシャサマへ
ワタシヲミツケテクダサイ
ニュイ
………………
間違いなく依頼の手紙だ。
だが、その内容は謎めいていた。
私を見つけて、か……
何処からか風で飛ばされてきたのか……
俺は、ミルフィーに連絡を入れる
…………………………
「ミルフィー、いる? 」
「はい、おります」
「昨夜言ってた草原に落ちてる手紙、やはり、依頼の手紙だったよ」
「そうでしたか、でも、依頼主はいませんよね? 」
「うん、ニュイと言う名前は書いてあったけど、近くにはいない。内容は、『ワタシヲミツケテクダサイ』と言う謎めいた内容だ」
「そうですか、不思議ですね。近くに街や村はありませんし、私も周辺に範囲を広げて捜してみます。それで、その依頼は? 」
「今のままでは、受けられない。しばらく、俺が預かっておくよ」
「わかりました。お気をつけて」
「あぁ、わかった」
…………………………
俺は、周辺を探して、違和感を探る。
いつもの日課だ。
何もなさそうだ……
さて、どうするか?
俺は先に広がる森、大森林を見つめて、
入ってみるか……
森の中に入って行った。
◇
森は、静かで、人の侵入を拒むかのように下草が伸びている。
剣を抜き、草を刈りながら前に進んだ。
木漏れ日差し込み、大木が育つ森へと様相が変わる。
このあたりでは、下草はほとんど生えていない。
その代わり、大木の根が土壌から突き出て自由に伸びており、先程とは、違った歩きづらさを感じる。
森の湧き水が溜まった沼がある。
俺は、その沼のほとりに腰を下ろし水の波紋を見つめていた。
すると、ちょこんと顔を出す見たことのある錦鯉がそこにいる。
「よぉ〜〜久しぶりじゃ」
「確か、あなたは、青竜様のご主人ですよね」
「そうじゃ、よく覚えていたのう」
「それは、インパクトがありましたから」
「お主の気配を感じてこの沼に転移してきたのじゃ。どうじゃ、わしのところに来んかね? 」
「俺が行っても青竜様は、大丈夫でしょうか? 」
「構わぬよ。彼女も喜ぶであろう」
「そうですか、では、お邪魔します」
俺は、その錦鯉と一緒に、青竜宅に転移した。
「あら、久しぶりぶりね。あなたが慌てて出て行ったから、何事かと思ったらライル君を連れて来たのね」
「ご無沙汰してます。相変わらずお美しいですね」
「ほほう、そうじゃろう〜〜」
何故か旦那の錦鯉の方がうれしそうだ……
「まあ、立ち話もなんだし、お茶でも飲みながら話しましょう〜〜」
しばらくすると、青竜の使いのリザードマンがお茶を運んで来てくれた。
俺は、オレンジの香りのするお茶を飲みながらノーチェの事を思い出した。
このお茶、好きだったよな……
すると、以外にも青竜の口からノーチェの話題が出た。
「あの子、そう、混血吸血鬼の子が今代の魔王なんですって〜〜? 」
「そうなんでしょうか? 」
「それは、貴方達の方が詳しいでしょう? 私達、竜人が、可愛らしい魔王が誕生したって言ってたわよ〜〜」
「どうしてこうなってしまったのか、俺も含めて仲間も戸惑ってます」
「誰しも理由の無い行動はしないわ。きっと事情があるのね」
「それなら、事情を話してくれたって良かったと思ってます。黙っていなくなるなんて、淋しいです」
「そうね。君達は、仲が良かったから、当然そう思うわよね。でも、仲間が大切だから何も言えないってこともあるのよ」
「その可能性も考えましたが、答えは出ないままです」
「そういえば、1か月程前、あの混血吸血鬼の子、この大森林に来たって、あなた言ってたわよね」
「おう、確かに、あの吸血鬼の小娘だったぞ」
「えっ、本当ですか? 」
「確かじゃ、わしが一度覚えた魔力の波動を忘れる訳がなかろう。何でも、複数の魔力の波動を感じた。恐らく、魔物のものじゃな」
ノーチェが魔物と一緒にここに来た……
嫌、違う。ここで魔物を調達してたんだ。
先日の魔獣のポップは、大森林にいた魔物を使ったのか?
「それと、もう1人吸血鬼がおったようじゃぞ。あの小娘と波動が似ておった」
「もう一人の吸血鬼……」
ノーチェは、竜の里で俺と初めて会った時、竜の里から地上に連れてって、と言っていた。
あれから、ノーチェも転移できるようになり、そのことは、有耶無耶になってしまったが、あの時、確か、確かめたい事があると言っていた。
俺は、てっきり母親の件だと思っていたが、もしかして、確認したかった事は、父親の事だったのか?
そうすると、今、錦鯉が言っていたもう一つの吸血鬼の気配とは、父親だったのか……
答えの出ない事を考えれば、思考の迷路にハマりやすい。
迷路から出れないで、ただ、ループするだけだ。
もっと情報が欲しい……
「すみませんが、また、ノーチェやその吸血鬼が来たら教えてもらえませんか? 」
「構わないが、わしは、お主に直接連絡はとれんぞ」
「竜神様に言って下されば、俺に伝わります」
「わかった。約束しよう。で、お主は、わしに何を与えてくれるのじゃ? 」
「何か、欲しい物がありますか? 」
「聞いた所によると、お主は、古竜の縁で海龍王の所に行くのじゃたな? 」
「海龍王のところには、わしの孫がおる。孫の安否が知りたい」
「分かりました。お孫さんのお名前は? 」
「わしらには、名前など無い。それは、人族が勝手につけただけじゃ、わしの孫は、わしと同じ模様をしているのですぐわかるじゃろう」
「そうですか、分かりました。でも、以外です。青竜様にお孫さんがいらしたなんて」
「私には、子供はいないわよ〜〜」
「えっ!? 」
「わしの前の妻の子じゃよ」
「はぁ」
この錦鯉のオッさん、バツイチだったのかよ……
「そういうことじゃ、頼んだぞ」
「はい」
俺の思考は、ノーチェの事とその錦鯉のバツイチだった件で頭がいっぱいになってしまった。
◇
「ララらんらん〜〜」
ユオの研究室では、メロンを使った待望の豊胸剤が、今、完成した。
「よしっ! これを飲めば、私も憧れのナイスバディに変身できる。長かった……前世から引き継いで、苦節約40年、これでみんなから、胸無しと呼ばれる事がなくなるわ……頑張ったわね、私……では、いきます。えいっ! 」
どう?
やったかな?
ユオは、薬を飲み、自分の胸を触る。
あれ……
変わらない……
「あっ〜〜また、失敗したあ!!」
でも薬は、完璧だったはず……
では、どこが……
ユオは、自分の身体を触りだす。
すると、
「わっーー! 」
驚いたユオは、鏡を覗く。
そこには、網の目のようにスジが浮かび上がり、膨れ上がった丸い顔のユオが写っていた。
顔か〜〜。




