第45話 不思議な手紙
『ナイト・フォグ』本部の引越しが一週間後に決まった。
古竜が、竜の里の亜空間に島を運んでくれるらしい。
引越しの手伝いは、公演が頓挫して余裕ができたナハトと、ユオ、そして、本部にいる者達で行われるようだ。
俺は、その間、依頼の仕事を一手に引き受けることになった。
そして、不思議な事に例の手紙がナハトやユオも拾っていたと連絡を受けた。
内容と差出人は同じだが、字体が違うという。
それぞれ、別の人物が書いたのではないかと言っていた。
そして、俺もミスティナ皇国の北部の迷宮都市付近でその手紙を今、拾ったばかりだ。
中を開けてみると
……………………
使者様へ
私を見つけて下さい
ニュイ
……………………
と内容は、同じだが字体が違っていたのだ。
これで、全部で4通同じ依頼があった事になる。
誰だろう……
そう思いながら、手紙をバッグにしまった。
今回は、皇都東にあるミツトの街に来ている。
夜中に笹に吊るされた手紙を受け取った俺は、中身を確認する。
……………………
使者さまへ
わたしをみつけてください
にゅい
……………………
また、同じだ……
これで、5通目だ……
だが、今回は、手紙が落ちてたのではなく、笹に吊るされた正式な方法だった。ということは、その家の者がニュイの可能性がある。
俺は、その家のを調べる事にした。
家族構成は、父と母子供が2人と普通の家だ。
父親は、商工会議所に勤めている。
母親は、街の理容店で働いていた。
子供は、14歳の男の子と10歳の女の子
その10歳の女の子がニュイなのか?
俺は、夜、忍び込み、その女の子に鑑定を使う
…………………………
キャル(人族)10歳
Lv 5
HP
MP
祝福 (ギフト)
魔力感知
スキル
料理(1)
……………………………
違う……ニュイじゃない……
他の家族にも鑑定をかけてみたが、ニュイと言う名はどこにも無かった。
おかしい……
次の日、直接尋問する事にした。
家の者が仕事に行き、男の子は友達と遊びに出かけた。
俺は、女の子が家から出てくるのを待つ。すると、
女の子が家から出てきた。
俺はその子に声をかける。
「ねぇ、ねぇ君、あの笹につるしてる手紙って、君が書いたの? 」
「そうだよ。お兄ちゃん、誰? 使者様? 」
「違うよ。今、噂になっているから、どんな事書いたのかなって気になったんだ」
「それはね、わたしを見つけてって書いたんだよ」
あっさり、教えてくれた……
素直すぎるんじゃないか?
日本なら不審者扱いされて、防犯ブザー鳴らされててもおかしくない。
「そうなんだ? でも、君を見つけるの? 」
「違うよ。ニュイだよ」
「ニュイって? 」
「お手紙書いてって頼んだ子」
「その子は、どこにいるの? 」
「知らない。だって、あった事ないもん」
「あった事ないのに書いてあげたの? 」
「だって、頭の中に声が聞こえたんだもん。手紙書いて、私を見つけてって」
「えっ!? 」
「お兄ちゃん、私、買い物行かなきゃ、またね」
少女は、そう言って小走りに駆けていった。
これは、どういう事だ……
◇
俺は、一応、ミルフィーに連絡を入れる
…………………………
「ミルフィー、聞こえる? 」
「はい。ライル様、聞こえてます」
「実は、不思議な手紙の件だけど、ミツトの街に掲げられた手紙もニュイからだったよ」
「では、その手紙を掲げた人物がニュイなのですか? 」
「嫌、違う。その子は、手紙を書いてくれと頼まれたらしい」
「ニュイにですか? 」
「そうだ。でも、会ったことも無く、頭の中にそうしてくれと通話が来たようだ」
「そんな事が……その件は、長官に相談します」
「わかった」
「それと、今、一件依頼があるのですが……」
「それは、何処だ? 」
「ロワード帝国、帝都の王城です」
「そうか、その件、長官はどう言っている? 」
「現場に任すと、つまり、ライル様に任せると言ってます」
「わかった。依頼の手紙を確認する。だが、受けるかは、内容次第だ」
「いつもと変わらないのですね」
「見過ごしてしまったら、みんなで築き上げたものが壊れてしまうからね」
「わかりました。お気をつけて」
…………………………
きっと罠だろう……
巷で噂の使者が本当に実在するかどうか確かめ、利用できればするつもりなのだろう。
そんな奴らに、俺達が築いたものを壊されてたまるか!
だって、これは、ノーチェが『私みたいな人を救いたい』と言った言葉から始まった事なのだから……
俺は、もう一度、あの子から話を聞く為に、少し時間をおいてから訪問しようと思っていた。
その間、ミツトの街を散策する。この街には、ヒュール商店は、ないようだ。
冒険者ギルドの前を通り、教会の通りに出ると、
「ラビス様!」
「えっ!? 」
声をかけられた。
しまった! 衛星で確認しとけば良かった……
「ラビス様ですよね。私です。リアスです」
「ラビス君だって? そうなのか? 私は、一度しか会った事がないから良く覚えていないが……」
「お姉様、絶対、そうです」
そこには、教会の巫女服を着たリアス嬢と騎士の姿になっているリアナ嬢がいた。
慌てて、認識阻害をかけようと思ったが、隣にいる男性を鑑定して思い止まった。
…………………………
リヒト=サンライズ(人族)16歳
ライオット国 サンライズ伯爵家2男
アステル教会 聖騎士
Lv 28
HP 145/145
MP 127/127
祝福
剣技自動習得(5)
物理耐性(5)
神ギフト
言語理解
光魔法
スキル
気配察知
見切り
……………………
アステル神の加護
……………………………………
こいつは、アステル神の加護……
ユオと真逆のタイプだ……
ユオが魔法特化なら、こいつは、物理特化型だ。
間違いなく転生者だな……
その背の高いイケメン騎士とリアナ、リアス姉妹、それに、後ろには美人揃いの騎士達が8名。
イケメンハーレム野郎だ……
「すみません、人違いですよ。私は、ライルと言います」
「ほら、みたことか、リアス、人違いだよ」
「本当ですか? 貴方様は、ラビス様では無いのですか? 」
「そのラビスとかいう人は、余程、俺に似ているのですね。でも、違います」
「そんなぁ……」
「君、その黒髪、その雰囲気、転生者でしょう? 」
なっ、このイケメンハーレム野郎、何言ってんだ! こんな往来で……
「転生者? それは、何ですか? 食べ物でしょうか? 黒髪は、母譲りです。クロウ勇国の出身なので」
「クロウ勇国かい? あそこは、先代勇者が作り上げた国みたいだし、君は、その子孫なのかな? 」
「いいえ。クロウ勇国には、黒髪の人は、たくさんいます。私は、ただの市民でした」
「そうなのか〜〜う〜〜ん、残念だ。僕以外に転生者がいたら話したかったのになぁ」
「その転生者って何なのですか? 」
「そうか〜〜知らないのか、転生者ってのは、生前の記憶を持っている者だよ。こことは、違う世界の記憶をね」
「そんな人がいるのですね? 」
「おい、リヒト殿、こんな往来で、教会の秘匿情報を話してはいかん。君、今の事は忘れてくれないか? 」
「はい。私には、関係のない話なので」
「そうか、すまない」
「そうか、これって、他の人に話しちゃいけなかったんだよね。悪かったよ。リアナ」
「わかってくれれば、それでいい」
「では、俺はもう、行きますね」
「あの〜〜待って下さい」
リアス嬢、まだ、何か?
「何でしょうか? 」
「あの、その〜〜ライルさんなのですね? 」
「はい」
「私、その名前に聞き覚えがあります。私を助けてくれた人物、ライル様とノーチェ様でした」
確かにそうだが、何で知ってるんだ……
俺達、あの時……
……19話を回想中……
そうだ、誰、と聞かれて誰でもないと言ったけど、ノーチェが俺の名前を呼んで、俺もノーチェの名前を呼んでいた気がする……
あの時、グダグダだったしな……
「それは、偶然ですね。クロウ勇国では、珍しい名前ではないのですよ。でも、貴女を助けた人と同じ名前だなんて、少しは、この名前に誇りを持てます」
「それでは、本当に違うのですか? 」
「はい」
「そうですか……私の勘違いでしたか……すみません。お忙しいのに、お声をかけてしまって」
「いいえ、わかってくれただけで結構です。では、これで……」
「君、待ってくれ! 」
今度は、お前か、イケメンハーレム野郎!
「僕も、君とは初対面な気がしないんだ。どこかで会ったことないかな? 」
「いいえ。全くの初対面です」
「そうか、そうだよね。なんか、主任に似てる気がするんだよ」
主任!?
まさか、こいつ、立花か!
そういえば、物怖じしない態度、美女に囲まれて、ウハウハしてるそのバカ顔は、立花に似てる気がする。
そうか、こいつ、やはり、転生しても1人で、美味しく生きてたか……
「そうですか? 皆様のような高貴なお方とお話ができて嬉しいです。それに、皆様のお知り合いに似てるなんて光栄でした。これで、国に帰って、少しは、自慢ができます」
「そうだよね〜〜そんな、うまい話はないよね。すまなかった、君」
「では、御機嫌よう……」
なんとか切り抜けられた……
危なかった〜〜
でも、立花が、リアス嬢達と一緒なら安心だ。
頼んだぞ、立花……
俺は、元来た道を戻り、手紙を掲げているキャルのところに戻った。
◇
キャルは、まだ、帰ってなかった。
今度は、衛星を展開しながら街を散策する。
リアス嬢と立花達は、教会に寄ったようだ。
俺は、キャルを探す。すると、キャルは、街を出て東側の街道を進んでいる。
1人で、街を出るなんて危険だろう……
俺は、キャルの側まで転移する。そして、
「君、1人でどこ行くの? 街の外に出たら危ないよ」
「誰? 」
「覚えてないの? さっき、買い物行く前に話しただろう? 」
「知らない……」
何か、様子が変だ……
…………………………
ニュイ (#) ######
キャルに意識憑依状態
Lv ##
HP ##/##
MP ##/##
########
……………………………
「君は、誰なの? 」
「ニュイ……」
「ニュイ、そうか、君がニュイだったんだね」
「あなた、誰? 」
「君が依頼を出したんだろう。俺は、その依頼の手紙を受け取った者だ」
「使者様? 」
「そう呼ばれているけどね」
「早く、私を見つけて、じゃないと、みんな、殺されちゃう……」
「それは、どういう事? 」
「お願い、私を……」
ニュイと言ったキャルは、その場に倒れこんだ。慌てて、抱き起こすと、目を直ぐに覚ました。
「あれ〜〜ここどこ? それに、さっきのお兄ちゃん? 」
「そうだよ。君が、街を出て、街道を1人で歩いてるところを見かけたんだ。そしてら、急に倒れてね」
「そうなの? 私、確か、買い物してたはずなのに〜〜」
「よく、こういうことあるの? 」
「ないよ」
「そうか」
何らかの方法で、ニュイは、意識を他人に憑依させる事が出来るようだ。
それで、依頼の手紙を書き、俺を呼んでいた。
目的は、自分を探させる事……
わかった、この依頼『ナイト・フォグ』No1 ライルが、その願い聞き届けよう……




