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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第2章 暗躍編

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第43話 定例会議





 竜の里の屋敷は、『ナイト・フォグ』組織の本部として使用されている。ここは、地下の亜空間である為、出入りが転移しか使えない。


 ここに、設置型の転移魔法陣を構築したのはユオであった。

 彼女は、古竜から魔法を学び、また、魔法陣を勉強する為、メンデルさんのミスティナ皇国の学院時代の知り合いで魔法講師をしているアニタさんの教えを受け、この魔法陣を完成させた。


 設置型の転移魔法陣は、『ヒュール商店』の各店舗に設置してある。また、ナハトは、簡易型転移魔法陣を持ち歩いており、緊急招集の場合は、それを使い、本部や『ヒュール商店』各店舗の転移魔法陣まで転移している。


 今日は、朝、10:00から、月一度の定例会議が、本部、会議室で行われていた。


 出席しているのは、長官のナイト、ことメンデルさん、事務総長のミルフィーは、司会担当だ。それと、ユオとナハトそしてリールと俺の6人だ。


「先月、一月で確認できた依頼の手紙は、58件、そのうち、達成可能な案件が、31件となりました。先々月に比べれば、10件以上増えています」


 説明しているのは、ミルフィーだ。


「浸透はしてきているが、まだ、少ないだろう」


 そう考察するのは、ナイト長官ことメンデルさんだ。


「まだ、見落としの可能性もあります。世界は、広いですから」


「でも、少しづつだが、噂として浸透してきているのは事実だ」


「依頼の発見方法の件ですけど、手紙に使われている紙に魔力を施す作業も、コスト面から考えて難しいですね。それに、紙が普及したとはいえ、その全てを『ヒュール商店』が賄っているわけではありませんので、他商店のものだと私達が干渉できませんから現実的ではありません」


 ユオは、依頼の仕方が、これで良いのかといつも思っていた。

 このやり方を浸透させる時でも、みんなと随分と議論した。

 当初は、街の掲示板に張り出し、確認する方法が無難では、と思っていたが、プライバシーや掲示板が無い場合、また、確認する際、誰かに見つかる可能性もある事を考慮して、七夕をモチーフとしたやり方を考えついた。


 でも、これは、ライルの能力頼りのもので、みんなと共有できない。そこで、ライルの能力の転写を思いつき現在に至っている。


「そうだよなぁ、まだ、羊皮紙や木簡での依頼もあるしな」


 ナハトも紙の普及までは良かったと思っていたが、実際、依頼を確認するとなると、いろいろ問題点も多いと感じていた。


「当面は、調査スタッフにお願いするしかない状況ですが、これ以上の依頼案件が増えれば、その人員も不足します」


「そうなれば、不眠不休の活動をする完全なブラック企業になりますね」


「さっきから発言してないライル君、何かあるかね? 」


「そうですね。まだ、古竜から連絡は、ありませんが、本部の引越しの件もありますし、当面は、人員確保と施設補強が課題となりそうですね」


「だそうだよ。ミルフィー、どうかね? 」


「人員確保の件は、誰でもと言うわけには参りませんので、正直、難しいです。信頼できるかどうか、見極める必要もありますし。そうなりますと、設備の補強は、新本部まで必要はありません。新本部が完成したら、人員も合わせて必要が出てくると思います」


「依頼案件も極端に増えるわけではなさそうだし、当面は、この体制で行くしかないようだな。それと、魔王の件だが、リールに調べてもらった。報告を頼む」


「え〜〜と、この間のライアット国の魔獣ポップ地点で調べてきました。魔王が使った魔法の残滓(ざんし)は、闇魔法特有のものです。魔獣を従え、誘導する魔法です。それと、魔王が顕現した箇所には、ノーチェお姉ちゃん……魔王の魔力が残ってましたが、あとは追えませんでした」


「魔王の目的がイマイチわからないが、このまま放置することもできない。それと、今までは、我ら組織が対応してきたが、教会や魔獣ポップ地点、周辺の噂で、魔王の存在が明らかになり始めている。これ以上、隠すことは難しくなりそうだ」


「そうですね。人の口をふさぐことはできませんから」


「教会の聖騎士や各国の精鋭の兵士が投入される可能性がある。そうなると、我らが密かに退治してきた魔獣の群れの存在や魔王の存在も一般市民まで知れ渡る事になる」


「今までなかった犠牲が出る事になると言う事ですよね」


「あぁ、避けられないだろう」


「魔王が、善良な市民を犠牲にする[人殺し]にさせない為に、我らが、戦ってきた意味も無くなってしまう」


「今のところ、魔獣ポップ地点は、人里離れた場所しか起きてません。理由は、よくわかりませんが、これが、街中で起きてしまったら、未曾有の災害となるでしょう」


「9年前のライアット国の時のようにか? 」


「はい」


「でも、あれは、魔王のやった事じゃねぇだろう。 ミルフィーの実家が勝手にやったとほざいてたロワード帝国の帝王の仕業だし。結果帝国は一方的に和睦をゴリ押ししてきたんじゃねぇか。教会に睨まれたらギフトが得られず、衰退の一途を辿るって言う自分勝手な理由でよ〜〜」


「はい。その通りです……」


ナハトの意見にミルフィーは、少し、うつむきながら同意する。


「目的はわからんが、まだ、街の中ではない事が救いだ。魔王の性格からして、これからも起きるとしても同様だと思える。しかし、魔王が何者かに操られている場合、その可能性が無くなる」


「操られていたり、脅迫を受けていた場合など考えていましたが、先日の魔王顕現で本人と確認できた事は良かったと思っています。今までのは、実験段階だったという件については、まだ、わかりませんが……」


「主任、今の段階では、ハッキリした事はわからないですよ。その都度、対応するしかないと思います」


「そうだなぁ〜〜それによ〜〜その、魔王ってのは、やめねぇ〜〜か。ノーチェでいいだろう? 」


「これは、ノーチェお姉ちゃんが言ったことだよ。もし、敵対関係になったら、仲間に名前で呼ばれるのは、嫌だから、その時は、魔王って呼んでって、私、ちゃんと聞いたもん」


「そうなんだけどよ〜〜その魔王って、悪いイメージしかねぇだろう? あいつと結びつかねぇっていうかよ〜〜」


「ここは、本人の意思に任せよう」


「まぁ、ライルがそう言うならな〜〜、それと、話は変わるがよ〜〜、今、俺達、雑技団が、サウザンド国で公演してたんだけど、なんか、王城で騒ぎがあったらしくて、公演が打ち切りになっちまったんだ。何か、聞いてねぇか? 」


「今のところは、何も」


「そうか、ミルフィーさぁ、もし時間があったら探ってみてくれ、なんか嫌な感じがするんだよ」


「わかりました。注意しておきます」


「忙しいとこ悪り〜〜けど、まぁ、頼むよ」


「はい」


「ここらで、休憩を挟むか、それから、ナハトのように、何か気がついたら報告してくれ。こちらでも探りを入れる」


「国のゴタゴタで戦争になったら困るのは、そこで暮らす市民達だもんね。私も各店舗の従業員達に気を配っておくよ」


「そうだな。実際、現場で動くのは、ユオ、ナハト、ライルだからな。情報は、欠かせないものだと思う。事前に掴めれば、対応も変わってくる」


「そういうこった」


「ここらで、休憩を挟もう。ライル達から地上の差し入れがある。事務方も一緒にありがたく頂こう」


 一旦、会議は、休憩に入った。


 ここ、竜の里に来るのも久しぶりだ。


 懐かしく感じるのは、あの頃が楽しかったからかもしれない。


 俺は休憩の間、いつも行っていたあの木の丘に向かうのだった。






 丘まで転移すると、心地よい風が吹いてきた。

 俺は、その隣にある石碑に、持ってきたお菓子と果物を備え手を合わす。

 ここには、リールの母親が眠っている。


 石碑の前には、まだ、新しい花が備えてあった。

 リールが、頻繁の訪れているのだろう。


 俺は、木に背中を預け腰を下ろしている。

 見える景色は、昔見たままだ。

 ここでは、時が止まっているかのようだ。


 目を閉じると懐かしい記憶が蘇る。

 ノーチェに最初に会ったのもこの丘だ。

 そして、ノーチェと初めてキスしたのもここだった……


 すると、


「ライル、やっぱり、ここにいた〜〜」

「リールか、どうした? 」

「ライル、お母さんにお菓子や果物、それにお花も備えてくれたの? 」

「俺は、お菓子と果物だけだよ。花は、リールが備えたんじゃないの? 」

「違うよ。ここ何日か留守してたから、今日は、久し振りにきたんだ。きっと、ライルもここにいるって思ってたし」

「そうだったんだ……」


 ここに来て、花を供える人物、俺には、1人心当たりがあった。


 ノーチェ……


 君は、どうして……


 俺は、嬉しそうに隣にちょこんと座る成長したリールを見ながら、その答えに辿り着けないままだった。


 俺の時間は、ここで止まってしまったかのようだ……






 休憩中、本部の自室で大きな声を上げているひとりの女性がいた。


「わぁ〜〜リール、やはり、大きくなってました〜〜」


 自分より年下のはずのリールに負けた悔しい思いを抱き、胸をさするユオは、


「でも、もう直ぐ完成します。桃は失敗しましたけど……何か? 」


 桃を使った豊胸剤を調合して、飲んだ結果、大きくなったのは、胸じゃなくてお尻だった。


 桃だけに……


 でも、今度は違う。


 私は、気づいた。あの、方向な香り、高級な感じのする網の目のような皮に大切に守られている丸い果実、そう、メロンです。


「メロンならきっと……」


 ユオの野望は止まらない……






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