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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第2章 暗躍編

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第41話 ショルダンの街(再会)





 俺は、ターゲット、暴力父さんの家に侵入した。


 家の中は、想像した通りだ。

 殴られる母親……

 それを見ながら泣く子供……


 俺は、認識阻害を外す。


「だ、誰だーー! てめーー、人ん家に勝手に入ってんじゃねぇ〜〜」


 うむ、怒ってるな……


 その男は、俺を見て、殴りかかろうとする。

 その時、俺の通信の腕輪が『ピーー! 』と鳴った。


 マジか……このタイミングで緊急招集だと……


 音の鳴り方で、その通信内容が決められていた。


 俺は、少し(かが)み、殴ろうと襲いかかってきた暴力父さんの攻撃をそらす。

 泣きながら俺を見る子供、多分、依頼主のビリー君だ。

 俺は、暴力父さんの手を取りグイッと関節技を決めて、その腕を背中に持ってくる。


「離せ!この泥棒やろう〜〜! 」


 失礼な! 俺は泥棒ではない……


 暴力父さんに関節技を決めたまま、俺は本部に連絡を取る。

………………………

「俺だ。どうした? 」

「良かった、繋がった。魔獣がポップしました。場所は、ライアット国内、北西部です」

「わかった。直ぐ行く」

………………………


 俺は、一瞬迷ったが、このまま暴力父さんをこの場所に置いていくわけにはいかない。


 俺は、その暴力父さんを連れて転移した。






「痛っ、ここはどこだ? 」


 魔獣ポップ地点に暴力父さんを連れて来てしまったのは失態だ。


 そんな俺を見て、リールが、


「何、ライル、一般人連れてきてんのよ〜〜」

「仕方がなかったんだ。それより、うむ……」

「どうしたの? ライル」

「すまん、リール、この男、頼む」

「えっ何言ってんの! ライルーー! もう〜〜マジ勘弁してよ〜〜」


 俺は、暴力父さんをリールに任せてしまった。

 それには、理由がある。

 そう、魔王と呼ばれる者。ノーチェの存在を確認したからだ。


 群で襲って来る魔獣に対し剣に魔力を通す。黒く変色した刃は、黒竜のブレスを纏っていた。


 襲いかかる魔獣を斬り裂き、俺は最短距離で、ノーチェの元に向かった。


 居た……


「ノーチェ……」


 俺とノーチェとの距離は約10メートル。あと一歩踏み出せば、お互いの間合いに入ってしまう。


「ノーチェ、随分探したんだ。どこに行ってた。何で黙って消えた。それに、何やってんだ。答えろよ。ノーチェ」


 ノーチェは、何も答えず俺と見つめ合ったままだ。

 そして、


「ライル……またね……」


 そう言葉を残して、消えてしまった。


 衛星の反応は無い。

 転移?

 それとも霧化か……


 俺は、呆然としながらノーチェが消えた場所を眺めていた。






「おい、ここはどこだ〜〜! 」

「うるさいなぁ〜〜おじさん、死にたくなかったら私から離れないでね」

「何を言ってやが……る……なんだ、あの魔物の大群はーー! 30体は、いるぞ〜〜」

「もう〜〜魔獣は、全部で238体、その中にSランク魔獣キメラが20体だよ。そろそろ来るよ〜〜。おじさん、離れないでよ! 」

「ぎゃ〜〜、死ぬ、死ぬよ。俺が悪かった、悪かったから〜〜」


 襲いかかって来る魔獣をリールは、レイピアで斬り裂く。

 リールのレイピアは、黄竜の牙から造ったものだ。魔力を通すと、黄竜のブレスを纏い光り輝く。その効果は、高周波ブレードのように軽く触れただけで、その物を両断できる。


「もう〜〜数が多いなぁ〜〜、あれは、ユオ姉ちゃんかな。あぁ〜〜魔獣が吹き飛んでるよ〜〜」


 ユオの放った火魔法で、魔獣の群れが大破した。


 それでも、魔獣の群れは、まだ残ってる。


「ひっーー! 勘弁してくれ、死にたくない。死にたくない〜〜」


 暴力父さんの叫びは、魔物の咆哮でかき消される。


 リールは暴力父さんを庇いながら戦っているので、持ち前のスピードが活かせない。

 その場で襲いかかる魔獣を斬り捨てるだけだった。


「きりがないなぁ〜〜魔法を使うか【ウィンドバースト】」


 リールの放った風魔法は、目標地点で風爆発を起こした。四方に肉片が飛び散る。


「わぁ〜〜肉が、肉が〜〜」


「おじさん、本当、うるさいよ」


 雑魚魔獣がほとんど肉片になった頃、キメラの群れが現れる。


「な、なんだよ〜〜あのデカイのはよ〜〜死んじまうよ〜〜」


 暴力父さんは、段々元気が無くなってきた。


「キメラか〜〜面倒だなぁ、毒あるし〜〜」


すると、その時、


『俺様、参上ーー! 』


「遅いよ、もう終わるよ、ナハト〜〜」


「しょうがねぇだろう。これでも、急いで来たんだ。あの雑魚は、俺に任せろ! 」

「雑魚じゃなくってSランク魔獣キメラだよ」

「俺様にとっては、みんな雑魚だ! 行くぞーー! 」


 ナハトは、大剣担いで、キメラの群れに突っ込んで行った。


「あぁ〜〜、ナハト、結構、ストレス溜まってんのか? キメラの肉片が花火みたいに飛び散ってるよ〜〜」


 リールは、ナハトの豪快な暴れっぷりを見て、ため息をつきながら横から襲ってきた雑魚魔獣を両断する。


 暴力父さんはもう言葉も出ず、ただ震えているだけだった。

 少し、股間のところが濡れていたようだ……


 動いている魔獣がいなくなった頃、リールの元にユオとナハトが駆け寄ってきた。


「リールちゃん、そのおじさん誰? 」

「知らない。ライルが連れてきたんだけど〜〜」

「そういえば、ライルの奴、見ねぇな」

「うん、きっと、ノーチェお姉ちゃんのとこ行ったんだよ」

「なっ! ノーチェがいたのか? 」

「うん、ずっと先の方で気配がしたから……」

「そうか……」


「主任も直ぐ戻って来るでしょう。お兄ちゃん、生き残ってる魔獣がいないか確認してくれない? 」


「わかった。ユオは、相変わらず可愛いなぁ〜〜」


「いいから、早く! 」


「おう! 」


 ナハトは、倒れている魔獣を確認している。

 ユオは、リールに、


「ノーチェがいたんだよね」

「うん。確かだよ」

「主任、大丈夫かな? 」

「そうだね、きっと、辛いよね……」


 その後、ユオとリールは亜空間収納に魔獣の遺体を収納した。


 その頃、ライルがその場に戻って来たのだった。







 ノーチェ……


 俺は、しばらく何も考えられなかった。

 ノーチェが生きてて良かった。

 でも、なんでこんな事に……


 後ろの方では、魔獣の咆哮が聞こえる。


 そうだ。みんなのところに行かないと……


 しかし、思うように足が動かない。


 少しでも、この場にいたい。


 ノーチェが消えたこの場所に……


 そんな思いが身体を動かすことを拒否していた。


 そうか、俺はノーチェの事を……


 一年前、消えてしまったノーチェを探して旅をした。

 探し求めていたノーチェが、さっきまでそこにいた。

 でも、また消えてしまったが、一目見られただけで、こんなにもいろいろな感情が湧き出してくる。


 そこで、俺は、やっと気付いた。


 好きなんだ……俺は、ノーチェの事が……


 その思いを受け止めた時、俺の身体は、みんなのところに動き出していた。






「ライル〜〜何やってたのよ〜〜」


 元気よく手を振るリールは、血を浴びて赤く染まっていたがその笑顔は、とても輝いて見えた。


 気を使ってくれているのだろう……


 そう察してしまった俺は、仲間に面目無いと思う。


「主任……」


「よぉ〜〜ライル! 」


 ユオとナハトも心配そうに俺を見つめていた。


「ノーチェがいたよ。何も言わず、また消えてしまったが……」


「そうですか……」

「まぁ、仕方ねぇな。でも、生きてる事がわかっただけでも収穫はあったな」


「そうだな……」


「ねぇ、ライル〜〜私のところに変なおじさん、置いていかないでよ〜〜。あんまり、魔獣、倒せなかったじゃない〜〜」


「そうか、忘れてた。ごめん、リール」


「別にいいけどね〜〜」


 俺は、顔を青くして震えているその暴力父さんを見て、


「お前のところの子供の依頼で来た者だ。酒飲んで暴力振るってそれで、満足か? お前に聞いてるんだよ! 」


 俺は、無性に腹が立っていた。そんな俺を見て、ナハトは、


「珍しいな、ライルがキレてんぜ! 」


「ちょっとな、この親父には少し頭に来ている」


「おじさん、酒飲んで暴れてるの? ダメだよ、そんなことしちゃ」


「……………」


「主任、もしかして依頼のターゲットですか? 話の内容からするとDVですか? 許せません! 」


「まぁ、酒飲んで暴れたくなるのはわかるけど、それじゃあ、ただの小物だぜ。男は、もっとデカイ奴にならねぇとカッコわりーーぜ! 」


「許してくれ〜〜許してくれ〜〜」


「こういう輩は、直ぐ謝ります。そして、また同じ事を繰り返します。極刑を持って処罰すべきです」


「そういう事だ。残念だったな、オヤジ」


「わぁ〜〜なんでもするから、俺には、子供がいるんだ。だから、命だけは助けてくれ〜〜」


「その子供を泣かせているのは気づいているのか? 酒が原因なら、飲むのを止めろ! 」


「わかった。酒は、もう、飲まねっ〜〜子供も女房も泣かす事はもうしねぇ〜〜だから、助けてくれ〜〜」


「わかった、今回だけは、見逃してやる。2度目は無い! それに約束を破ったら、今度こそ魔獣の中に放り込んでやる。生きながら内臓を喰われる辛さを味わってもらう、いいな! 」


「わかった。約束は守る。もう、酒は飲まねぇ〜〜女房も子供も泣かす事はしね〜〜」


「それと、俺達の事は口外するな! 喋ったら、その命、貰い受ける」


「わかった。しゃべらねぇから〜〜」


「うん、じゃあ、みんな、悪かったな」


「もう、行くのか? 」

「直ぐに定例会議で会えますしね」

「ライル、何かお菓子を要求するよ、今回の件で」


「わかった、またな」


 俺は、暴力父さんを連れて家の前に転移した。そして、暴力父さんをそのまま放置して、宿に戻った。







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