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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第1章 少年期

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第33話 他国





 ミスティナ皇国の隣国に当たるロワード帝国は、人族主義として有名な国である。


 この帝国の軍は、中央大陸最大とも言われる程、軍に力を入れており、その実権は、ただ1人の帝王と呼ばれるものが握っている。


 その帝王、ギリッシュ3世は、ロワード帝国を築いたギリッシュ家の家名を継ぎ権力を思いのまま振舞っていた。


 その帝国の王室では、今、黒竜が現れた事、それと、アステル教会からアステル神の加護を持った少年が見つかった事などを話し合っていた。


「黒竜か……その強さ本物と聞く。1度手合わせをしてみたいものだ」

「帝王様でしたら、黒竜さえも、尾を振って逃げてしまう事でしょう」

「確かに、帝王様の力を持ってすれば、黒竜を従える事も夢ではないでしょう」


 側近たちは、帝王を持ち上げ会話が進行する。


「それと、アステル教会からアステル神の加護を持つ少年の報告がありました」


「ほほう。それは、誠か? 」


「はい。帝国の北に位置するライアット国の貴族の子息が加護持ちだと判明しました。それと、あと、一件、ミスティナ皇国の貴族の子息も加護持ちだと言う事です」


「隣国ばかりではないか? どう言う事だ? 」


「はは、それは、わかりません。でも、加護持ちはこの帝国こそ相応しい者だと思っております」


「まぁ、神の気まぐれか? 加護持ちでも持たねば、我が帝国に歯向かう事など出来ぬという事かな。わははは」


「まさに、その通りだと思っております。ギリッシユ様のご威光の前には、神さえも影を潜めるのでしょう」


「だが、加護持ちをそのままと言うわけにはいかんな」


「はい。ミスティナ皇国の子息は、あの黒竜に連れさらわれたそうです。竜は、幼子の肉が好物。既に死んでいるでしょう。ライアット国の子息は教会に引き取られるようです」


「加護持ちも黒竜にしてやられたか、わはははは。それにしても、教会か……表立って敵対するわけにはいかんな」


「はい。教会と敵対すれば祝福を受けられなくなります」


「まぁ、捨て置けば良い。どうせ教会のおもちゃになるのだろう」


「はい。そのようです」


「まぁ、教会なら無難な場所だとも言える。他国に渡るよりマシだ。だが、その動向はわかるようにしておけ。いつでも、回収できるようにな」


「はい。畏まりました」


「それと、例の件はどうなっておる」


「着々と準備は整っております」


「そうか、数年後のライアット国辺りは、賑やかになるだろうな? 」


「そうですね。あの国は寂しい国です。きっと賑やかになる事でしょう」


「そうか、そうか、それは、楽しみだな」


「はい」


 側近達は、帝王の言葉でそれぞれ動き出した。


 教会には、帝国の優秀な人材が派遣されると共にライアット国では、帝国提供による祭りの準備が始まった。



◇◇



 一方、クロウ勇国の学院では季節外れの転校生が来たようだ。


「皆さん、こんにちは。私は、ミスティナ皇国からやってまいりましたメリーナ=ランドルと言います。宜しくお願いします」


「おぉ〜〜女子だぜ! 」

「綺麗な子ね」

「家名持ちだから、貴族かしら」


 みんなの反応は、上々のようだ。


「メリーナさん。そこの空いてる席に着いて下さい。こらっ! もう、おしゃべりはしないのよ。みんな、仲良くね」


 先生は、中年の太った女性だが、包容力あふれる優しい感じの人だ。


 席に着いたメリーナに声をかけてきたのは、隣に座っていた女の子だった。


「私、シェリー、ヨロシクね。メリーナさん」

「こちらこそ、宜しくお願いします。あと、メリーナでいいわ」

「じゃあ、私もシェリーって呼んで」

「わかったわ」


 メリーナに話しかけてきたのは、緑色の髪をした綺麗な子だった。

 雰囲気や、凛としたたたずまいからすると何処かの国の貴族の子女のようだ。


「ねぇ、メリーナさん。今頃転校してきたのには、何か理由があるの? 」

「メリーナよ。私、冒険者になりたいんだ」

「えっ、でも、メリーナって貴族なんでしょう? 」

「うん。母様も冒険者だったから」

「そうなんだ。実は、私も冒険者になりたいの」

「シェリーは、貴族でしょう? 」

「嘘、な、何でわかるの? 」

「わかるわよ。雰囲気とかそんな感じで」

「そうなんだ。私はね。ライアット国のシュプール公爵家の二女なの」

「公爵家なんて、王家の血筋じゃない? すごいわね」

「凄くなんかないわ。イヤよ。貴族なんて、だって、女の子は、家の道具みたいなものでしょう。私なんかこの歳で、もう何回もお見合いさせられたのよ」

「そうよね。私もそれが嫌だから冒険者になりたいって思ったのよ。それと、もう1つ理由があるんだ」

「何、何? 」

「内緒……」

「酷い。教えてくれたっていいじゃない」

「今は、授業中よ。あとでね」

「メリーナって結構、意地悪なの? 」

「そんな事ないわよ。シェリーよりはね」


 2人は、旧知の仲のように楽しく話が弾んでいた。

 女子のコミュ力の高さには、舌を巻くばかりである。


 放課後、シェリーは、メリーナに、


「寮に一緒に帰ろう」

「私、お祖父さん家から通ってるんだ」

「そうなんだ。何処なの? 」

「学院から歩いて5分くらいなんだけど、サスケ家って言うんだ」

「凄いじゃない。サスケ家って、この国の3名家の1つでしょう。確か、クロウ家、カンベエ家、サスケ家って」

「そうみたいね。でもね〜〜」

「じゃあ、メリーナは、あそこの屋敷に住んでるのね」

「知ってるの? 」

「だって、有名だもの。ねぇ、私も付いて行ってもいい? 1度中に入ってみたかったのよね」

「それは、構わないけど、危険よ」

「そうなの? 」

「まぁ、いろいろとね」


 シェリーは、メリーナの家に行く事になった。


 学院前の大通りから、路地に入った場所にサスケ家はある。武家屋敷のような造りで、全体を白壁の塀で囲まれており、門は、大きい。


 メリーナは、大きな門の脇にある通用門から屋敷に入る。


「こっちよ」

「面白い作りね」

「そうなんだけど、気をつけてね」

「なんで? 」


 シェリーが不思議がっていたが、その答えは直ぐにわかった。


 メリーナの足元の手裏剣が投げられ、地面に刺さる。


「キャッ! 何? 」


 シェリーは、声をあげ驚いているが、メリーナはその手裏剣を拾って大きな松の木に向かって投げつけた。


「うぉほほほ、流石、儂の孫娘じゃ」

「お祖父ちゃん。友達連れてきたんだから、驚かさないでよ」

「転校初日に、友達を連れて来るとは、ますます出来た孫じゃ。しかし、油断は禁物じゃぞ」


 そう言って、その猿のような小さな爺さんは、メリーナの足元に滑り込んだ。


「なんじゃ、白か。もう少し、大人にならぬとな〜〜メリーナよ」

「な、に、し、て、る、の? この、スケべじじいーー!! 」


 メリーナは、足元にいる爺さんを思いっきり蹴飛ばした。


 爺さんは、コロコロ転がって池に落ちた。


「メリーナ、今の人は? 」

「私のお祖父ちゃんなんだけど、ちょっとね」

「う、うん。何となくわかったよ」


「あら、メリーナ、帰って来たの? そちらの方は、お友達」


 そう声をかけてきたのは、母親のアマンダだ。

 メリーナと一緒に、実家に里帰りしたようだ。


「そうなの。シェリーって言うのよ」

「まぁ、ようこそいらっしゃいました。中に入ってね」

「はい。ありがとうございます。それで、あの〜〜池に落ちた人は大丈夫でしょうか? 」

「あ、父は大丈夫よ。殺しても死んでくれない人だから。どうぞ、お菓子もあるわよ」


「うひょひょ〜〜い。儂も菓子を所望するぞ〜〜! 」


 池から飛び出てきた爺さんは、跳躍して空からこちらに向かってダイブしてきている。


 それを、アマンダは思いっきり殴り飛ばした。


 また、爺さんは池に逆戻りしてしまった。


「ごめんなさいね。少し、変わった爺さんで……」

「ううん。大丈夫です……」


 アマンダも、申し訳なさそうに、シェリーに話す。

 シェリーも状況を把握したのか、それ以上、何も言わなかった。







 メリーナ姉さんは、クロウ勇国に通う事が出来たんだ……


 俺は、衛星を展開して家族の状況を調べていた。


 良かった……


 あの時、ユオに背中を押されなければ家族の近況を直視する事は出来なかった。それに、家族も行動ができずその場にたたずんでいただろう。


 ユオが俺達の時間を動かしてくれた。感謝しなければ……


 でも、母さんの実家の忍者は気になるよなぁ。

 1度、見ておきたかったな……


 俺は、地図を確認しながら世界の様子を探る。


 細かく注視すれば問題も多そうだ。


 例えば、ロワード国では獣人が道具のように扱われている。


 奴隷のようだ。生傷が絶えない者が多い。


 逆に大森林に外れにある獣人の国では、人族が近ずくだけで威嚇され追い返されている。


 当然の事ながら獣人主義の国のようだ。


 そう考えると、クロウ勇国は凄いと思う。


 人族も、獣人も他の種族の者達も差別なく暮らしている。

 この国のような場所を作りたくて、竜神や大精霊達を封印したのか?

 確かに、種族間の差別はいまだ残っている。

 だが、このような問題は、解決する事は難しいだろう。

 人の意識を変えるには、相当の時間を有しても完全に統一される事はない。


 誰がどう思うか、そんな心の内まで変えることはできないからだ。


 だが、このクロウ勇国だけは内情まではわからないが、どの種族の者達もみんな、笑いながら生活している。


 この国を作り上げた勇者兼魔王は、どのような人物だったのか、少し、興味が湧いた。




◇◇◇




 この世界の空中に、人のようなものが浮かんでいた。


 それは、地上を見下ろして……


『そうか、竜神と大精霊の封印を解いたのか〜〜、まぁ、そうなるよね〜〜。でも、そろそろいろいろ始まりそうだけど、夜霧 啓吾は、どうするんだろうね〜〜。

 私としては、魔王路線が面白そうなんだけど、あの様子じゃ、無理そうかな?

  源九郎君は、魔王も勇者も1人で二役やってくれたから、面白かったけどね、まぁ、ゆっくり、楽しませてもらうよ。

 私自身、この世界に干渉できないからね〜〜。見ているだけって、結構、辛いんだよ。夜霧君……』


 そう、言葉だけを残し、その人のような物は、消えていった……







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