第32話 ダークエルフの子
俺が目を覚ますと、側にルルがいた。
流石に、どこぞの誰かさんのように一緒に寝てるわけがなく、ただ、目が覚めるのを椅子に腰掛け見守っていたようだ。
「お目覚めになられましたか? 」
さっきまでと態度が違うな……
「うん。俺はどのくらい寝てたんだろう? 」
「3時間程でございます」
「そうか……」
「ライル様、私……ごめんなさい。無礼な真似を致しまして」
「あぁ、長かあの兄貴に言われたんだろう? 気にしてないよ」
「それにしても、私は……」
「こんな子供に、色仕掛けなんて、何、考えてるんだろうって思ってたから、俺も同罪だろ? 」
「ライル様は、全てお見通しだったのですね」
「ルルも大変な役を任命されたものだ」
「滅相もありません。どうか、お許し下さい」
「いいよ。それより、ナハトはどうしてる? 」
「はい。妹のリリと話していると思います」
「まぁ、楽しそうならいいか……」
「はい。2人とも楽しそうに過ごしております」
「それと、1つ聞いておきたい事がある。さっきの罪滅ぼしと思って答えてくれ。俺が森で出会ったダークエルフは、この村にいたんだろう? 」
「はい。おりました。その子は……私の妹です」
「そうだったのか……亡くなった母親はもしかして? 」
「私の母です……」
「良ければ詳しい経緯を話してくれないか? 」
「はい……実は、ダークエルフは、忌み嫌われているとお話ししましたのは、ご存知の通りですが、母が産んだ子がそのダークエルフだったのです。実は、この村では数百年毎にダークエルフが生まれます。でも、ダークエルフが産まれる何十年かは、災いが起きるのです。大精霊様が封印されてしまった時もダークエルフが生まれました。それが、この村に伝わっている話です」
「だから、追い出したの? 」
「いいえ。本来なら産まれて直ぐに処分されてしまうのですが、母は、その子を3年程、隠して育てていたのです。それが、見つかりこの村から逃げ出しました。でも、魔物に襲われてしまったなんて……」
あの婆さんエルフ、こんな事して平気なのか?
「そうだったのか……実は、そのダークエルフの子は生きているよ。俺が匿っている。母親の方は、残念だが、その子を守るように亡くなっていた」
「えっ、生きているの? 本当? 」
「あぁ、俺の連れが家で面倒見ている。母親の遺体も俺の屋敷にある」
「そうだったのですか……何もかもお見通しだったのですね」
「そういう訳ではないが、その子はどうしたらいい? 」
「できれば、ライル様のところにいさせてくれませんか? この村では、きっと辛い目に合うでしょうから……」
「母親の遺体は? 」
「母もこの村を捨てた身です。きっと、ここには、帰って来たいと思わないでしょう。出来れば、静かに眠れる場所に埋葬していただけるとありがたいです」
「そうか……わかった。そうするよ」
「ありがとうございます。ライル様には、感謝してもしきれません」
「前みたいに普通に話してくれて構わないから、それと、感謝されるつもりも無い。俺はしたい事をしたい様にするだけだから」
「はい……ありがとう……本当に、ありがとう……」
ルルは、涙を浮かべていた。この涙は本物だと思いたい。
「それから、なんで名前がなかったのだろう? 」
「それは、忌み子に名前をつけるのは禁忌だと、昔からの言い伝えがあるからです」
「そこまでする風習なんだ……」
「はい……ライル様には、隠しても仕方ない事ですので、今のは全て本当の事です」
「わかった。でも、ルルはどう思ってたの? 」
「それは、私にもよくわかりません。あの子が産まれていなかったら、父は代わりに死ななくても良かった、母も魔物に殺されなくてもよかった。そう思えば悔しい気持ちになります。でも、そういう風習がこの村にあるから、いけないのだと考えれば、あの子に罪はないのだから、愛おしく思います」
父親まで、犠牲になっていたのか……
「そうだね、少し意地悪な質問だったね、許してほしい」
「いいえ。あの子を保護してくださっているのですから、当たり前です」
「わかった。あの子の事は任せてほしい。きっと、いつかルルとも笑顔で会えるように育てるよ」
「はい。ありがとうございます」
今は、この方が良い……
時間はかかるかもしれないが、きっと、笑顔で合わせてやる……
◇
俺とナハトは、エルフの村を出て行くことにした。
沢山の果物と野菜、その他、珍しい香辛料などをもらった。
割れた封印の水晶と中にあった卵の殻も受け取った。そして、長から神樹の実をたくさんもらった。
今までは、大精霊が封印されていた為、神樹の実は、1年で1個しか取れなかったそうなのだが、大木になった神樹は、俺がもらってもまだ、たくさんその実を実らせている。
神樹の実の効果は、寿命を延ばすことができるそうだ。比較的、短命な人族にとっては、夢のような果実だと言う。それに、加工すれば、最上級回復薬にもなると言う。確か、エクサリーとか言っていた。
後で調べてみようと俺は、思っている。
封印を解いてからのエルフ達は態度を一変させた。
まるで、神を扱うような感じだ。
壇上に祀り上げられるような感じは、好きになれない。
普通に接してくれれば助かるのだが……
ルルとリリは、別れの時、涙を浮かべて手を振っていた。
ナハトも嬉しそうに手を振りかえしている。
俺は、少し複雑な思いだ。
ルルの流す涙には、きっといろいろな思いが込められているだろうと思ったからだ。
俺達は、そんなみんなの前で転移して自分の屋敷に帰った。
◇
「おかえり〜〜」
出迎えてくれたのは、ダークエルフの子を抱っこしたノーチェだった。
エルフとはいえ、成人までは人間と同じように成長するようだ。
成人してからは、成長がゆっくりとなるらしい。
「元気だった? その子は、もう、大丈夫? 」
「あ〜〜リールのこと? うん、だいぶ、落ち着いたよ」
リールって名前をつけたんだ……
「リール、良かった。俺は、ライル。よろしくね」
「うん、知ってる……助けてくれてありがと」
「俺様は、ナハト様だ。よろしくな。小娘」
「小娘じゃない! リールなの! 」
「がははは、結構、我が強そうだぞ。気に入った。リール。よろしくな」
「うん」
「それで、ユオは? ユオは、どこ行ったんだ? 愛しの兄様が帰って来たと言うのに〜〜」
「ユオは、薬師さんのところに行ってるわ。薬の作り方を教わっているみたい」
「そうか、出来た妹だな」
「じゃあ、俺は、竜神様のところに行って報告してくる」
「少し、休んでから行けば良いのに〜〜」
「用事は先に済ませたほうが、後でゆっくりできるだろう」
「そうもそうね」
俺は、歩いて隣の王城に行く。出迎えてくれるのは何時も凛とした女性の竜人だ。
そう言えば名前を聞いてなかったな……
俺は、挨拶もそこそこに謁見室に通された。
『おぉ、ライルよ。大精霊の封印を解いてくれたそうじゃな』
「はい」
『お主があやつの封印を解いたと言う事は、何かを約束させたのか? 』
「復讐しようとしていたので、やめてもらいました。」
『復讐か……だが、やつを封印した者はもうおらんじゃろうに』
「その子孫に復讐しようとしてました」
『あいつは、遊びが半分じゃからのう。ライルも苦労した事だろう』
「まぁ、それなりに」
『しばらくは、のんびり過ごせば良い。そうだ。また、妾と夕食を食べようぞ』
「そうですね。今日は、少し疲れたので、また、今度お願いします」
『そうか、そうか、わかった。待っておるぞ』
「はい」
竜神様のところから帰る途中、ユオに出会った。
ユオは、ポーションの作り方を教わっていたようだ。
「こちらの世界の薬剤の調合は、錬金術ですぐできるそうなんですよ。魔法って便利ですね」
「ユオなら、直ぐにマスターしそうだな」
「はい。あとは材料さえあれば、チョチョイのチョイで出来上がりです」
「そうなんだ。そう言えば、神樹の実をもらったよ。加工すれば、エクサリーとか言う回復薬になるそうだよ」
「それ、本当ですか? さっき、聞いた話では最上級魔法薬ですよ。部分欠損など、通常では治らない怪我や病気も治癒できるそうです」
「そうなの? たくさんあるから、後でユオに渡すよ」
「そうですね。私は、まだ、亜空間収納が使えませんし、外に出しておいて腐らせるのも勿体無いですから、まだ、主任が持ってて下さい」
「わかった。必要になったら言ってくれ。それと、亜空間収納だけど、イメージを固めるとできるようだぞ。俺も、ブラドが使ったのを見て覚えたし」
「そうですか、今度、古竜様に聞いてみます。それと、転移も覚えたいです」
「そうだな。できれば、便利だものね」
「はい。絶対、マスターしてみせます。それと、リールっていい名前でしたでしょう? 」
「あれって、ユオがつけたの? 」
「はい。[夜]繋がりで……」
「そうか、どこかで聞いた事ある単語だと思ったよ。確か……」
「主任でもわからない言語がありましたか? 」
「イヤ、ここまで、出かかってるのだが……」
「リールは、チュニジア語で、夜という意味です」
「そうだった……完敗だよ」
「主任に、言語で勝てました。初勝利です」
「そうだったか? 」
「はい。結構、嬉しいです」
「それは良かったよ」
ユオと屋敷に戻るとリールは走り回っていた。ノーチェにかなり懐いているようで、お姉ちゃんと呼ばれてノーチェも嬉しそうだ。
「そう言えばナハトは? 」
「今夜はご馳走だと言って台所にこもったきりよ。なんでも、美味しい食材を手に入れたんだって」
「そうか、それは楽しみだな? リール」
「うん」
笑顔が出るようになって良かった。
でも、心の中は、辛くて悲しみで溢れているのだろう。
俺は、この子の笑顔を曇らせることのないように努めようと思った。
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リール (3歳)女性 ダークエルフ
Lv 1
HP 35/35
MP 30/30
スキル
闇精霊術
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