第29話 大森林
青竜の屋敷で過ごした翌日、俺達4人は、大精霊の封印を解く為、神樹の場所に向かっていた。
「なんか、凄いところね〜〜」
「卒業旅行に行った屋久島の森林を思い出します」
「なぁ、それより、場所はこっちでいいんだよな」
「問題ない。方向は合っている」
青竜が教えてくれた神樹の場所は、大森林の中央部分にあるそうなのだが、衛星の地図では、確認が取れなかった。そして、その神樹を管理する、エルフの村があるそうなのだが、それすらも地図で確認ができない。
きっと、何らかの認識阻害の仕掛けが施されているようである。
「 ライル、本当にこっちでいいの? 」
「あぁ、地図では、そうなっている」
「ねぇ、みんな、少し休みませんか? 」
「ユオ、疲れたのか? お兄ちゃんは、背負ってあげるぞ」
「あそこに沢があるから、そこで休もうか? 」
「そうだな」
ノーチェが指差した方向に、水が流れていた。俺達は、その付近で、休憩をとる。
「綺麗な水」
「確かに」
水を飲みながら、少し、休んでいると、
「クンクン、何か魔物の匂いがします」
「さっきから、してるぜ。それも、10体はいかねぇが、それに近い物音がする」
衛星で確認しながら来ているが、今の機能では、この場所の阻害を突破する事が出来ないようだ。ナハトやユイの五感に頼るしかない。
俺達は、剣を抜き、身構える。
森の中から姿を現したのは、人間大の蜘蛛だった。
「ひゃーーデカい蜘蛛です。主任、気持ち悪いです」
俺は、鑑定を使う。
…………………………
グレートタランチュラ
Lv 67
HP 280/280
MP 148/148
スキル
毒糸
…………………………
「レベル67、スキルに毒糸を持っている。油断するな」
「俺に任せとけ! こんな蜘蛛なんぞ、あっと言う間にぶっ殺してやる」
ナハトは、そう言うと、姿を現した蜘蛛に突っ込んでいった。
ナハトの剣が唸る。
だが、蜘蛛は、木に垂らしてあった糸を手繰り寄せ、あっと言う間に木の上に登ってしまった。
そして、蜘蛛の糸攻撃が放たれる。
ナハトは、かろうじて、それを避けるが、避けた先にも、蜘蛛が現れていた。
ナハトは、避けれそうにない。
しかし、その蜘蛛は、もう、動きを止めていた。
ユオが、投げたナイフが突き刺さっていた。
魔力を通した、黒竜のナイフは、その刀身に黒竜のブレスを纏う。
黒く変色するのはその為だった。
黒竜のブレスの性能は、触れたものを消滅させてしまう。
そんな、とんでもない能力だった。
俺も、別方向から向かってきた蜘蛛を2体斬り裂いていた。
ノーチェも、自分に襲いかかってきた蜘蛛を撃退している。
蜘蛛達は、形成が不利となると、撤退を始めた。
知能が備わっているようだ。
逃げる、蜘蛛を風魔法の【ウィンドカッター】で切り裂く。
しかし、最後の1匹を取り逃がしてしまった。
ナハトが、その蜘蛛を追いかける。
ユオも回収したナイフを両手に構え、ナハトの後を追いかけた。
「深追いはしない方が無難だが……」
そう思っていたところ、ノーチェが血の匂いがする、と言ってきた。
「血の匂いって? 」
「ナハト達じゃない。違う、血の匂いがする」
不安になった俺もノーチェも、ナハト達の後を追いかけた。
着いたところは、蜘蛛の巣だった。
張り巡らせた蜘蛛の糸の中に、大きな繭がある。
蜘蛛の魔物の姿は、見えない。
ナハトとユオは、違う場所で戦っているようだ。
「ライル、この中から、血の匂いがする」
イヤな予感がしたが、繭の糸を剣で慎重に切り裂く。
その中から出てきたのは、子供を抱えた母親らしきエルフだった。
残念ながら、母親らしきエルフは、子供を守るように亡くなっていた。
でも、子供のエルフは、辛うじて息があるようだ。
俺は、その子に回復魔法をかける。
その子供は、少し、良くなったようだが、何かが、阻んでいる感じだ。
「毒か……」
俺は、毒消しをポーションに溶かして、その子供に飲ませる。
ゆっくり飲ませないと、肺に水が入り可能性がある。
その、子供は、少しむせながら、そのポーションを飲み干した。
「ねぇ、大丈夫? 」
「………」
まだ、意識がハッキリせず、状況が飲み込めてないようだ。
すると、ナハトとユオが駆けつけてきた。
「おい、最後の1匹、俺がやっつけたぜ! 」
「その子、どうしたのですか? 」
「蜘蛛の繭の中にいたんだ。ノーチェが見つけてくれた」
「さすが、ノーチェさんです」
「おい、そのもう1人の方は……」
ナハトの問いに俺は、首を横に振る。
「そうか……ちきしょう! 」
ナハトは、悔しがっていた。
助かった子も、意識がハッキリしたのか、
「お母さん、お母さん。わぁ〜〜」
母親の亡骸を揺すぶって、泣き出した。
俺達は、しばらく、その子が落ち着くまで、ここで、待つ事にした。
◇
ノーチェとユオは、母親に縋り泣いているその子の側にいた。
俺とナハトは、魔物避けの結界石を周囲において、警戒に当たっている。するとナハトが
「なぁ、あの子さぁ、ダークエルフだろう? 雑技団にも、大人のダークエルフがいたから、知ってるけどよぉ〜、母親は、普通のエルフみてぇだし、どうしてなんだ? 」
「それは、わからないが、父親か親族の元に連れて行けば、落ち着くだろうし」
「まぁ、そうだな」
周囲の森には、まだ、強い魔物がウヨウヨいる。このまま、その子をここにおいていく選択肢はない。だか、連れて行くのも危険だと思う。
そんなことを考えていると、ノーチェがやってきて、
「ライル、あの子、屋敷に連れて行こうと思うんだけど」
「構わないけど、何か理由があるのか? 」
「どうも、エルフの里から逃げて来たみたいなのよ。名前も無いようだし、何か引っかかるのよ」
「わかった。一旦、竜の里に戻ろう」
ナハトを呼んで、理由を話し、母親の遺体を亜空間収納にしまって、俺達は、屋敷に転移した。
竜の里の屋敷に戻った俺達は、その子を部屋に案内して、休ませた。母親の遺体も収納から出しておく。
「時間が経てば、落ち着くと思うけど、その間、みんなは、ついていてあげて」
「そのつもりだけど、ライルは、どうするの? 」
「俺は、また、さっきの場所に戻ろうと思う。もともと俺が頼まれたことだし」
「俺も行くぜ! まさか、俺を置いて行くなんておもっちゃいねぇよな〜〜」
ナハトは、ついて行く気、満々だった。
「わかったよ。ノーチェとユオにあの子、任せてもいい? 」
「それは、構わないけど、2人だけで、森に行くの危険じゃない? 」
「無理しないように行動するよ」
「気をつけてね」
「あぁ」
俺と、ナハトは、さっきの森に転移した。
「なぁ、ライルよ。さっきの子、何か訳ありっぽくねぇか? 」
「そうだな。ノーチェとユオに任せよう。落ち着けば、理由もわかるだろう」
「まぁな。それより、早く、行こうぜ。せめて、陽が暮れる前にエルフの村に着きたいもんだぜ」
「そうだな。こんなとこで一晩過ごすのは、あまり気が進まない」
衛星で確認すると、南南東に神樹があるようだが……
「ナハト、何か、人の匂いとかわからないか? 」
「あぁ、あっちの方角に、匂いが残ってる」
ナハトが指した方角も南南東だった。
俺達は、その方向に向かって、駆け足で向かう。
ナハトは、森をスムーズに走り抜ける。
獣人の天性の感なのだろう、俺は、感心しながら、
「こういう場所だと、ナハトは、生き生きしてるな」
「そうか? 確かに、街中よりは、動きも楽だぜ」
展開している衛星を見ると、魔物が近くにいるようだ。
しかも、デカい。
「ナハト、止まれ! この先にいるぞ! 」
「あぁ、わかってる。さっきから、匂いがしてやがる」
剣を抜き、身構えると、現れたのは、1つ目の巨人だった。
…………………………
サイクロプス
Lv 78
HP 430/430
MP 145/145
スキル
薙ぎ払い
……………………………
「レベル、78、スキルに薙ぎ払いを持ってる。気をつけろ! 」
「あぁ、わかってるって! 」
ナハトは、相変わらず、敵に特攻を仕掛ける。
サイクロプスは、持っていた大きな石でできた棍棒を振る下ろした。
ナハトは、素早い動きで、それを交わすが、振り下ろした棍棒の風圧で、体勢が乱れる。
俺は、風魔法を放つ。
しかし、サイクロプスの持っていた棍棒で防がれてしまった。
威力が弱かったか……
サイクロプスが、薙ぎ払いの攻撃を仕掛けてきた。
振り回した、棍棒で、渡り一面の木がなぎ倒された。
俺は、【グラビティ】をサイクロプスに放つ。
圧しかかる重力に抵抗していたが、サイクロプスは、膝をつきその場に伏せった。
ナハトは、待ってたかのように、跳躍して、剣をサイクロプスの首筋に突き立てた。
鈍い、サイクロプスのうねり声が、森に響き渡る。
だが、まだ、絶命していない。
俺は、剣に魔力を通し、サイクロプスに向けて、振り下ろす。
黒く輝くその剣は、サイクロプスの首を切り落とした。
「おぉ、やっぱ、スゲーーな、その剣は」
「あぁ、確かに」
俺達は、そのサイクロプスを見上げ、どうするか考えていた。
「なぁ、これ、何かの素材になるんじゃねぇか? 」
「そうかもな」
「でも、肉は食えねぇぞ。匂いでわかる」
「そうか、取り敢えず、収納しとくか……」
俺は、サイクロプスの遺体を亜空間収納にしまう。
その時、周囲に敵の気配を感じた。
ナハトも気づいたようだ。
俺達は、エルフの戦士達に囲まれてしまったようだ。




