第30話 エルフの村
サイクロプスとの戦闘後、俺とナハトは、エルフの戦士と思われる者達に囲まれてしまった。
できれば、友好的に話し合いをしたいが……
しかし、エルフ達からは、強い敵意が俺達に向けて放たれている。
「おい、俺達は、用があってここにきた。エルフ達と敵対するつもりはねぇ」
ナハトがデカい声で叫ぶ。
だが、敵意は消えることはない。
「私は竜神様に、大精霊封印を解いてやってくれ、と頼まれた者です。こちらに、交戦の意思はない。話し合いがしたい」
「お前が、大精霊様の封印を解くだと? 何を言っている」
少し離れた場所から、1人のエルフがそう話す。
「私は、現に竜神様の封印を解きました。ここには、青竜様に場所を教えてもらい来ました」
「竜神様の封印を解いただと〜〜、青竜様の導きで来たのか? 」
エルフ達は、俺達の話の真偽を確かめているのだろう、少し時間をおいて、
「お主達を、我らの村に案内しよう。もし、その言葉に偽りがあれば、生きて村から出られることはない。それでも良いか? 」
「あぁ、構わねぇぜ! 」
ナハトが返事をする。
「わかった。ついて来い! 」
エルフ達は、俺とナハトを取り囲むように、村に案内した。
◇
エルフ達が、森の中を行くと森の木々は避け始める。そして、鳥居のような形をしている大きめな二本の木の間を潜ると、そこは、さっきまでとは違う景色が広がった。
小さな木が植わっている丘を中心に村が広がっている。
「なんじゃ、こりゃ!? 」
「転移なのか? 」
「転移と似た方法ではあるが、これは、精霊魔術の幻術の応用だ。これが、本来の姿だ」
精霊魔術……聞いたこともない……
まぁ、その精霊魔術が認識を阻害してたんだな……
「お前達には、まず、長にあってもらう。長は、嘘を看破する能力の持ち主でもある。お前らの言葉に嘘偽りがあれば、命はない」
「そんな能力もあるのか……」
「嘘つきたくたって、これまで嘘ついて生きてきた事などねぇ」
案内されたのは、村1番の大きな屋敷だった。まるで、ログハウスのようだ。
「ここだ。ここで、しばらく待っていろ」
強そうな紳士風のエルフは、俺達を椅子に座らせ、この広いエントランスに待機させて奥に行ってしまった。
それでも、数人のエルフが、俺達の見張りとして残っている。
その見張りの者達を見て思う。
エルフ達は、みんなイケメンみたいだ……
女性の戦士もいる。女性は、みんな美少女だ……
しばらくここで待っていると、
「長が会うそうだ。ついて来い」
俺達は、そのエルフの後をついていく。通された部屋は、畳のような敷物がある床の部屋だった。
「ここで、靴を脱いでもらおう」
日本みたいだな……
「靴脱ぐのかよ。めんどくせぇな〜〜」
まぁ、会談の場で靴を脱ぐのは、逃げるのを防ぐ意味もあるしな……
エルフに促された場所に、俺とナハトは座る。
すると、奥の扉からお婆ちゃんのエルフが出てきた。
「お主達が、大精霊の封印を解きに来たと言っておる小僧たちか? 」
「そうですが、封印を解くかどうかは、俺の意思に任されています」
「それは、どういう事じゃ? 」
「竜神様の封印を解いてから、竜神様に大精霊が夜な夜な連絡を入れて来るそうです。竜神様も、毎晩、連絡が来るので俺に大精霊の封印を解いてくれと頼みました。でも、解くかどうかは俺の判断に任すと言われました」
「うむ……嘘は、言ってないようじゃな」
「そうなのですか? 長、では、封印をこの小僧が解けると? 」
「竜神の封印を解いたのは、本当のようじゃ」
「では、大精霊様も……」
「解けるじゃろう。だが、この小僧の一存に任されているようじゃな」
「何と……」
長と側にいた戦士のエルフは、内緒話のように小さな声で話していたが、俺もナハトもその話は聴こえていた。
「小僧、お主、名は何という? 」
「俺は、ライルです。こちらは、ナハトです」
「ライルとナハトよ。お主達に、大精霊様の封印を解いてほしい」
「そのつもりで来ましたが、見なければ封印を解けるかわかりません」
「あぁ、それは最もな話じゃ。じゃが、何故、竜神は、お主の一存に任せた? 」
「確か、封印を解けば抑えられていた精霊の力が増すそうです。中には、悪さもする精霊もいるから、と言ってました」
「それを、お主の目で確かめろと? 」
「そうだと思います」
「確かに、封印を解けば、精霊の力は飛躍的に増すじゃろう。我らエルフは、精霊の力を借りて魔法を使う。言わば、我らの魔法も力を増すという事じゃ。それに、闇を司る精霊もおる。其奴らの力も増す事は疑いないじゃろう。さて、お主は、どうやってそれを見極める? 」
「俺にとっては、損得のない話です。ここまで来るのを考えればその労力の分だけ、損した事になります。竜神様には、竜の里に住まわせてもらっている恩もありますし、お互いの利害関係があります。でも、大精霊とエルフ達は、俺にとっては何も関係ない存在です。ですので、竜神様の顔に泥を塗らない程度には頼まれた事はしようと思っておりますが、命の危険を犯してまで大精霊の封印を解くつもりはありません」
「最もじゃな。嘘、偽りのない言葉じゃ。それに、反対の立場であれば、我もそう思う。だが、我らと利害ある関係を持てば、お主も断れんじゃろう? 」
「利害ある関係ですか? 」
「そうじゃ。例えば、神樹の実とかな」
「長、何を言っているのですか? あれは、我ら一族の宝。他の種族になど渡すなど以ての外です」
「話の途中で、すみませんが、私には、その神樹の実がどういうものか知りません。知らないものをもらうつもりもありません」
「そうじゃな。これは、この村の者しか知らんからな」
「俺は、別に大層な物は望んでません。封印が解けそうならば解きますし、無理そうならやめます。その、神樹の実もいりません」
「まぁ嘘はついておらんようだが、まぁ、この件については、少し、時間をくれんか? 2〜3日、ゆっくり、村にいれば良い」
「あまり、時間は、かけたくないのですが」
「まぁ、そう言うな。せめて、今宵、お主達を歓待しようぞ。できれば、明日にでも大精霊様の元に案内する。それで良いか? 」
「わかりました」
「では、お主達を部屋に案内しよう」
そして、俺とナハトは、この屋敷の別邸のような場所に案内された。
◇
「おい、ライル、さっさと、封印を解いて帰ろうぜ! なんかエルフの野郎は気に入らん。上から目線な態度だしよ〜〜」
「まぁ、明日には帰れるさ。無事で済むかそうかは別だけどな」
「やはり、何らかの手を打ってくる気か? あいつら 」
「間違いない。懐柔するか、無理矢理封印を解かされるかどっちかだな。ノーチェとユオを置いてきて良かったよ」
「確かに、ユオに何かあったら、俺様は我慢できねぇからな」
すると、ドアをノックする音がした。そして、部屋に入ってきたのは、
「こんにちは。ライル様とナハト様のお側使いとなりましたルルとリリです。この村に滞在中は、私達がお世話致します」
10歳前後の双子のエルフ娘だった。
ナハトは、口をポカンっと開けその美貌に見惚れていた。
ナハトには、ハニートラップは成功みたいだな……
俺のところには、ルルが、ナハトのところには、リリが腕を組んでいる。
初対面で、この態度は馴れ馴れしいだろう……
「俺、ナハト、よ、よろしくな〜〜」
ナハトは、相手の術中にはまってしまったようだ……
「君達は、長から頼まれたの? 」
「はい。でも、お二方が入って来た時に見かけました。とても、素敵な人だと思っていました」
凄い、手慣れている。夜の銀座でもやっていけそうだ……
でも、5歳児にハニートラップはないと思うが……
「ねぇ、ライル様。村を案内しますわ。是非、ご一緒にどうですか? 」
「ナハト様も行きますよね? 」
上目遣いのリリにナハトは、顔を赤くしている。
「なぁ、ライル、ちょっと村を見てみようぜ! 」
うん、うん。お前の気持ちもわかるが、俺には、この子達は、姪っ子にしか見えん……
でも、村を見ておくのも良いかもしれない……
ルルとリリの案内で、俺達は村を見て回る事になった。
◇
この村の何処からでも大木のある丘が見える。俺は、あれが神樹だと確信するが、
「あの丘にある木が神樹なのかい? 」
「そうです。でも、長しか入れない仕掛けが施されているんですよ」
「そうなんだ」
神樹のセキュリティは、厳重だという事か……
「この村には、だいたい何人ぐらい住んでるんだい? 」
「およそ、300人程度だと思います。村を出て人間の街で暮らす者もいますし」
「出入りは自由なの? 」
「この村の出身の者は、出入り自由ですが他の者は入れないようになっています」
「確かに、ここを目指して森の中を歩いてきたけど全然、わからなかったよ」
「森には、強い魔物もいますし、滅多にここに来る人はおりません」
「そうだろうね」
「ここには、黒いエルフは、いないの? 」
「えっ!? 黒い、ダークエルフでしょうか? 」
「あ、うん。そう言う種族名なの? 」
「あの者達は、悪しき者達です。この村には、1人もいませんわ」
「悪しき者!? 」
「はい。呪われし悪しき存在です」
繭の中にいたあの子は、悪しき者として嫌われていたのか……
ちょっと、探りを入れてみるか……
「実は、この村に来る途中、蜘蛛の魔物に出会ったんだけどその巣に大きな繭があってね、開けてみたら、大人のエルフと子供のエルフが死んでいたんだよ。でも、その子供のエルフが黒かったので、不思議に思ったんだ」
「えっ!? 死んでいた……」
「そうなんだよ。知り合いなの? 」
「いいえ! そんな者達、知りません。きっと、はぐれエルフでしょう」
「はぐれエルフ? 」
「はい。街で生まれたエルフです。そういう者達は、この村の様子を聞いてたまに来たりしています。街で差別や奴隷に落とされ、助けを求めてね」
「そうなんだ……」
明らかに、前半は嘘だな……
という事は、あの子は、もう、帰る場所が無いのか……
母親を魔物に殺され、この村では忌み嫌われ、何処にも居場所がないんじゃ無いか?
俺は、あの子が可哀想な気がしてきた……
ルルは、俺を引っ張り回して村の中を案内してくれた。
俺と腕を組んだり、手を握ったり、とびっきりの笑顔を振りまいて楽しそうに案内するルルを見て、
これも、計算うちなら女の子はみんな女優だな、と妙に感心していた。
その時、ナハトは、リリの案内で無茶苦茶楽しんでた。




