第20話 偶偶(たまたま)
白狼族の獣人、ナハトとユオは、その後、お風呂に入り、食事を済ませて部屋で休んでもらった。今後の事は、事情を聞いた上で、自由にしてもらおうと思っている。
朝、目が覚めると、隣にぬいぐるみがいた。
「あれ? 」
すると、ドタドタを廊下を走る音がして、急にドアを開けたぬいぐるみが俺を見て
「あーー! お、お前、ミカン、じゃね〜〜ユオ……妹に何してやがる!! 」
「うむ。おはよう」
「おはようじゃねーー! な、何で妹と一緒に寝てんだよ! 」
「妹!? 」
俺は、その言葉で気がついた。
隣で寝てるのは、ぬいぐるみではなくユオだと。
「わぁ! 何してんの? 」
「……寝てた」
「はい!? ユオは、ナハトと一緒じゃなかったの? 」
「……トイレl
「うん」
「……寝た」
単語を繋げると、夜、トイレに行って部屋を間違えたのか……
「ナハト、部屋を間違えたみたいだぞ」
「そ、そ、れは、本当なのか? 」
「……違う」
「おい、お前! 違うって言ってんぞ! どう、落とし前つける気だ。はぁあん?」
「じゃあ、どうして? 」
「……いい匂い」
「匂い? 」
「……そう」
うむ。わけがわからん……
「いい匂いがしたんだってよ」
「匂いと、これは関係ね〜〜だろう! はぁあん? 」
「いい匂いがしたんだ? 」
「……そう」
「いい匂いがしたからここに来たの? 」
「……そう」
「何で? 」
「……落ちつく」
「ナハト、そう言う事みたいだぞ」
「わ、わかった。妹が勝手に来たみたいだな。でも、これとそれとは、話が違う。俺と勝負しろ! 」
わぁ、面倒くさい……
「後で森に狩に行こうと思ってたから、その時でいいだろう? 」
「わかったぜ! その言葉で忘れんなよ。さぁ、ユオ行くぞ! 」
ナハトは、ユオを引っ張って自分達の部屋に帰って行った。
何だったんだ?
◇
朝食のテーブルに、4人が座って、焼串肉を食べている。昨日、夜襲に行く前にノーチェが買っておいたものだ。
ノーチェと俺の亜空間収納は、時間経過が無いらしく、買ったそばから亜空間収納に入れれば、その時の状態のまま保存できるようだ。
そんなわけで朝から肉なのだが、正直、軽いものが食べたい。だが、出されたものは食べる信念を持つ俺は、文句を言わずに黙って食べる。
ナハトとユオは肉が好きらしく夢中で食べていた。夢中になりながらもナハトは、俺を威嚇しながら肉を食べている。
「ナハトとユオだっけ? いいの、名前を変えちゃって? 」
ノーチェがそう言うと
「いいんだ。俺は結構、気に入ってる。が、勝負は別だ! 」
「ライルと勝負するの? やめといたほうがいいわよ」
「俺が、こんなチビに負けるわけね〜〜だろう! 」
「そう、勝手にすれば。でも、忠告はしたからね」
「へ〜〜んだ」
面倒なタイプだ。事情を聞こうと思ったが、この分じゃ無理そうだ……
「ノーチェ、この後、森に行くけど、行くかい? 」
「うん、行く。レベル上げたいし、それに、昨夜は、私、何も出来なかったしね」
「わかった」
「ねぇ、ライル、もっとさぁ、誰かにちゃんと教わったほうが良くない? 昨夜は、侵入までは、良かったけど、その後が、最悪だったし」
「そうだね。機会があったら教わろうか? 」
「そうよね」
「ところでここは何処なんだ? ライル、お前は、貴族のボンボンなのか? 」
「ここは、竜人族の里だよ。縁があってこの屋敷に住んでるんだ。それと、俺は、一応、人族だよ。ここに来る前は、貴族の次男だったけど」
「竜人族の里だって! 本当かよ! 」
「本当だよ。地下にある亜空間らしい。ここが、地下だなんて言われないとわかんないよね」
「地下!? 亜空間!? 」
「まぁ、ここでは、誰もナハトやユオに悪い事はしないし、のんびり暮らせるけど、どうするかはナハトやユオが決めればいい」
「地下なんだよな。地上に出られないんじゃねーーのか? 」
「うん。転移でしかでれないみたいだ。でも、出たければ、連れて行くよ。この屋敷にずっと住んでいても構わない。自由にしててくれればいい」
「この屋敷、2人で住むには広すぎるのよね〜〜」
「な、何、お前達は、そ、そういう関係なのか? 」
「な、何言ってんの? そんな事あるわけでないでしょう! 全く」
「俺がここに連れてこられて、ノーチェに会ったんだ。友達になったから一緒に住んでいるんだよ。部屋もたくさん余ってるしね」
「まぁ、そういう事にしといてやら〜〜」
「お互い、おいおい事情を話す事にして、食べ終わったなら森に行こうか? 」
「おーー! そうこなくっちゃ! で、勝負するんだろう? 」
「森に行ったらね。それで、ナハトは、武器とかどうする? 」
「武器か〜〜そうだなぁ〜〜でかい剣がいいなぁ」
「ユオは? 」
「…………」
「妹は見学でも構わないだろう? 」
「いいよ」
「よかったな? 」
「…………」
ユオは、小さく震えていた。
何かあったみたいだな……
◇◇
朝食後、俺達は、街を歩いて、ドワーフ職人のドドンパッチさんのところに向かっていた。
ナハトとユオは、珍しそうに周りを見ながら歩いてる。印象的なのは、ユオがナハトの後ろで少し怯えながら歩いている事だ。
「この店よ」
ノーチェが、そう言いながら元気よく声をかけ店の中に入る。
「ごめんくださ〜〜い」
人見知りって設定、嘘だろう? なぁ、ノーチェ……
「よぉ〜嬢ちゃんと小僧じゃね〜〜か。まだ、できてね〜〜ぞ」
「ドドンパッチさん、この子の剣を探してるんですけど」
「この子じゃねえ、白狼族のナハト様だ」
「はい、はい。で、大きな剣がいいんだって」
「嬢ちゃんと小僧の知り合いじゃあ、しょうがねえな。良いのがあるぜ。でも、そのガキに扱えるかね〜〜」
「何言ってんだ。俺が扱えね〜〜剣など、あるわけでね〜〜だろう」
「こりゃまた、威勢のいいガキだ。ちょっと待ってな」
ドドンパッチさんは、店の奥に入って行った。
「ねぇ、ナハト。あんた本当に剣を扱えるの? 」
「あたりめ〜〜よ」
「それならいいけど、狩は遊びじゃないんだからね。身の丈に合った剣じゃないと命の保証はできないわよ」
「そんな事は百も承知だ。しつけ〜〜んだよ。この女は」
「ふん。忠告はしたからね」
ノーチェを怒らすと後が大変なんだけど……
その間、ユオは、ナハトの背後に隠れるようにじっとしていた。
すると、ドドンパッチさんが大きな剣を担いで持ってきた。
「大きいわね〜〜」
「うむ。大きいな」
「この剣は、大剣と言って、ここに落ちてきた冒険者が持ってたもんなんだが、このガキに扱えるか? 」
「あ、あたりめ〜〜だろう。ちょっと、かしてみやがれ! 」
ドドンパッチから剣を受け取ったナハトは、その重さに耐えかねてゆらゆら揺れている。そんな様子を見て
「こりゃあ、ダメだな。もう少し小振りの剣じゃねーーと危ねぇな」
確かに……
「へへん。こんなもん。俺は、大丈夫だぜ! 」
「粋がっても死ぬだけだぜ。ちょっと待ってな」
ドドンパッチさんは、また、奥に入って行った。そして、今度持ってきたのは、刃渡り1メートルくらいの剣だった。
「狼のガキ、この大剣は、お前が大きくなるまでとっといてやるから、それまで、これを使いな。この剣は、ミスリルでできた高級の剣だ。お前さんには、高級の剣の方がいいだろう? 」
「よくわかってんじゃね〜〜か。よし、そういう事なら、その高級の剣を使ってやら〜〜」
「おい親父。そのデカい剣はとっておけよな! 」
「わかったよ。ここじゃ、剣など滅多に売れんから大丈夫だぞ」
そうして、ナハトは、少し大きめの剣を購入した。
もちろん、代金は俺持ちだった。
その後、転移して森の入り口まで来ている。
着いたそうそう、勝負と言い出すナハトに、どうしようか困っていると、
「狩の前に勝負したら、疲れて、狩ができないじゃない。夕食に肉が無くていいの? 」
「それは、あった方がいいけどよ〜〜、勝負がよ〜〜」
「何、子供みたいな事、言ってるの? 生活がかかってるんだから、せめて、狩が終わってからにしなさいよね」
と、ノーチェが説教をした為、勝負は、どちらが多く倒せるかに、いつの間にか変更されてた。
「じゃあ、行くぜ! ライル、後で吠えずらかくなよ! 」
と、ナハトは、威勢良く森に突っ走って行った。
「ノーチェ、悪いけど、ナハトを見てあげてくれる? 俺は、しばらく、ユオといるよ」
「そうよね〜〜あのバカ、勝てない魔物に突っ込んでいきそうだもんね」
そう言って、ナハトの後を追いかけて行った。
ノーチェは、結構、面倒見がいいみたいだな……
ユオは、今度は、俺の背後に隠れて少し、震えている。
俺は、狩には行かず、ここで、ユオと留守番することにした。
それでも、『衛星』を展開して、警戒は、怠らない。
「ユオは、狩とか苦手? 」
「……した事ないからわかんない」
「そうか。あっちの木の株のところで休んでようか? 」
返事を待たずに、俺はユオをそちらに導く。
ユオも黙ってついてきた。
今朝、寝てたユオと印象が違うな……
何かを抱えているみたいだが、無理やり聞き出すのもなぁ……
まぁ、のんびりしてれば、気も落ち着くだろう。
ここは、ノーチェが、初めて転移した場所だ。
そんな事を考えていると、ユオが
「あの……助けてくれてありがとう」
「どうしたの? 」
「まだ、お礼ちゃんと言ってなかった」
「そうか」
「うん」
「何で助けてくれたの? 」
「君達兄妹は、ついでだったんだ。女の子がいただろう。あの子とは知り合いだったからね」
「そう、でも、どうしてわかったの? 」
「うむ。みんなの居場所がわかる能力があるんだよ。公には言えないけどね」
「それって特別な力の事? 」
「そうみたいだね。ユオにもあるだろう? 」
「わかんない」
「教会で祝福は、受けたの? 」
「祝福って何? 」
そうか、知らないのか……
「俺達、人族は、5歳になると教会で祝福を受けるんだ。その時、神様が、ギフトという能力をくれるんだよ」
「そうなの? 私も祝福を受ければもらえるの? 」
「人族はそうだけど獣人は、俺も良く分からないんだ」
「獣人はダメなの? 」
「お兄さんは何か言ってた? 」
「何も、知らないよ。きっと」
「そうか、調べてみないと今は、答えられない。迂闊なことを言ってぬか喜びさせたくないからね」
「ううん。それだけわかれば、自分で調べる」
「調べてあげようか? 」
「えっ」
「祝福の件じゃなくて、今のユオの能力だよ」
「そんな事調べられるの? 」
「この世界には、レベルという概念があるからね。俺の能力の1つでそれを調べられるんだ。これも公にできないけど」
「調べて、お願い」
「うん。わかった【鑑定】」
……………………
ユオ (白狼族) 5歳 白狼族長の娘
Lv 4
HP 45/45
MP 127/127
祝福
全魔法適正(5)
全魔法耐性(5)
神ギフト
言語理解
錬金術
スキル
投小剣
気配察知
……………………
アステル神の加護
「えっ!? こ、これは……」




