第19話 夜襲
真夜中、俺とノーチェは、リアス嬢が捕らえられている林の脇の草原に転移した。ノーチェと一緒に転移出来た事に、一先ず安心する。
これで、地上へ好きな時に出かけられそうだ。
『衛星』で確認すると、目標は、平家建の家で、地下があり、そこに牢屋がある。家には、3人。偉そうな奴が酒を飲みながら、談笑しており、この盗賊らの親分かもしれない。また、地下の牢屋の前に4人。テーブルを囲んでサイコロの様なものを振っている。
外の警備などはおらず、この7人が今回の敵対者だと認識する。
俺達は、雑貨屋で買ったお面を被り、行動に移す。
ノーチェには、屋敷の外で待機してもらい、俺が乱入している間に隙を見て屋敷内に潜入。そして、保護対象者の確保という役割をお願いした。
しかし、このお面はなんだか気に入らない。
それは……[回想中]……
「ノーチェ、顔がバレたらまずいから、雑貨屋でお面を買ってきたんだ」
「じゃあ、私、これね」
「えっ」
「もしかして、このお面をライルがつけようと思ったの? 」
「それ、般若の面だよ。鬼みたいで怖くないの? 」
「じゃあ、私にこの口が曲がって飛び出してるオジさんのお面を被れというの? イヤよ。気持ち悪いし」
雑貨屋にあったお面は、般若のお面とひょっとこのお面が1つずつしかなかった。
「わかったよ」
俺がひょっとこのお面を着けると
「ギャハハハ、それ、似合う。ライルにぴったり。ヒャハハハ」
と、大笑いされた。
なんかムカつく
……[回想終了]……
俺は、事前に決めたハンドサインでノーチェに『待て』の合図をして、屋敷の周りに張り巡らしてある罠を【ディスペル】を使って解除する。これは、魔物除けの物でもあるが、侵入者が近づいてきた事を知らせる能力がある。
俺とメリーナ姉さんが、首都に向かう時、母さんが野営の時に使った物と同じようなものだった。
小屋が見える場所で、少しの時間闇に身を潜める。罠を解除して、中の盗賊が出てくるかもしれないと思っての待機だ。
気づかないようだ……
俺は、ノーチェにサインを送り、小屋の中に転移した。
◇
ひょっとこのお面を被った子供が急に部屋の中に現れたのを見た盗賊達は、最初は驚いていたが、俺の体格を見て小馬鹿にするように叫ぶ。
「何だお前!! 」
「急に入ってきやがって、誰の家だと思ってんだ〜〜? 」
「気持ち悪いお面を被りやがって、子供は、ネンネしろ! 」
「まぁ、いい。鴨がネギを背負ってきたんだ。こいつも売れば良い」
「まぁ、そうですけど、どうなんですか? 親分、こいつセンスゼロですぜ」
「奴隷にセンスは必要ねーーだろう。例えひょっとこ野郎でも少しは金になる。わははは」
「まぁ、酒代ぐらいにはなるかもしれませんね〜〜こんな小僧でも。わははは」
見るからに悪そうな奴だ。
悪人選手権でもあれば、優勝狙えるんじゃないか?
しかし、なんかムカつく奴らだ。
言いたい事ばかり言いやがって
俺はそいつらに向けて風魔法【ウインドカッター】を放つ。これは、『四面楚歌』のソーシャさんが使ってた魔法だ。
すると、
『ギャッーー!! 』
あれ!?
加減を間違えた?
そこにいたボスを含む悪人3人を、切り裂いて、家を半壊させてしまった。
その音に、地下にいた4人組が階段を登ってやってきた。
「何だ、何だ! 」
「敵か! 」
今度は、力を抑えよう……
こう、上手く魔力操作をして〜〜
「家、壊れてんじゃね〜〜か! 」
「ボス達はどうした? 」
「汚ね〜〜ひょっとこ野郎がいるぞ」
「小僧じゃね〜〜か。殺しちまえ! 」
俺は、階段に上がってきた4人に向かって抑えた風魔法【ウィンドカッター】を放つ。
『ヒュン、ヒュン』
あ、あれ……
抑えたんだけど……
どうして、こんなになちゃったんだ!?
4人組の小物達は、無残に斬り裂かれ、半壊した半分の家も壊れて無くなっている。
「何やってんのよーー! 」
「わっ! 鬼だ! 」
般若の面を被った者が、ふと現れると、結構、怖い。
「失礼ね、私よ。ノーチェよ。何、家壊してんの? 」
「いや、何でだろう? 」
「私は、もっと、暗闇の中で密かに近づいて、暗殺するイメージでやってたんだけど、台無しだよ。やり直しを要求するわ」
「ノーチェ、俺もそう思ってたんだよ。やり直ししたいよね」
「本当よ。まぁ、いいわ。こっちよ」
俺達は、階段を降りて牢屋の前に行く。
「誰? 」
リアス嬢だ。だいぶ憔悴してるな……
「鍵が開かないのよ」
「そうなんだ。で、鍵は? 」
「知らない。さっきの人達が持ってたんじゃないの? 」
「マジか、瓦礫に埋もれて探すのが面倒だ。わかった、壊すよ」
何かグダグダだな……
俺は、剣で鍵を切ってみた。すると、火花が飛び散り、鍵は、粉々になってしまった。
「開いたよ。中の人、助けに来ました。もう、出られますよ」
そう言って、すぐ信じる人はいないだろう。
ひょっとこと般若の面を被っている怪しい2人組みなのだから……
でも、リアス嬢は、コソコソとゆっくりと出てきた。
手枷をされ、服はボロボロだ。
「回復薬です。飲んで下さい」
と、言って信じる人は滅多にいないだろう。毒かもしれないし……
でも、リアス嬢は、手枷をされた両手で受け取って飲み始めた。
う〜〜ん。素直なのは良いが、少し心配だよ。この子……
「今度は、魔力回復薬です。飲みますか? 」
また、両手で受け取って飲み出した。
う〜〜ん。この子、悪い人に騙されそうだ……
「これあげるよ。君、心配だから。これは、魔力が枯渇しそうになったら取り出せるからね。いざとなった時使うといいよ」
大人として心配だ。見てくれは子供だけど……
そう言って手枷を外し、封印の水晶で作ったペンダントをかけてあげた。
その時、胸が覗き見えた。
そこには、見慣れぬ紋様が刻まれている。
「それは、何ですか? 胸の模様は? 」
「キャッ! こ、これは、奴隷紋です」
奴隷紋?
取り敢えず解除しとくか……
【ディスペル】
胸の紋様がみるみるうちに消えて無くなった。
「あの〜〜あなた様は? 」
「誰でもないです」
すると
「ライル、こっちの子達ひどい怪我してる」
「そうなの? 直ぐに送ってくるから、ノーチェ、少しお願いできる? 」
「わかった」
俺は、リアス嬢を抱えて、皇都にいるリアナ嬢のところに転移した。
抱えた時、リアス嬢が「えっ!? ラビス様? 」と小声で言った事は、聞かなかったことにした。
リアナ嬢は、もう、寝ていたようだが、俺達が現れたら、飛び起きた。寝れずに横になってただけだったようだ。悲鳴をあげそうだったので、俺は、直ぐにリアス嬢を下ろして転移した。
戻ってきてみると、ノーチェが獣人達に話しかけていた。
「大丈夫よ。助けに来たんだから」
後ろの獣人の女の子を庇うように男の子の獣人が前で威嚇している。
その男の子の片目は潰れており、全身も怪我を負っていた。後ろの子も怪我の状態が酷い。
衛星を展開してあるので、誰か近づいてきたら直ぐにわかるようになっているが、小屋を破壊してしまったので、のんびりしている暇はない。
「信じなくてもいいが、外に出られて自由になりたいのなら、ついて来て欲しい。どうする? 」
ここで、治療しても回復できるかわからない……
「わかった、言う通りにする。でも、妹に何かしたらただじゃおかね〜からな! 」
「約束しよう」
俺は、獣人達の手枷を外した。
「ノーチェ、怪我が酷いから屋敷に連れてくけど、いいよね」
「うん。その方がいいと思う」
「わかった。転移するから、俺に捕まっててくれないか? 」
獣人の兄妹は、恐る恐る俺に近づく。
「捕まって! 」
俺は、そんなみんなを連れて屋敷に転移した。
◇◇
突然、景色が変わった獣人達は、驚いている。
「こ、ここは、どこだ! 」
「俺の家なんだけど、ちょっと、待ってて」
俺は、獣人達の手枷を外し、2人の様子を見る。
まず、普通の回復薬を飲んでもらった。
体力が戻って来たようで、顔色も赤みが指す。
獣人達の胸にも奴隷紋が刻まれている。
俺は、その奴隷紋に向けて【ディスペル】をかける。
その様子をジロジロ見ていた獣人達は、少し安心したようだ。
「ノーチェ、悪いけど、お風呂の用意しといてくれる。あと、着替えも。それと、ブラドが作ってくれた作り置きの食事があるでしょう? それを温めて欲しい」
「わかった。用意するね」
ノーチェは、直ぐに動き出した。
「えーーと、俺は、ライル。君達は、怪我が治ったら俺を襲ったりしないよね? 」
「それは、わからん。妹に手を出したら許せない」
「それは、しないと、さっき約束しただろう」
「なら、襲わないと約束する」
「わかった。回復できるかいまいち自身がないけど、やってみる」
俺は、目がさいせいされ、傷ついた身体が治るイメージを膨らませた。身体に魔力を纏い、そして
【ヒール! 】
掛け声とともに、眩いほどの光が2人を包む。俺は、それを維持しながらイメージを強める。
すると、
「マジか、見える。見えるぜ! 」
「…………」
光は収束し、獣人達の怪我を癒せたようだ。
「良かった。できたよ」
「お前、すげーーな」
「ここまで、出来るとは俺も思ってなかったよ。妹さんは、大丈夫かい? 」
獣人の兄は、妹を見て
「大丈夫そうだ。助かったよ。え〜〜と」
「ライルだ。そう呼んでくれ」
「ライル、感謝する」
「君達を助けたのは、ついでだけどな」
「それでも、あそこにいたら、きっと、殺されてた」
「ほら、お前も礼を言え」
「……ありがと」
「うん。いいよ。で、君達名前は? 」
「あぁ、あるにはあるんだが、口に出すのも嫌いな名前だ」
「うむ。それは、どうして? 」
「この名前をつけた奴に、こうしてやられたからだ」
「そうなんだ。でも、名前がないのは不便だし、う〜〜む」
「じゃあ、お前がつけてくれ。命の恩人だ」
「俺がか? じゃあ……」
俺も、ノーチェも『夜』繋がりだし……
「じゃあ、君は『ナハト』妹さんは『ユオ』でどう? 俺の名前は、ライル。俺のいたとこで夜を表す言葉なんだ。さっきの子はノーチェ。これも夜を表すんだよ。ナハト、とユオも夜を表す言葉。どう? 」
「夜か〜〜そいつは、ありがてーー! 俺達、白狼族は、夜の住人だ。月が出てれば最高だぜ! 気に入った。ありがたくナハトを名乗らせてもらう」
「……ユオ。優しい感じがする。嫌いじゃない」
そう言いながら俺の目をジッと見ている。
「じゃあ、決まりだ。よろしくね」
ノーチェが、俺達を呼びに来た。用意ができたようだ。
詳しい話は、明日かな……




