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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第1章 少年期

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第18話 準備




 翌日、(くだ)けた水晶を取りに城に来ていた。

 ノーチェは、街に買い物に行くと言って出かけていった。


 俺は、凛々しい竜人族の女性に案内され、宝物庫の水晶を受け取った。

 そのまま屋敷に帰ってもつまらないので、俺は、少し、散歩に行こうと、ノーチェと会った丘の木の上を目指し、歩いて行く。


 木にもたれかかり、ここ数日に起きた事を考える。


 心に引っかかるのは、ランドル男爵家の家族の面々だ。衛星で所在は、確認しているが、拡大して、その様子を見ることが出来なかった。


 見れば辛くなることがわかっていたからだ。


 あの時、拒絶された時の感情は、言葉で表す事ができないほどの心の痛みを伴い、どうしていいかわからないほど、落ち着かなくなる。俺は、その感情を深く、深く心の奥に仕舞い込むのだやっとだった。


 すると『衛星』の一部分が点滅している。カーソールを合わせたかのようにその点滅している箇所を注視した。


 確か、ヘンリー辺境伯の次女リアスか?

 何故牢屋に入れられているんだ?


 俺は、衛星を拡大して、周囲の状況を見てみると、ガラの悪い男達が数人、牢屋を見張りながら酒を飲んでいる。


「攫われたのか……」


 場所は……


 ヘンリー辺境伯からかなり離れたミスティナ皇国の北部にある林の中の小さな家の中だった。


 リアス嬢は、かなり憔悴している。他にも獣人らしき者が2人捕まっていた。


 俺は、その場所にチェックを入れ、ヘンリー辺境伯の屋敷周辺を、今度は覗いてみる。慌ただしく、兵達が動いているのがわかる。


「攫われた事は知っている様子だ。でもヘンリー辺境伯は、何処、あっ、皇都の城にいる。長女のリアナ嬢は、皇都の屋敷にいるようだ」


 そう言えばメリーナ姉さんと一緒に受験勉強していたな。

 学院に入るために、皇都の屋敷にいるのか……


 リアス嬢が何故捕まったのかはわからないが、知り合いが困っていたら助けてあげないといけないな。


 ここから、転移してその場所に行けるだろう。そして、皇都の屋敷に連れて行けば、リアスは落ち着くか……


 さて、行くなら少し用意しないと……


 俺は、街に戻った。衛星はリアス嬢をロックして展開してある。何か変化があればすぐにでも行けるようになっている。


 俺は、街で買い物をしなければならない。すると、


「ライル、ここで何してるの? 」

「ノーチェ、買い物をね。ところでノーチェの買い物は済んだの? 」

「うん。でももう少し、買い足したい物があるんだ」

「そうか」


 俺は、ノーチェに話そうか迷っていた。

 危険な目に合わせたくないし、ノーチェならついて来そうだ。

 どうしようか迷っていると


「ライル、どうしたの? 」

「何でもないかな」

「うそ。ライルは、何か迷ってる」

「凄いね。よくわかったな」

「ライルの顔色ぐらいわかるよ。それで、話してくれるんでしょう? 」


「ノーチェ、実は……」


 俺は、さっき見た事を話した。すると、


「私も行く! 」


 やはり、そう来たか……


「危険かもしれない。出来ればここで帰りを待っていてほしい」

「無理」


 一言で反論された。でもノーチェらしい。


「わかった。出来れば夜に行動したい。それと、買い物付き合ってほしい」

「わかったわ」


 向かった先は、ドワーフ職人のドドンパッチのところだ。


「ごめんください」


 そう声をかけると中からドドンパッチが出て来た。


「おう、小僧か、まだ、出来上がってねえぞ」

「そうじゃなくって、これをペンダントにしてくれませんか? 」


 俺は、さっきもらった水晶のかけらの一部を取り出した。


「おぉ、水晶か。って、これ何て魔力量なんだ? 」

「竜神様が封印されてた水晶なんだけど、もらったから」

「何ーー! 封印の水晶か! 」

「封印の水晶って? 」

「確か、魔力を貯め込む力があって、いろいろな素材に使える幻の水晶だ」


 これは、異世界のギャグだ。でも、今日は笑ってあげる時間がない……


「すみません。今日は急いでるので、ギャグは無しで」

「小僧、そう言えばお前は、そういうやつだったよな」


 何故か、ノーチェを見て頷いている。


「これで魔力が枯渇した時に取り出せますか? 」

「もちろんだ。幻の水晶だぞ」

「これで作れるだけ作ってくれませんか? 」

「構わねえがいいんだな? 」

「はい。できれば、2〜3個すぐに欲しいんですが」

「わかった。ちょっと待ってろ」

「他にも買い物があるので帰りに寄ります」

「あぁ、わかった」


 俺とノーチェは、別に店に行く。

 ここは薬屋だ。


「すみません。体力や魔力を回復する薬はありますか? 出来れば毒消しもあると助かるんですけど」


「ポーションとマナポーションかい? あるけど、下級と中級しかないけど」


 薬師さんはイケメンのエルフだった。


「中級の物を下さい」

「わかった。何本? 」

「どれだけ用意できますか? 」

「今、あるのは、20本ぐらいかな? 全部は無理だけど売れるのは10本かな」

「では、10本お願いします」

「マナポーションもだよね」

「はい。それと、毒消しもあれば」

「丸薬で良ければ、そこにあるよ」

「では、これもお願いします」

「わかった。用意するから待っててくれる。金額は、全部で、金貨1枚でどう? 」

「はい。では、これでお願いします」

「確かに」


 イケメンエルフさんは店の奥に入っていった。商品を用意してるようだ。


「ノーチェ、悪いんだけど、これで、食料と水を買っておいてくれないか」

「うん。いいよ。買い物終わったらドドンパッチさんのところに行ってるね」

「頼む」


 イケメンエルフさんが薬を持ってきてくれた。

 俺はそれを受け取り、今度は雑貨屋に足を運んだ。


 必要な物を取り揃えて、ドドンパッチのところに行く。

 ノーチェはすでに来ていて、楽しそうに話し合っていた。


「おう、小僧、出来上がったぞ」

「とりあえず5個作っておいたぞ。残りは、どうする? 」

「剣が完成した時でいいです。代金は? 」

「これはいいよ。でも、削った水晶のカスをもらっていいか? 」

「えぇ、いいですよ」

「じゃあ、決まりだ」


 俺は、そのペンダントを受け取り、ノーチェと一緒に屋敷に帰った。

 帰る途中、ペンダントを1つ渡したら、ノーチェは、凄く喜んでいた。





 俺は、再び城を訪れている。

 数時間、ここを離れる事を、ブラドや竜神様に話しておこうと思ったからだ。


 ブラドに謁見室に案内され、俺は、


「地上に用事ができましたので、少しの間、ここを離れます」

『そうか、わざわざ言いに来なくても構わんぞ。それに、お主が招きたい者がおれば、連れてきても構わん。お主は、あの屋敷の主人なのだからのう』

「わかりました。感謝します」

『何か今日は、何時もの太々しさがないのう。まぁ、良い。お主の好きにすれば良い。それと、後で話がある。時間ができた時にでも、また、顔を出せ』

「わかった」

『あっ、そうじゃ、使用人の件じゃが、まだ、見つかっておらん。少し、時間をくれんかのう』


「構いません。というか、昨夜も言いましたけど、別に2人で大丈夫ですよ。食事は、外食でもまかなえますし、贅沢する気もありませんし」


『ライルは、そう言うが、食事は大切な事なのじゃぞ。でも、ブラドは、別として、竜人族の者は、あまりそのような事が得意ではない。街にいる他の種族たちも、それぞれ自分の仕事を見つけて役割を持って生活してるでのう。というわけで、外から連れてくるしかないのじゃが、それも、ここの生活に耐えられる者を見つけるのは至難のわざじゃ。この地下亜空間は、魔力が地上より、遥かに濃い。それに、ブラド達の威圧に耐えられる者となると、腕利きの冒険者ぐらいしかおらん。故に、当分の間は、この城で食事を取れば良い』


「心配してもらってありがとうございます。時間はたくさんありますので、こちらでも探してみます」


『すまんのう。調子の良い事ばかり、言ってしもうて』

「いいえ。こうして、ここで暮らせているだけで、俺は満足です」

『まぁ、そういうでない。もっと、欲を出せ。ライルよ』

「今は、こんな感じですが、将来は、欲が出るかもしれません」

『それは、面白そうじゃ。楽しみになっておるとするか』

「はい」


 俺は、竜神に許可をもらい屋敷に戻った。


 俺の気付かないうちに口調が変わってたのか……

 地上の事を考えていたから、きっと、ラビスになっていたのかもしれないな。



◆◆◆



 真夜中、林の手前の草原に、月明かりに照らさらた2つの小さな影が湧き出た。


 林の中は、暗く、その影は、静かにその闇に入り込んで行った。


 奇妙な手の動きで会話をしているようだ。


 時には、素早く、時には、慎重にその影は動いていた。


 罠を警戒しているのかもしれない。


 少し進むと、家の光が漏れてきた。


 影は、そこで二手に分かれたようだ。目を慣らすかのように、じっと灯りを見つめている。


 家の中からは、下品な男の声が漏れている。


 賭け事でもしているようで、時たま、奇声や暴言を吐いていた。


 1つの影が突然、消えた。


 すると、もう1つの影も動き出した。


 家の中からは、先程とは比較にならない奇声が闇夜に響き渡った。






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