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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第1章 少年期

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第17話 森で狩



 ノーチェの機嫌が悪いまま、俺達は、森で魔物を狩っていた。

 ノーチェの怒りの矛先となった魔物達は、無残な肉片と化していた。


「ノーチェ、魔物が可哀想に思えてきたんだけど」

「何言ってるの? ライルは、黙ってて! 喋るの禁止! 」


 一方的に、会話禁止令の法案が可決してしまった。

 野党が黙ってないぞ……


 俺は『衛星』を使って、危険な魔物がいる場所を避けながら進んでいる。

 今のノーチェなら、相手が黒竜のブラドでも襲い掛かりそうだ。


 また、魔物が出てきた。さっきからプヨプヨしているゼリーのような魔物は何なんだ。


「どりゃーー! 」


 あぁ〜〜そんな声出さなくても良いのに……

 せっかくの美少女が台無しだ。


 ノーチェが、魔物を肉片に変えている間、俺は、この森の様子を衛星で眺めていた。広いと思っていたが、森までこんなに広いとは驚きだ。


 それに、魔物はどこから発生してくるんだ?

 繁殖条件は何なんだ?

 交尾をして、生まれてくるのか?

 しかし、このゼリー状の魔物にオスとかメスとかあるのか?


 不思議だ……


「こんちきしょうめーー! 」


 あぁ、どうしよう……

 ノーチェが壊れていく……


 きっと、辛い過去を思い出し、その悔しさを発散しているのだろう。

 俺にしてあげれる事は、優しく接してあげる事だ。


 角が生えた、ウサギのような魔物がいた。

 ウサギは捕まえるのが難しい。

 これを、ノーチェに捧げれば、少しは、大人しくしてくれるかもしれない……


 俺は、角ウサギの側に転移した途端、そのウサギを掴み取る。


 よし、上手くいったぞ……

 これを、ノーチェのところにっと……


 俺は角ウサギをノーチェが攻撃しやすい場所に投げてあげた。


 あれっ!?

 なんでノーチェ動いたの?


 角ウサギは、見事にノーチェにぶつかった。それも顔に……


「ラ・イ・ルーー! 」


「うん、そういえばノーチェって運が悪いんだったね。今のでよくわかったよ」


「言いたい事はそれだけ……」

「いや、話したい事はたくさんある。魔物がどこから生まれてくるのか、とか、交尾するのか、とか、ノーチェと話し合いたいなって思ってる」


「ザクッ! ザクッ! 」


 あぁ〜〜角ウサギちゃんが肉片に変化した……


「ライル、私ね。ライルに優しくしてあげようと思ったの」

「うん、良い心がけだ」

「でもね。それだけじゃいけないんじゃないかって考えが変わったの」

「思考の変化はよくある事だよ。その場の状況で、やり方を変えないと問題は解決しない。良く気がついたね。ノーチェは、天才だ」

「うん。そう思うわ。私も」

「自信が付いてきたんだ。良かった。俺も嬉しいよ」

「じゃあ、ライルが嬉しい事、もっとしていい? 」

「そこまで考えてくれてたなんて、俺は幸せ者だ」

「私も幸せよ。ライルを殴れて」

「えっ!? 聞き間違いしたようだ。確認するけど殴るって言った? 」

「言ったわよ」

「何で? 」

「ウサギに聞いて」

「肉片になってるぞ」

「ライルも肉片にしてあげる」


『ボカッ! 』


「う〜〜、結構、良いパンチだったけど……」

「そう? もう少し、付き合ってね」


『ボカッ、ボカッ! 』


「う〜〜、う〜〜、何か行き違いがあったようだ」

「そうなんだ。ライル、嬉しいでしょう」


「いや、もういいかなって思ってた」

「じゃあ、これで最後にするね」

「お手柔らかに……」


『ボカッ! 』


 これで、ノーチェも落ち着く事だろう。

 優しく接するという事は難しいものだ……





 森の狩を終えて、俺達は、屋敷に転移した。

 服が転移出来ないノーチェは、危険なので行き同様、俺が抱えて連れて行く。


 ウサギの肉は美味しいらしい。今日は、ノーチェのおかげで、夕食はステーキに決まった。


 血抜きや内臓を取り出して下処理するには、ウサギの形を保っていなければならない。ここにあるのはただの肉片だ。これが、牛だか、豚だか、ウサギだか、判別できないほど『肉』として完成された物になっていた。


「流石、ノーチェだ。これほどまでに、手を入れないで焼くだけにしてくれたのはノーチェのおかげだ。才能溢れる友人を持って嬉しいよ」


「そ、そう。良かったわ」


「俺が焼いておくからお風呂に入ってきなよ。汗かいただろう? 」

「お言葉に甘えるわ」


 さて、この肉をどうしよう……

 俺は、料理というものをした事がない。

 出されたものは、残さず食べるのが礼儀と心得ている。

 だが、作る方は、超初心者だ。


 焼けばいいのだ……


 俺は台所にあるはずの肉を焼くフライパンを探していた。

 無い……

 無ければ代替え品を探せば良いだけだ。

 無い……


 ここには調理器具と思しき道具が一切無い。


 そういえば、ずっと、外食だったり、残ったパンを食べたり、あとはノーチェが作ってくれたり……


 仕方がない。ここは、鮎の塩焼きのように串に刺して、火魔法で一気に焼くしかないか……


 屋敷の外に出て、串に使えそうな木の枝を調達してきた。

 そして、肉をS字形に刺す。


 この波打つ感じがミソだな……


 火魔法は、水場で、と母さんも言ってたように外で焼く方が安心だ。

 俺は、屋敷の裏にある井戸のそばで、串に刺した肉を一気に火魔法で焼く。


 良い匂いだ……


 ちょっと焼きすぎたかもしれない。


 俺は、それを木の器に盛り付け、テーブルに置く。

 パンを取り出して完成だ。


「出来た」


 すると、ノーチェがお風呂から出てきた。


「ノーチェ、夕食の準備が出来たよ」

「ありがとう。すぐ行くね」


 ありがとうか……

 感謝されるのは嫌いではない。

 むしろ、心地良い気持ちになる。

 ノーチェの機嫌も治ったようだ。


「げっ! 」


 ノーチェ、女の子がそんな言葉言ってはいけない……


「どうした、食べよう」

「ライル、ちょっと聞きたいんだけど」

「何だい? 」

「このミミズの黒焼きみたいなの何? 」

「これは、肉だよ。ノーチェが肉片に変えた角のウサギさ」

「はぁ〜〜私ったら、こうなる事ぐらい何となくわかってたのよ」

「何が? 」

「ライル、黒ミミズに刺さっている棒みたいなので取ってみて」

「そうだね。食べる時邪魔だもんね」


 ノーチェに言われた通り、串代わりの木の枝を外した。すると、S字状の黒い肉は、崩れて黒い粒子と変わる。


「わかったでしょう? それは、もはや肉じゃなくって炭よ」

「そうか、炭は食べられないよね」

「わかってくれて嬉しいわ」

「俺もだ。1つ勉強になった」


 そこに、突然ブラドに連れられた竜神がやってきた。


『ライル、おるか〜〜遊びに来てやったぞ』


「げっ! 」


 竜神様までそのような言葉を言ったらダメだと思うぞ……


『これは、何じゃ? 』

「肉の炭? 」

『お主達は、炭を常食とするのか? 』

「いいや。どうやら焼きすぎたようだ」

『なるほどのう〜〜で、それを作ったのは? 』


 竜神様がノーチェの方を向く。


「私じゃありません」


 ノーチェは、首をブンブン横に振っている。


「俺だ」


「はぁ〜〜お主は調理も出来ぬのか? 」

「今日が初体験なんだ」

「でも、普段はノーチェが作っておるのじゃろう」


「そうだ。ノーチェのスープは見たこともない草が入っているが、酸っぱくて摩訶不思議な未知の味の料理だ。これが異世界の料理だと感心していた」


「…………」


『わかった。もう、何も言うまい。ブラド、悪いが食事を用意しておくれ。妾も相伴に預かろうぞ』


『かしこまりました』


 竜神に言われて、ブラドは、台所に向かって行った。


『お主達の話を聞く限り、料理は得意ではないようじゃな。これは、調理人を探さんくてはいかんな』


「俺はノーチェの作った見慣れぬ草が煮込んであるスープで構わないが」

「…………」


『気持ちもわかるが、それではいざという時腹が痛くなって戦えなくなるぞ』

「確かにトイレの回数は多いが、問題ない」

『はぁ〜〜お主に言っても無駄じゃな。こちらで料理人を手配しよう』

「それは、すまない」

『考えれば、お主達はまだ、子供じゃ。こちらこそ考えが至らなかったようじゃ』


 幼女の竜神に言われても……


『何か言ったか? ライルよ』

「いいや、気のせいだ」


 そこへ、ブラドが食事を持ってきた。

 大きなステーキとジャガイモに似た野菜の付け合わせ。

 ハーブの香りのする肉がたくさん入ったスープ。そしてパンだ。


『食べるが良かろう』


 ブラドが食事を促す。

 上手い……

 ノーチェもご機嫌な様子で食べている。


「これは、ブラドが作ったのか? 」

『そうだ』

「料理が上手いのだな」

『我を何と心得る。料理など数千年前に極めたわ』

「そうだったのか」

『あれは、寒い冬の日、我が人化を覚えたばかりの頃じゃった』


 何か語り出してしまったぞ……


『人の街に紛れ込む訓練をしていたのだ。だが、人などとどう接すれば良いか分からず、辺りは暮れ始め雪も降り出した。我は、途方に暮れ、路地で寒さに震えながら座り込んでいたのだ。そこに、人族としては綺麗な女性が声をかけてきた。まだ人語も喋れず、黙っていると、その女性は、手を引っ張って家に招待してくれたのだ。そして、我は、その女性が作ったスープを頂いた。そのあまりにも美味な味で衝撃を受けたぞ。そこで、我は、料理に目覚めた。北の街では皿洗いから始まった。それから食材の皮むき。これを極めるのに2年はかかった。次は、焼き番じゃ。微妙な焼き具合を見極めるのは、偉い苦労じゃった。そして、次はスープ。最後にメインの料理。ここまでくるのに10年かかった。人族の上司からは罵声と暴力の毎日で、辛い料理修行じゃった』


 何してたんだ。この黒竜は……


 ブラドは、当時を思い出したのか目をウルウルさせている。


「良く耐えられたな」

『まだ、幼かったからのう。今のライルと同じぐらいの容姿じゃったし』


 この厳ついオッさんの幼少時代を想像できない……


「ブ、ブラド様、さすがです〜〜ウォ〜〜ン、ウォ〜〜ン」


 何故に泣く。ノーチェよ……


『まぁ、誰しも修行時代はあるものじゃ。して、ライルよ。今日訪ねてきたのは、用事もあるのじゃ』


「そうでしたか。そう言えば、宝物庫の宝を頂きました。ありがとうございました」

『それは、構わん。にしても、あれは持って行かなかったようじゃな? 』

「何でしょうか」

『妾を封印していた時の水晶のカケラじゃ』


 そういえば、宝物庫の入り口近くに積んであったな……


『あれも持っていくが良い。お主の戦利品じゃからな』

「あの砕けた水晶が何かの役に立つんですか? 」

『なっ! そう言えばお主は、偏った知識しかないのじゃったな。あれは妾の封印を解くためにお主が注いだ魔力の塊じゃ。そう言えば理解してくれるかのう』

「魔力の塊? 」

『はぁ〜〜ライルと話していると、どうもお主の将来が不安になるのう〜〜』


『つまり、膨大な魔力を溜め込んだ水晶というわけじゃ加工して身につけておけば、魔力の補充にも使える優れものなのだぞ』


「そういう事か。理解できたよ。ブラド」


『そういうわけじゃ、明日にでも取りにくれば良い』

「わかった」


 魔力補充に使えれば、加工してノーチェに身につけさせておけば、いざという時、魔力枯渇にならないで済む。


 もしかしたら、考えれば色々と使えるかもしれない……


 この時は、まだ、その価値を良く分かっていなかった。







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