第16話 街
次の日、俺とノーチェは、街にあるドワーフ職人のところを訪ねた。
「ノーチェ、ドワーフって種族名か? 」
「ライル、貴方、異世界からの生まれ変わりだと言ったけど、そんな事も知らないの? バカなの? 」
昨日の事を怒っているようだ……
「そうだ。無知な俺に教えてくれ」
「仕方ないわね。ドワーフは、種族名よ。多くの者が力持ちの職人よ。鍛治や大工など職種は様々だけど、腕がいいわ。体長は小さいけど誇りは高いの。それに、髭が生えているわ」
「髭か」
「そこが気になるの? ライルは、本当変わってるわね」
当分機嫌が治りそうもないな……
放っておこう……
「ノーチェは、屋敷に来る前、どこに住んでいたんだ? 」
「草原よ」
「そこは住む場所なのか? 」
「仕方ないでしょう。ここがどこかわからなかったし、みんな怖そうだったし、それに私、人見知りだし」
随分、辛酸を舐めたようだな……
「じゃ、何、食べてたんだ」
「草や、木の実よ。それに、郊外に果実がなる木があるの。そこになっている黄色くて渋みがある楕円形の果実を食べて過ごしてたわ」
それ、渋柿だろ! 辛酸を舐めてたわけじゃなくて、食べてたのか……
「よく生きてられたな」
「だって、私、吸血鬼だし、ハーフだけど」
「そういえば血は吸わないのか? 」
「吸いたいけど、抑えられないほどではないわ。まだ、吸った事無いし」
本当に吸血鬼か?
「まぁ、吸いたくなったら俺の血を吸っても構わないぞ。友達だし、それくらいは協力する」
「えっ、本当? ……バ、バカじゃないの。お生憎様。私は、イケメンしか興味ないの」
これがツンデレというやつか、いや、デレてたのは最初だからデレツンか……
「あそこみたいよ」
「うむ。そうか」
「すみませ〜〜ん」
ノーチェは、確か人見知りとか言ってたな……
どこがだっ! とツッコミを入れたらどんな顔をするか……
まてよ。異世界では通じないかもしれないぞ。
うむ。これは検討の余地があるようだ。
異世界のツッコミ。
ボケも必要だな
そういう文化はあるのか?
俺はシュールなのが好みなのだが、天然系も捨てがたいな……
言葉をもじるのは芸がないし、おじさんくさい。
じゃあ、リアクションか!
「ライル! 何考えてるの? さっきから呼んでるんだけど」
「そうだったか。すまん。ちょっと文化的考察をしていた」
「何、それ? で、こちらがドドンパッチさんよ」
ドドンパッチ……
さっきまでの思考が全部、この名前で無駄になった気がする……
「小僧は、この間の宴会の時の」
「ライルです。実は、素材で剣を作ってもらいたくて」
「そうか、まぁ、あがんな」
「はい」
そこは昔の鍛治職人と言うべき家だった。
弟子もいるのか奥から金属を叩く音がする。
「ライルって言ったか。で、どんな素材なんだ」
「これです」
俺は、亜空間収納から黒竜ブラドの牙を取り出す。
「おぉーー! 」
何だ?
「こ、これは……」
「ブラド、黒竜の牙です」
「そうか、本当だったんだな。小僧が黒竜様を倒したって」
「まぁ、でも、今は、結構、ボコボコにされてますけど」
「しかし、いいのか? これを剣にして」
「はぁ、飾っておいても邪魔ですし、有効利用できればそれに越したことはありませんし」
「何を言ってる。売ればどれほどの値段がつくか知らないのか? 」
「それ、売れるんですか? 」
「あぁ、国が1つ、いや、3つは買えるかもしれん」
冗談好きなオッさんだ……
もしかして、これが、この世界のギャグなのか?
でも、これでは、笑えないな。
でも、それなら無理にでも笑わないとコミュニケーションが取れないぞ。
俺は、世界を調査し、国民の安全を守る仕事を完璧にこなせた人間だ。
これぐらいの、対処、何でもない。
「わははは」
「何、ライル笑ってるの? 気持ち悪いんだけど」
ノーチェ、君は人見知りだからわからないだけなんだ。
これがこの場で一番の対処方法だ。
「わははは」
さぁ、ノーチェ、君も笑いなさい。
「小僧、病気なのか? 」
「知らないわ……」
「お気の毒なやつなんだな」
「そうかもしれないわね」
「嬢ちゃん、優しくしてあげな」
「そうね。可愛そうだもんね」
2人が何か小声で話してるが、今は、笑いの演技中だ。
邪魔するなよ……
「ライル、ごめんね。私、少しきつく当たりすぎたわ」
「剣でいいんだな。とっておきの作ってやるから」
「うむ。お願いしよう」
上手くいったようだ……
「でも、この大きさなら、3本は作れるぞ」
「じゃあ、3本お願いします」
「どういうのがいいんだ」
「僕らが扱いやすい長さのものでお願いします」
「わかった。2週間、いや3週間はみてくれ」
「いいですよ。時間はありますし。それで、金額は? 」
「1本金貨1枚、合計で3枚でいいよ」
俺は亜空間収納に入れといた宝物庫の中から頂いた金貨を渡す。
「これ、使えますか? 」
「あぁ、それで大丈夫だ」
「では、お願いします」
俺は、店を出て歩いていると、遅れてノーチェがやってきた。
何やら2人で話し合ってたらしい。
「ライル、お腹空かない? 」
「そうだね」
「この先に美味しい食事を出してくれるところがあるらしいの。さっき聞いてきたんだ」
遅れたのは、この為か……
「では、そこに行こう」
「うん」
ノーチェは、機嫌が治ったようだ。
俺の対処が良かったのだろう……
◇◇
俺達は、食事を取りながら、これからの行動を確認した。
「私、レベル上げたい」
「確かに、有意義だと思う」
「ブラドさんに亜空間収納を教えてもらったじゃない。もしかしたら、私もレベルを上げれば、強くなれるのかなって思ったんだ」
「そうだね。レベルを上げるのが一番良い方法だ」
「霧化の事も言ってたじゃない。私、それ、出来るようになりたい」
「どうすればできるようになるか知ってるの? 」
「そんなのわからないよ。吸血鬼、見た事無かったもの」
こ、これは……
「う〜〜ん」
「どうしたの? 」
「今のとこ、笑うとこか、ツッコムとこか考えていた」
「えっ、ライル、どこかで頭を打った? 」
「数ヶ月前に打ったけど、どうして? 」
「ううん。何でもないわ。痛かったのね。ヨシヨシ。良い子ね〜〜。もう、大丈夫よ。 私にできることがあったら言ってね」
「あぁ、俺は大丈夫だよ。でも、どこでレベルを上げるんだ? 」
「それは、この先に森があるから、そこには魔物もいるし」
「そうなんだ。よく知ってるね」
「さっき、ドドンパッチさんから聞いといたんだ。剣も貸してくれたのよ」
何でもありだな。ドドンパッチ……
「そうか、じゃあ、食事が済んだら行ってみようか」
「うん」
俺達は、美味しい食事をいただきながら、そんな会話を楽しんでいた。
でも、ノーチェがメリーナ姉さんみたいになってる気がするのは、どうしてなんだ?
◇◇
俺は、森まで転移を試す事にした。『衛星』を起動して座標を決める。そして、ノーチェを抱えながらそこに移動するイメージを抱く。
すると、視界が変わり、森の入り口まで来る事が出来た。
「良かった。転移が出来たみたいだ。ノーチェ大丈夫? 」
「凄い。本当に転移出来たんだ」
「きっと、ノーチェもできると思うよ。魔力を身体に感じて、行き先を決めて強くそこに行きたいって思うんだ。そして、ヒョイって飛び込む感じなんだけど、言葉にするのは難しいな」
「わかった。じゃあ、あの木のところまでやってみる」
ノーチェは、目を閉じて魔力の流れを体に感じているようだ。すると、ノーチェが消えた。
「えっ!? 」
「お〜〜い。ライル。私、出来たみたい」
「う、うん。そうだね。出来たみたいだね」
さて、どうしよう……
俺の足元には、ノーチェが着ていた服が落ちてる。
メガネのように2つ大きな穴が開いた薄い布地もある。
これは、下着か……
つまり、ノーチェは……
転移先の木のところから、ノーチェがここまでまた、転移してきた。
転移魔法が使えて喜んでいる。
「見て見てライル」
「イヤ、見るのはマズイ」
「何言ってるの。見ててくれたんでしょう。私を」
「イヤ、ミテナイヨ」
「何、カタコトの変な言葉使ってるの? 」
「ノーチェ、君に言わなければならない事がある」
「うん」
「空は青いし、太陽の陽射しは、心地良いよね」
「そうね。それがどうかしたの? 」
「でも、少し風は冷たいと思うんだ」
「そうね。何だかスースーしてる感じがする」
「良かった。それが分かれば答えは出たと同じだよ」
「何の答え? 」
「スースーの答えさ」
「風が冷たいって事? 」
「おしい。おしかったよ。残念だが不正解だ」
「じゃあ、何なの? 」
「答えは、君の足元にある」
「足、えっ……」
「正解だ。よく頑張ったね」
「…………」
「君は正解を得た。それは誇って良い事だ。自信を持った方が良い」
「……ラ・イ・ル! 」
「うん。可能性の問題だったんだよ。つまりだね。君は、服を……」
『バカーー!! 』
『ボカッ! 』
俺はノーチェに思いっきり殴り飛ばされた。
「う〜〜、誤解だから、見てないから」
『ライルのエッチーー!! 』
また、しばらくノーチェの機嫌が悪いかな……
プロローグを追加しました。
遅くなって、すみません。




