10話・思い出すのはあなたの笑顔
「お腹すいた……」
あやかはお腹を押さえながら秘密基地へと戻ってきた。
「ただいまー」
返事はない。リカエルとミナリはまだ帰ってきていないらしい
お腹がすいて、歩き疲れたあやかはベッドに寝転んだ。
グー、
お腹の音が鳴る。
あやかはお腹が空いたせいで前に食べたスノサンドを思い出す。
ふわふわしていて、味は悪かったけど匂いは結構よかったというのが彼女の率直な感想だった。
「作ってみよっかな」
あやかは自分が作ったらリカエルよりは絶対においしくなるという自信があった
確か、リカエルはこうしていたと、記憶を頼りにスノの卵を取り出した。
フライパンを置き、卵を割る。
ぐしゃ。
「あ」
殻が少し入った。
「……まぁいっか」
指で殻を取り出す。あとは焼くだけ。
「確か、火で焼くんだよね」
そこまでは知っていた。
だけど、
「……火ってどうやってつけるんだっけ?」
あやかは辺りを見渡した。
それらしいものを探してみる。料理する狭い場所であやかは右往左往して立ち止まった
リカエルが料理していたときは、ここに火があった。
だから火があればいい。
「火……」
あやかはフライパンを見つめた。
暖かい火を頭の中に思い浮かべる。
「火、ほしいな」
その瞬間だった。
真っ暗な空間に
一つ。
二つ。
三つ。
光が浮かぶ、トライデントの点の位置で光る光の点
その光はくるくると回り、三つの光が重なり、爆発が起きた。
「彩花!!!」
はっ!
「お母さん?お母さん!お母さん!!どこ?お母さん!お父さん!」
あやかは思い出した。否、それは母の記憶なのかもしれない。だが、あやかは知った。
自分が生まれて初めて見た光は、母を殺した赤黒い爆発の光だった事を。
そしてあやかの頭に、ある一つの映像が再生される。目のない女性がその光によって肌が焼けて、顔の皮膚がただれ崩れる姿を。あやかはそれが母だと分かった
「あー、あーーーーー、あああああああああああああああああ!!!!!!!」
あやかは見たかった、母の顔を。あやかは見たかった、母の笑顔を。あやかはずっと想像していた、お母さんと自分とお父さんが仲良く笑う姿を。
そんな願いが叶うとずっと信じていた。叶わなくとも信じていた。そうじゃなければ、この世界はあまりにも残酷だからだ。だがそれ以上の残酷な映像を見てしまったあやかは普通ではいられなかった。
あやかはその事実を知り、気持ちが悪くなり、嘔吐し、失禁した。
「んっ、おう、おう、おふっ!おふっ!おうぇ」
「はああ!はあああ!んっ!!!ふー!!ふー!ふー」
息ができていなかった。
あやかは息ができなくなった。
このままではまずいと、形だけでも息をしようと息を吸おうとしては、すぐ出てくる空気を引き留めようとしていた。
「ひー、ひー、ひー、ひー、ひー、ひー、ひー、ひー、ひー、ひー、ひー、ひー、ひー、ひー、ひー、ひー、ひー、」
少しだけ吸えるようになった。
だが彼女は気を失ってしまった。




