9話・草原に浮かぶ褐色の肌
「んっ、んーー」
気持ちのいい風とまぶしい朝日を浴びながら、あやかは背伸びをしている。
そんなことをしているこの場所は、あまり広いとは言えないが窮屈でもない。そんなちょうどいい秘密基地がここにあった。
あやかはリカエルとミナリが朝に出発し、帰ってくるまでは秘密基地にいることになっている。だが二人はまだ時間がかかりそうだった。
「暇だなー」
あやかは扉の方を見た。外からは小鳥の声が聞こえている。
「ちょっとお外でたい」
梯子を下り。外を歩き始めた
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秘密基地からあまり離れないようにしながら、あやかは森の中を一人で歩いていた。今までなら一人で知らない場所を歩くなんて絶対にできなかった。けれど今は違う。自分の前に道がある。木がある。石がある。どこに足を置けばいいのかも分かる。ただ歩ける。それだけのことなのに楽しかった。
「んっ」
しゃがみ込んで葉っぱの上を、小さな黒い虫が歩くのを見つけた。
「虫ってこんな感じなんだ」
指を近づける。虫は急に羽を広げた。
ブーン。
「うわっ!」
あやかは尻もちをついた。
虫はそのままどこかへ飛んでいった。
「いてて」
でも表情には笑顔が浮かんでいる。
あやかはまた歩き出した。しばらくすると、今度は聞いたことのある音がした。
水の音
木々の間を抜けると、小さな川が流れていた。
「うわー……」
あやかは川の前にしゃがみ込んだ。
今まで水には何度も触ったことがあるし、何度も飲んだこともある。流れる音だって知っている。だが、水が流れているところを見るのは初めてだった。透明なものが形を変えながら流れている。太陽の光が当たるたびに、白く輝く。
あやかは手を入れた。
「つめたい」
知っている冷たさだった。なのに目の前にあるだけで、まるで知らないものに思えた。あやかは何度も水をすくい水の冷たさを感じていた。
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川に沿って歩いていると、木が少なくなってきた。その先には広い草原があった。
人は誰もいない。風が吹くたびに草が同じ方向へ倒れ、また起き上がる。ずっと遠くまで緑が続いていた。あやかは歩いた。気が向くままに。
青い空。白い雲。緑の草。遠くに見える大きな山。そして空には、昨日も見た赤い星が小さく浮かんでいる。あやかはその場に座った。何もせず、ただ眺めた。
風が髪を揺らす。虫が飛んでいる。雲がゆっくり動いている。
全部が動いていた。
今まで頭の中で想像していた世界よりも、この世界はずっと広かった。
「綺麗だなー」
「私はそうは思わない」
「…………。」
「…………。」
「え?」
あやかは横を向き、隣に誰かが座っているのに気づいた。
「うわぁ!!」
あやかは地面を這うように離れた。少女はそんなあやかを見て、少しだけ笑っていた。いつからそこにいたのか全く分からなかった。足音も聞こえなかった。
「びっくりした……。」
「貴方も大変だね」
「……?」
少女は草の上に座ったまま、あやかを見ている。
前に会った時とは違く目を触ろうとしてこない。ただ静かにあやかの顔を見ていた。
「貴方死にたくない?」
風が吹き、草が一斉に揺れる。
あやかは少女の顔をじっと見た。
あやかは少し考えた。
そして何かに気づいたように少女を指差した。白い髪。褐色の肌。見覚えのある顔。
「あっ!」
あやかは指をさした。
「なによ」
「この前の人だ!」
「……今?」
「また会ったね!」
あやかはルンルンと少女へ近づき、ほっぺにほっぺでキスしようとした。少女は人差し指で目を閉じながらも、それを押さえつけた。
少女の目がわずかに開いた。
「貴方……私が何をしようとしたか、覚えていない?」
「覚えてるよ」
あどけなく答える
「なら、なぜ貴方は喜ぶ」
「だって二回も会ったんだよ?」
満面の笑みで話す
「はは!あはは!そうよね!私は貴方と二回会った、確かに私はあなたに2回会った
あはああああ、あーあ。」
狂ったように笑うがすぐ無表情に戻った
あやかは再び草の上に座った。
そして目の前に広がる草原を見た。
「それに私、死にたくないよ。」
「そう」
あやかは空を見上げた。
少女もつられるように空を見る。
「だってね、私この前まで目が見えなかったの。ずっと暗くて、目の前に何があるのか、近くに誰がいるのかとかもわかんないの。
そしたらね、突然目が見えるようになったんだよ。自分が今まで想像してきた世界とは、とーっても違くてね、本当に綺麗なの!」
「ふーん、それじゃあ親の顔も見れたのか?」
少女の口の口角が上がる
「、、、。
うんん、見てない」
「見たいだろ?今まで育ててくれた貴方のお母さん、お父さんの顔が
見たいだろ?」
少女のテンションは高くなっている
「うん、見たい!どこにいるか知ってるの?」
少女は何も言わず、彼女の反応に幻滅したような表情で、あやかの頭をトンと押した。
「まぁ、もう時間だから私は消える。
それと貴方。私と一緒に来ないか?」
「どこに?」
あやかはYESではなくWHEREと質問に質問を返した。
「チッ、言えない」
あやかの眼を見ていた顔を、横に向きながら舌打ちをする
「じゃあ行かなーい。どこかにいくの?」
「はぁ、しいて言うなら貴方も見たことがある場所、、、
それじゃ、強くなってね」
くるんと回りながらキラキラと幻影が消えるようにいなくなった。
あやかは何も不思議なことは起きていないかのように、また草原に寝そべった。
あやかはきれいな星空を見上げていた。




