020放っておかれた。くすん。
「だだだだ誰だ!!誰とのだぁ!!」
「いや、誰とのというかそもそも..」
「私の知ってるやつか?!それとも知らないやつか?!..いや、この際どっちでもいい!!誰だか教えろ!!探して見つけだして息の根を止めてやる!!」
「殺しちゃダメですよ。犯罪者になっちゃいますよ」
「そんなもの知るかぁ!!」
恐竜や龍のような雄叫びを上げて、店長は店内を暴れだした。話を聞いてくれない。確かに私の言い方に語弊があったのは、認めるよ?けど、話はまだ終わってなかったから、聞いててほしかった。
十中八九こうなるだろうなとは思ってた。いざ自分の口から碧葉ちゃんの話題を出そうとすると、どうやって切り出したものかと悩んでしまう。
私は緊張にはあまり強くない方だから、「言い方間違えれば、店長が暴走しちゃう!!」と分かっているからこそ、そこでなんて言おうか悩んでしまい、結果として頭の中が真っ白になる。
なんにせよ、失敗した。一分前に戻れるなら、戻りたい。
..なんとなくだけど、そこでもまた慌てて、結局言えなくなる未来しか見えないけど。
..さてと。とにかく店長をどうにかしないと。
なにを言ったら落ち着いてくれるか。策を練っていると、不意に後ろ...自動扉が機械音と共に開いた。
振り向くと、そこには私よりも十センチ以上も背の高い女性の人がいた。
普通だったら、少しビクッとしてしまうけど、その人は私の知り合い..一緒に働く仲間だったので、驚かなかった。
「....なに、これ?」
「店長、暴走状態です」
「いや知ってる。見て分かる。じゃなくて、どうしてこうなったのか」
私は出来る限り分かりやすく、二分ほど時間をかけて説明をした。文章を作るのは苦手だから、理解してくれると嬉しいけど...。
ていうか、私、こうやって見ると苦手なもの多すぎない?弱点しかないんじゃ...。
...考えないようにしよ。
「なるほどね...でも、そりゃ..美織が悪いよ。説明不足っていう加減の話じゃないし」
「うっ!....ですよね..」
自分で言うのと、他人に言われるのだと、こうも傷付く度合いが違うんだ。こう、なんか..グサッ!と刺される感じ。
..嫌なことを学んだ。
「ま、私に後は任せておいてよ。なんとかするからさ」
「ありがとうございますぅ....雨倉さん..」
「どういたしまして」
雨倉さん。フルネームで、雨倉 京子と言う。
彼女は私よりもいくらか年上..らしい。
らしいっていうのは、雨倉さんが正確な歳は教えてくれないからで、しつこく聞くと怒られてしまうから。
一体本当は何歳離れているのか。
雲雀さん同様、カッコいいの部類に入る人で、やっぱり同性にすっごくモテる。
ただ違うところがあって、雲雀さんは凛とした孤高の人。雨倉さんは頼れるお姉さんという感じで、同じカッコいいでも、ちょっぴり違う。
確かこの店で働いて、早四年だとか。
オープンしたのも四年前なので、店長とは店が開くときから一緒。仲もそんなに悪くない。
詳しいことは一切教えてくれないから、店長とどうやって会ったとかも知らない。どういう関係なんだろう。古い仲だということは知ってるんだけど..。
「ほら、リエ。早く起きて。そこ邪魔」
「あぁ~?....なんだキョウか」
「なんだってなんだ、なんだって。なんでもいいから、さっさとそこから退いて。美織だって困ってるし」
「うっ....!!」
いつの間にか床に寝そべっていた店長を足蹴にしながら、雨倉さんは、はぁとため息をつく。
それが呆れからなのか、疲れからなのかは分からないけど、店長に対してのため息なのは分かる。
こうしてため口で、喧嘩腰で話していても、ホントの喧嘩にならないのも、二人だからこそ。
ちょっぴりだけど、この二人の関係が羨ましかったりする。
「ほら、はーやーく」
「わ、分かった!だからそうやってお腹を蹴るのは止めろ!!地味に痛い!!」
げしげしとホントの意味で足蹴を店長のお腹にかます雨倉さん。店長からストップをお願いされるも、止めずにひたすらに黙々と、お腹をげしげしと蹴る。
痛みに耐えかねたのか、店長が雨倉さんの足を掴み、雨倉さんが一瞬たじろいだのを見逃さず、するりと上手い具合に足蹴の猛攻から抜けて、勢いよく立ち上がる。
店長、運動神経良いんですね。
「ふー...ふー...。お、お前なぁ...もう少し加減というものを..」
「してるけど?」
「あれでか?!結構痛かったんだが?!」
「一割しか力入れてないよ。...それで痛いってことは、単純にリエが柔いだけじゃないの?」
「や、やわ...!!そ、そんなに弱くはない!!」
わーわーと言い合い(ほぼ雨倉さんが言い負かしているけど)続ける二人を見ながら、私はこっそりとスタッフの部屋に向かう。
バレるかと思っていたけど、二人とも話に夢中になっていたので、まったく気付かれずに入ることが出来た。
「..はぁ.....」
思わず口から漏れたため息。
不意に出てきたのに驚いて、自分でやって自分で驚くというよく分からない事が起きる。
..どーして私、と言うか碧葉ちゃんの話題から始まったのに、放っておかれたの?流石に傷付くよ?無視されるほうが人間、嫌なものなんですよ?
「...着替えよう」
「う?」
「.....あ、碧葉ちゃん」
相も変わらず愛らしい、触ったら柔らかそうなその顔を不思議そうに浮かべる碧葉ちゃんが、私の背中からいつの間にか降りていて、シャツの一番隅っこらへんを、くいっくいっと引っ張ってきた。
なんだかほわーとした気持ちになる。難しいことを考えるのが、バカらしく思えてくる。それぐらいの効果を碧葉ちゃんがもたらしてくれる。
でも、一体どうしたんだろう。なにか用...でもあるのかな?
「うぁ」
「どうしたの?」
「あー.....う」
「うーん。やっぱり分からないなぁ..。碧葉ちゃんと会話がしたいのに..」
こればっかしはゆっくりと覚えさせていくしかないんだけど..それにしたって、会話ができないと悲しい。
それは碧葉ちゃんも分かっているのか、私がなにをいっているのかを理解できていないのを見て、なんともいえない残念そうな顔になる。
うぅ~どうしよう。
「.........あうっ」
「わっ!あ、碧葉...ちゃん?」
私が悩んでいると、碧葉ちゃんはそれを気遣ってなのか、自分と私のおでこと鼻の先っちょを、ちょん、っとくっつけてきた。
「....」
「あ、碧葉ちゃん?」
くっけたままの状態でまったく動かず、喋らない。なにもせず、じーっと固まっている。
これは...なんだろう。碧葉ちゃんなりの慰め..なのかな?
そう思ってくると、胸の中が自然と温かくなってくる。本当に温かいわけじゃないんだけど、そうゆう風に感じる。
「....ありがとう。碧葉ちゃん」
「う...」
私がお礼を言うと、短く答えて、目をつむる。まだこの状態を続けるみたい。
...それにしても、慰められた理由が「無視されたから」となると、なんだか段々虚しくなってくる。
これは、あれかな?店長にはもう一回お仕置き与えないとダメなのかな?
...まぁなんにしたって、碧葉ちゃんの方から、慰め(分からないままだけど)てくれたのだから、いまはその好意に甘えよう。
「.....」
「.....」
「.....」
「.....」
沈黙が続く。
一分、二分と時間が経過していく。
五分ぐらい立ったかなというタイミングで、碧葉ちゃんが目を開けて、私から顔を離してきた。
「...う」
「ありがとね、碧葉ちゃん」
「あぅ!!」
もう一度お礼を言うと、今度はニッコリいつとの満面の笑顔を返してくれた。
あぁ...可愛い。
のんびりとした時間が流れるなかで、しばらくこの時間が続けばいいのにと本気で思っていると、嫌になるくらいタイミングよく扉を開けて、その時間を、静寂を破ってきた人がいた。
「つ、つゆり~?」
店長だ。
「...はい?」
「も、もしかして...怒ってる?」
「怒ってませんよ」
店長にしては察しがよろしい。でも、もう既に遅し。
放置された人間の怒りを、思いしれー。
「い、いや怒ってるよな?絶対の絶対に怒ってるよな?」
「うるさいです。やかましいです。静かにしてください。早くお店開けないと、時間になりますよ」
「絶対に怒ってるって!!ほら!!」
「いつもの美織だったら優しく許したと思うけど、いまは状況が状況だし....ま、ドンマイ。頑張って機嫌取っとけ」
「ちょ、無責任な...!!」
「無責任?リエが勝手に暴走したのがいけないんでしょ?自業自得だよ、自業自得。反省するんだね」
「う、うるさい!!キョウにだけは言われたくーー」
またもや二人だけの世界が完成しそうだったので、その前に私は手を叩いて会話を強制的に止めさせた。
怒ってる、とかではないよ?うん。
「ーー店長?」
「はい」
「いわんこっちゃない。...はぁ....」
結局なにを話していまにいたったのか、碧葉ちゃんの件はどう解釈したのか、そもそも他の皆はどうしているのか。今日来るはずなのに、なぜか来てない。
その他もろもろと聞きたいことはたくさんあるけれど、一先ず置いといて。ついでに碧葉ちゃんもこの部屋に置かせてもらって。
時計を見る。もう後、十分もないうちにお店が開く。
人だかりだって出来る。この店は前にも言ったけど、そこそこ人気。数人並んでいる日もあるし、数十人並んでいる日もある。
今日は何人くるか分からないけど、とりあえず。
「お店、開きましょう?」
その一言で、三人はそれぞれの持ち場へと歩いていった。
そのまま見終わって帰られる方。少し待ってください。
まず見てくださり、ありがとうございます。
次にお願いがあります。よかったら、評価、または感想をお願いします。評価は1.1でもいいですし、感想も批判等でも構いません。それらを参考にして、これからどうするかを決められるので。あと、レビューしてくれると、もっと嬉しいです。
次回もまた会えることを願っています。
では、また。




