019店長と話。
碧葉ちゃんに、恋をさせるーー?
(自称)神様は言った。至って簡単なんだけど、どうしてそれなのかは、私も知らない。だから、原理とかは分からないと。
なるほど。どうしてそれなのかは分からないっていう意見は、激しく同意。...至って簡単の部分は納得できないけど。
『はい?って言われてもこれが事実。碧葉に恋を。つまり、誰かと恋愛をすることで、あの穴は碧葉だけを残したまま、消えていく。そういう風にこれに書かれてるの』
そんな投げやりな...。
『それよりも。じーかーん。大丈夫なの?』
言われてちらりと時計を見ると...わわわ!!け、結構な良い時間...。そろそろ出ないと不味い..。
でも、それも大事だけど。いまは、碧葉ちゃんのことの方が..ど、どうしよう。
『で、でも...』
『詳しいことは、また教えてあげるから。一旦向かったら?終わったら、今度はそっちから電話してよ。楽しみに待ってるから』
『...え、こっちからも電話出来る...の?』
『出来る出来る。電話帳に追加しといてね』
そう言って、すぐに切ろうとする(自称)神様に私は、一つだけ質問をすることにした。
『待ってください』
『はーい。なに?』
ふらっとに応じてくる。けど、一体どうして?
『どうして私にそんな、親切に教えてくれるんですか?仕事とかだからですか?』
見ず知らず..はたしてそれは本当にそうなのかは、定かではないけれど、少なくとも私は初対面なはず。そんな私に、しかも自称とはいえ神様がそこまで手伝ってくれるのは、どうして?
そもそもな話。なんで、私なの?
様々な疑問が頭の中を行き交うなかで、彼女はこう言ってきた。
『...んー..仕事、だからだけじゃ...ない、とは思う』
『思うって...そんな他人事な..』
『だってあんなの見せられちゃあ...ねぇ?』
『.....?』
あんなのって、なんだろう?
そんなにヤバい物でも見たのかな?
でも、それといまのこれとはまったくの無関係では?
『ま、いいのいいの。こちとら善で動いているんだから。文句はないでしょ?』
『あ、ありがとうございます?』
『どういた。じゃ、切るから。...また、ね』
『はぁ、ま、また...』
プツリと切れ、名残惜しそうでもなく、まったくなんの感情も込めずに彼女は電話を切った。
...あ、そういえば..。
「....あの人の名前って...結局なんなんだろう?」
私は誰に質問しているのかと思いながら、支度をして、大学を後にしたのだった。
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「ごめんなさい!」
「...いきなり謝らないでください。周りの人に迷惑ですよ?」
大学を出てから、すぐさま向かい、だいたい三十分ほどで到着。心の中で「セーフ...」と冷や汗を掻きながら、お店に入った。
すると、ウィーンと自動で開いた先には、周りの目など気にしない様子で土下座をする店長がいた。ちなみに、まだ開店していなかった。
「わ、悪い...」
「....店長。もしかして、ずっとこうしてたんですか?」
「い、いや流石に...。たまたまさっき外を見たら栗花落がいたから..」
「にしたってやりすぎですよ。私はもう許してますよ?」
「そういうわけにもいかない。許してもらったとはいえ、それは電話だけ。ちゃんとこうして正面に立って、誠意を持って謝るのが、責務という奴だ。....偉そうに言えることではないがな」
きりりとした顔で、そして最後には砕けた表情でこちらに笑いかけてくる店長。
....うん。いつも通りの店長だ。
そう思った途端、口からこんな言葉が漏れてしまった。
「...店長、おかえり」
「おかえり?なんだ、疑似夫婦のマネか?」
突然なんのことだか分からないようなことを言われ、戸惑う店長。私は慌てて訂正しようとすると、
「よく分からんが....ただいま?」
腕を組みながらもにこやかに言ってくる店長。
私は思わず店長を抱き締めた。
「ひゃっ?!と、突然なにを...?」
腰に腕を回して、ぎゅ~っと抱き締める。私の力程度では、とてもじゃないけど店長の体に痛みは出ない。それを分かった上で私は力強く、抱き締めた。
すごい細い。引き締まっている体とは、きっとこのことなんだろうなと思わせる。
店長は私に胸が大きいやらなんやら言ってくるが、店長だって、出るとこは出てるし、引き締まっているところは、とにかく細くなっている。なんとも羨ましい限り。
驚いて、そして照れて。顔を赤らめて、両手で私を引き剥がそうか、引き剥がさまいか悩んでいるその表情。やっぱり店長は可愛い。
そんな店長を困らせていたかと思うと、少し胸が痛む。
でも、それもいまちゃんと解決した。....いや、まだか。まだ店長的には納得してないのか。えーと、だったら。
「店長」
「お、おぅ?な、なんだ?」
わたわたと慌ててる。よっぽど驚いているみたい。
「許しますから、いつも通りに戻ってください」
「....分かった。栗花落が許してくれるなら」
「はい、許します」
「...ありがとう」
「あ、もしかして照れてます~?」
「て、照れてない。気のせいだ気のせい。そ、それよりもそろそろ開店するぞ。準備してこい」
「図星だったからって、そんなに慌てることないじゃないですかー」
「う、うるさい!」
ほわほわとした空気が流れ、いつもの雰囲気が戻りかけたその時。
「...うー」
「...ん?あ、ごめんね、碧葉ちゃん。ほったらかしにして」
私の背中に乗っていた碧葉ちゃんが、私の襟元を引っ張る。
その光景を見た店長は、ようやくそこで碧葉ちゃんの存在に気付く。
店長、気付くの遅すぎです。どんだけ鈍感なんですか。
「つ、栗花落...?そ、その背中にいるのは...?」
「え、あー...子供ですかね?」
「こ、子供...だと?」
「....あ」
私の答えに店長から嫌な空気が流れる。何かに怒ったような...そんな雰囲気。
なんだかいやなよかん。
「だ、だ...!!」
「店長...?」
言い方間違えたんじゃーー。
そう考えるも、時既に遅し。
「ーー誰との子供だぁ!それはぁ!!」
店長の咆哮が店内に大きく響き渡った。
そのまま見終わって帰られる方。少し待ってください。
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