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聖女になります!2

戦闘を片付けた革命軍は、クリスタを連れて革命軍の本拠地に戻っていた。少し郊外の、大きな食堂のあるその本拠地は昔は宿だったらしく、異世界人のクリスタも部屋を与えれ過ごすことができるらしい。全員が住んでいる訳では無いが、ジールやテオドール、また女性隊員も含めた十数人がここで暮らしている。クリスタはここで暮らすルールなどをジールに教わっていた。

 

「だから、困ったことがあれば俺や、聞きにくいことなんかは女性隊員に聞くといい。」

「はい、これからよろしくお願いします!」


 クリスタはオレンジ色のランプに金髪をキラキラ煌めかせながら答えた。新しい肉体を鏡で見た時1番驚いたのはその、まさに聖女といった容姿にであった。薄い白金の髪にグリーンの瞳。圧倒的美少女っぷりに動揺したのだ。こんな容姿でヒールチートなんて使ったら、そりゃ聖女と崇められるのにも納得した。この世界で聖女としてみんなを救う、そんな覚悟をさっき決めたばかりなのに、自分の体にはまだ慣れない。まあ、1度死んだ身だし、この世界には攻略対象を始めとした美形が溢れているのでそのうちこれが普通になるだろう、そうぼんやり想像していた。


「あ、いいところに。シュウ!」

 

 ジールの声を聞いてクリスタは早速心臓が止まりかけた。せっかく生き直したところなのに、せっかくジールの顔面に慣れてきたところだったのに。誰かを探していたようだったが、呼ばれた声に推しがこちらに近づいてくる。クリスタは何とか動揺を隠し、席を立ち挨拶をした。できるだけ変な女だと思われないように、背筋を伸ばして。


「初めまして、シュウさん。聖女のクリスタと申します。これから、よろしくお願いします」

 

「......ああ、よろしく、聖女様」

 

 一瞬の間のあとシュウは穏やかな笑みを浮かべて応えた。どこか憂いを帯びたその表情はクリスタの癖である。心臓が飛んだり跳ねたり大忙しなのを必死で隠しながら、クリスタは笑みを貼り付けていた。

 

「私、みんなを助ける聖女になります。必ず!」

「そうか...頼りにしてるよ」

「突然呼んですまなかったな、シュウ。」

「いえ、じゃあこれで、失礼します」

 

 シュウは一礼して去っていった。なんだかいい匂いもした気がした。ジールは少し眉を下げながらシュウを見送り、大きなため息をついた。

 

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもないんだ。それより今日はもう休んでいい、色々起きて疲れただろう。」


 穏やかに笑うと、目尻浮かんだ小さなシワに影が落ちる。ジールはオレンジ色のランプに照らされたクリスタの白金の髪を、眩しそうに見ていた。


 

 階段を登り一番奥の右手側の部屋が空いているらしく、そこがクリスタの部屋となった。木製のドアを開けると、人が住んでいなかった割に掃除が行き届いているようで、埃っぽさもない。ベッドも綺麗に整えてくれていたようだ。クリスタははやる気持ちを押えながらドアを後ろ手に閉め、ベッドに飛び込み枕に顔を埋めた。そして、

 

「ムゥーーーー!!!」

 

 絶叫した。色々とキャパオーバーだった。当然である。死んだと思ったら転移して、その転移した世界にはあの日攻略したイケメンたちが生きている。クリスタ自身、この感情がなんなのか分かっていなかった。ただ、激しく興奮はしていた。死んだ時も痛みをあまり感じずに、どこか他人事のようだったからか恐怖や悲しみはあまりない。むしろその後の「聖女クリスタ」として転移したことの方が、クリスタの心をしっちゃかめっちゃかにしていた。思春期の恋する乙女のように、枕に顔を埋め足をジタバタさせながら、今日出会った攻略対象達のことを考えていた。

 

 まずジール、格好良すぎた。そもそも「助けてッ!聖女サマ」の中でもスパダリ副隊長枠ではあったのだが、いちいち色気がありスマートに助けてくれる。しかも戦闘も強いようだ。クリスタは工藤千歳の頃から、年上に弱かった。当然身悶える。

 そしてテオドール、さすがに主人公だった。クリスタはそもそもそんなに明るいタイプではないので、ああいった真っ直ぐなワンコのような男に免疫がなかった。キラキラ笑いながら「君のおかげ!」なんて言われたら、吃らないように意識的に冷静でいようとしていただけで、内心は激しい光に焼き尽くされそうだった。

 そして、シュウ。画面で見るよりも穏やかそうで憂いを帯びた印象で大変に癖であった。画面越しに、あの襟足のしっぽを掴みたいと何度思ったことか。ミステリアスお兄さんは見ているだけで大変に乙女心を揺さぶる存在感だった。

 最後に、ジークフリート。彼とは会ったとは言えないかもしれない、遠目に目が合っただけだ。だが、たしかにシナリオ通りの聖女への執着を感じた。ジークフリートがなぜ不死の存在なのかはシナリオ内で明らかにならなかったが、その孤独を癒したいと思わせる存在感とシナリオ内で結ばれた時の重く甘い恋人扱いを思い出してしまう。聖女になったからには、彼も救えるのだと思うと胸が熱くなった。

 

 とにかく、本当に「助けてッ!聖女サマ」の世界に来てしまったのだ。クリスタは、ひとしきりジタバタしたあと電池が切れたように眠った。一日で起きていい情報量ではなかった。白い月の光が窓から伸びて、クリスタの髪を照らしていた。


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