↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Pomegranate II  作者: Uta Katagi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/23

誕生日の約束

 詩は、昔バスク料理店を訪れた際に、バスク十字のイヤリングを着けていた不思議ちゃんが言った言葉を思い出した。

 『旗に妖精が宿るオークの樹が描かれているってことは、バスクには妖精さんがたくさんいるかもね。」


 妖精の話に詳しい不思議ちゃんは、人間が妖精の国に向かうには水辺を超える話が多いことを話してくれた。一方、妖精達が現れるときは、よくオークの樹が出てくるらしいとも話してくれた。

 『妖精の話しには、樫の樹がよく出てくるよ。どんぐりが樫の樹になる話がよく書いてあって、どうも妖精たちは樫の樹が好きみたいなの。』


 そういえば、日本の国産伝説でもイザナギ、イザナミは最初に天から地上に柱を立ててこの地に降りてきたという。天界の存在が地界に降り立つときには、樹や柱が関係するようだ。


 このことは、南の面から東の面に向かうときと、東の面から南の面に向かうときとでは境界となる稜が違うことを意味していると詩は思った。だから、真理の書ではその方向を区別して、四つの面を隔てる稜は合計八つ存在すると記載されていたのだと納得していた。


 そう樫の樹は、天界から地界への境界に違いない。それが古代からの神話にも伝わる伝承だ。日本の神社にある御神木もその境界を意味している。巫女の経験を持つ芽依ちゃんが、樫の樹のある場所を指定してきた。彼女は、あの樫の樹の境界で何を話してくれるのだろう。いっちゃんがこの世界に現れる秘密を明らかにしてくれるのだろうか。


 詩は期待に満ち溢れた気持ちで、芽依ちゃんと具体的に公園で会う日程を相談した。その日程調整のためにカレンダーを確認すると、今年の詩の誕生日は週末の土曜日にあたっていた。しかも、芽依ちゃんも詩もその日は会社の仕事がなくて、スケジュールは空いていた。忙しい二人の空いている日がなんと詩の誕生日。二人とも全く異論はなかった。会合の趣旨に合致する。少し先になるけれども、二人は、詩の誕生日の当日に会う約束をした。彼がいなくなった後、誕生日の当日に誰かに祝って貰えるお誕生会。詩は嬉しくて、何度も芽依ちゃんにお礼を言った。


 こうして芽依ちゃんと長い電話をした後、スマホをテーブルの上に置いたとき、プチが歩み寄ってきた。こちらを見上げる瞳が何かを要求している。そういえば、夕飯はまだだった。長い移動だったし、お腹がすいたのかもしれない。

 「プチ、ごめんね!お腹空いたよね。待っててね。ご飯出すからね。」


 詩はキッチンの方に移動し、上の棚からキャットフードを取り出してプチ専用のご飯のお皿に盛りつけた。猫ちゃん用のお水も出して、それをプチの前に『どうぞ。』と置いた。


 可愛いプチが食べ始める様子を眺めながら、詩は来月に向けて思いを馳せた。今年は、芽依ちゃんとプチと一緒に樫の樹の下でお誕生会。そこで、巫女さんの経験のある芽依ちゃんから神様の秘密を聞く。その様子を想像するだけで何だかワクワクしてきた。


 これまでは、今年の誕生日を迎えることが少し憂鬱だった。来月になると新たな年代の歳になってしまうからだ。だけど、今は芽依ちゃんの誕生会のお誘いでその気分が一気に晴れた。


 『早く来月にならないかな。』

 詩は、芽依ちゃんとの会合を今からとても待ち遠しく思った。



参考: Pomegranate I

    第五章約束 オークの樹、妖精の国

          バスク十字

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。