神様の秘密とは
芽依ちゃんの説明に詩は圧倒されて、反論の余地は全くなかった。芽依ちゃんが著名な先生に思えた。三大ピラミッドにこんな意味があったなんて、今まで想像だにしなかった。
その芽依ちゃんが、更に言葉を繋いだ。
「古代エジプトの建築技術では、逆さピラミッドは建設できなかった。だけど古代エジプトの神官達は、この世界に精神と物質が存在するという真理を伝えるために、膨大な労力をかけて三つのピラミッドを建造した。実はそのピラミッドに神様の秘密が隠されているの。」
「神様の秘密。」
その言葉を聞いて、詩の表情が変わった。精神が存在する東の面との稜を行き来できる神様の秘密。その秘密を知れば、いっちゃんと巡り合うことが出来る。芽依ちゃんは、その秘密が三大ピラミッドにあるという。そのピラミッドの中で、特に目に見えない精神を表すのが逆さピラミッド。
そういえば、ルーブル美術館の地下にある逆さピラミッドも芸術作品という意味で精神の象徴だ。そのルーブル美術館の地上の入口は、ガラス製の美しいピラミッドの形状に設計されている。つまり、ルーブル美術館の地上と地下にも、ピラミッドが釣り合うように配置されている。人々が意識しているのか、意識していないのかは不明だが、人類はこの世界の至るところに、世界の真理に繋がるヒントを伝承している。
過去を振り返ると、いっちゃんが茶室の中の図書館に遺した書籍にもいろんなことが書かれていた。夢分析の本には、人の心は階層構造になっていて、一番深いところには普遍的無意識という人類共通の心が存在すると書かれていた。また別の本『宇宙と量子と心』という書籍には、精神世界と物質世界はばらばらに存在している訳ではなく、ある原理に基づいて存在することが記載されていた。
一方、実家で父親と見た最先端科学の特集番組は、ペアになる量子が時空を超えることを伝えていた。詩は、その番組を見て思った。もしかすると、人間の脳の中の小さな量子も時空を超えることが出来て、人類に共通する普遍的無意識を構成しているのではないだろうか。もしそうなら、無意識の世界で人類はつながっているので、遠く離れた世界各地の神話に共通性があったとしても、全然不思議ではない。つまり、その無意識の中にある知見こそが人類に共通する絶対的な真実、つまりこの世界の真理なのかも知れない。
だとすると、古代エジプトと日本の神社に共通点があることも、人類が無意識の世界で繋がっているからなのかも知れない。巫女の経験を持つ芽依ちゃんが今日この樫の樹の下で、稜を越える神様の秘密を明らかにしてくれようとしている。詩は期待を胸に芽依ちゃんの方に向き直った。すると、彼女もこちらに向き直り、詩に向かって語り始めた。
「古代エジプトの風景を思い浮かべてみて。三大ピラミッドの建設時期、最初にスフィンクスが建造された大地に、クフ王のピラミッド、その次にカフラー王のピラミッドが建設された。そのカフラー王のピラミッドが完成した直後は、スフィンクスの背後に二つの大きなピラミッドが勇壮に聳えていた。今は剥がれてしまっているけど、完成時のピラミッドは、真っ白い石灰岩の化粧板で覆われていたというから、二つのピラミッドは太陽の光を反射して燦然と輝いていたはず。」
芽依ちゃんの話に引き込まれて、詩もピラミッドが建設された当時の景色を思い浮かべた。スフィンクスが護る大地に三つのピラミッドが建造された時代の風景、詩はその景色に古代のロマンを感じた。ここで膝元にいる自宅のスフィンクス、プチがズズッと詩の方に身体を委ねてきた。高級おやつでお腹が膨れて昼寝をしようとしているだろうか。詩はその可愛いモフモフのお腹を優しく撫でた。
参考: Pomegranate I
第三章探究 量子と心
第四章真理 心の階層
神様の秘密
ルーブル美術館
第五章約束 天界と地界
小さな王
第六章終章 科学番組
魂は無意識の心




