八百万の神
「大地が精神の穴に吸い込まれて消えてしまわないようにするためには、その穴と同じ大きさの物質が必要になるの。つまり、南の面で精神と物質が安定に存在するためには、その穴が落ちてきたとしても大丈夫なように、その穴を埋めるだけの物質が必要になる。だけど、カフラー王のピラミッドだけでその穴を埋めようとしても、カフラー王のピラミッドはクフ王よりも一回り小さいから完全には埋まらない。だから、足りない分を埋めるためにもう一つメンカフラー王のピラミッドを最後に建設したのだと思うの。」
詩の脳裏にクフ王の逆さピラミッドが天空に開けた空洞が、カフラー王とメンカウラー王のピラミッドで埋められていく様子が浮かんだ。マイナスの符号を持つクフ王の体積は、プラスの符号を持つカフラー王とメンカフラー王の体積の合計値と一致するので、空洞は完全に埋まる。これが精神と物質の大きさが釣り合うということだと、芽依ちゃんは言っている。
先の芽依ちゃんの経済の例え話でいうと、資本主義では大きな借金があっても、持っている資産と釣り合っているのなら、会社の経営は大丈夫だということだ。
ただ、ここまでは理解したが、詩は一つ気になったことがあった。
「精神と物質の大きさが釣り合うということはわかったけれど、物質を象徴するピラミッドが、どうしてカフラー王とメンカウラー王の二つもあるの?」
芽依ちゃんは少し考えてこう言った。
「実はそこはまだはっきりとわからないのだけど、日本では八百万の神と言って、神羅万象あらゆるものに神が宿ると言われている。つまり、精神は生物を形作る動物の身体や植物の幹や葉だけではなく、土や岩や川の水にも宿ることができるのかもしれない。だとすると、一言で物質といっても、生物を構成している身体や幹や葉などの物質と、土や岩や川の水のように生物を構成していない物質は分けて考える必要があると思うの。だから、物質を表すピラミッドは二つに分かれている気がする。」
神羅万象あらゆるものに神が宿る…
確かにその言葉は聞いたことがある。それって、どういうことなのだろう。詩は、これまでのことを考えてこう話してみた。
「もしかして、神様が宿るって量子の世界の話なのかな。どんな物質も小さな量子で出来ている。そこにペアになる量子が入っていれば、時空を超えてつながることが出来るかもしれない。」
詩の話を聞きながら、芽依ちゃんが嬉しそうに頷いた。
「それって、ロマンチックなお話よね。生物以外のものにだって、人の想いは宿るかもしれないってことだよね。それを古代の人は、神羅万象あらゆるものに神が宿ると伝えていたのかも知れない。そして、その言葉は今も残っている。」
芽依ちゃんの話に、詩は相槌を打った。
「今も残っている伝承って、真理かもしれないよね。」
詩が肯定的な発言をすると、芽依ちゃんはこう纏めた。
「そうだとすると、196+169の合計値で太陽の軌道365を表すクフ王とカフラー王のピラミッドは生命を表しているから、カフラー王のピラミッドは精神が宿る物質の象徴だと思う。一方、メンカウラー王のピラミッドは精神が宿らない物質の象徴。その二つを合わせて始めて精神の象徴のクフ王のピラミッドと釣り合う。それが、三大ピラミッドが伝えるこの世界の真理なのよ。」
参考: Pomegranate I
第六章終章 神秘の数字365
365の意味
しめ縄の数字
世界の成立要件




