特別な関係
芽依ちゃんは、説明を続けた。
「クフ王の底辺が目に見えない数字の虚数だとすると、その長さは14iで表される。ピラミッドの底面は正方形だから、その面積はその14iの二乗。だから、詩ちゃんが言うようにその敷地面積は-196。ピラミッドの体積は底面積に高さをかけて3で割るから、敷地面積がマイナスの符号を持つのなら、その体積もマイナスの符号を持つことになる。」
まるで学校の数学の授業のような説明だったが、芽依ちゃんの言うことはここまでは何とか理解できた。
その詩の様子を確認して、芽依ちゃんはこう言った。
「棒グラフや柱状グラフでも数字がマイナスのときは、下に向かって伸びるグラフにするよね。」
詩は、会社で作成した売上の推移のグラフを想い出した。
「確かに、売上のグラフも赤字になったら、縦軸は下向きに伸びるグラフで表示する。そういうことなの?」
「そう、体積もマイナスになったら下向きに伸びる表示になるということ。ピラミッドでいうとそれは逆さピラミッド。だから、クフ王のピラミッドは、本当は天空にあるの。地上にあるピラミッドはそれを鏡のように映したもの。」
詩は、天空や逆さという言葉を聞いて、以前に見た不思議な夢を想い出した。そう、それは天空の絵付師が放り投げたネコちゃんの色が反転する夢だった。似たような話として、妖精の国への航海中に、羊の色が反転する島があったという神話を想い出した。今までずっと不思議に思っていたが、もしかしたら、あの夢や神話は、目に見えない精神を二乗して目に見えるようにしたら、マイナスの符号が付くことを伝えているのだろうか。
芽依ちゃんの説明に納得する一方で、詩はまだ疑心暗鬼になっていた。科学が発達していない古代において、本当にこんな複雑な数学を使う設計をしたのだろうか。もしそうだとしても、どうして芽依ちゃんはここまで言い切れるのだろう。詩は芽依ちゃんにあらためて問いかけてみた。
「どうして、芽依ちゃんはそこまで言い切れるの?」
素直に問いかける詩に対して、芽依ちゃんはこう答えた。
「私も、最初は疑問を持ったの。でも15番目のレポートを見て、クフ王のピラミッドがマイナスの体積を持つ逆さピラミッドであることに間違いないと確信したの。」
「え、15番目のレポートに、いったい何が書かれていたの?」
詩は驚いた。もちろん、詩もそのレポートを見たことがあるが、そんな大事な記述があることには、全く気づかなかった。
「15番目のレポートはスフィンクスに関するレポートなのだけど、そこに三つのピラミッドの測量結果が纏められていたの。実はそこに書かれた3つのピラミッドの体積の数字が凄いことを意味していた。書かれていた数字自体は単なる測量結果なのだけど、その三つのピラミッドの体積には、偶然とは思えない特別な関係があったの。」
「特別な関係って?」
「カフラー王とメンカウラー王のピラミッドを合わせた体積から、一番大きなクフ王のピラミッドの体積を引くと、ぴったりゼロになるの。」
芽依ちゃんの瞳の奥が輝いた。
参考: Pomegranate I
第三章探究 絵付師の夢
第四章真理 もう一つのファイル
第六章終章 羊の島
15番目のレポート




