人生に無駄なことはない
上下が反対のピラミッド…
詩は、ルーブル美術館の地下に上下が反対になっているピラミッドがあったことを想い出した。通常のピラミッドの底面が上部にあり、頂上が地下にあるピラミッドだ。
そうか、あれは逆さピラミッドだったんだ。詩がパリ旅行のことを想い出していると、芽依ちゃんが話の続きを語り出した。
「クフ王のピラミッドが精神を表しているとしたら、そのピラミッドは天空にあると思うの。」
「天空に?」
「神々は天空にいるとされるから。」
「でも、ピラミッドは地上にあるよ。」
詩の疑問に、芽依ちゃんはこう答えた。
「あの地上のピラミッドは、天空にあるピラミッドを地上に投影したものなのよ。」
「あ、そうか!」
詩は、ここで三大ピラミッドがオリオン座の三ツ星を地上に映したという話を想い出した。
芽依ちゃんは、話を続けた。
「そう、ピラミッドは鏡のように天空を映しているの。だとしたら、上下が反転するよね。地上では、天に向かって聳えるピラミッドになるけど、天空では逆さになる。」
詩は、芽依ちゃんに確認した。
「つまり、クフ王のピラミッドは、天空にある逆さピラミッドを地上に映したものだということなの?」
「そう、上下が逆さだからマイナスの符号が付いているのよ。」
「なるほど、だからマイナスなのか。」
「体積で考えるとよりわかりやすいよ。」
「体積で考える?」
「ピラミッドの大きさは、体積で表されるから。」
「たしかに、建造物の大きさは体積で表されるね。」
詩は芽依ちゃんに同意した。あの巨大なピラミッドの大きさを、その積み上げた石の数で表現する人もいる。石の数はピラミッドの体積を表わすからだ。
詩の納得した様子を見ながら、芽依ちゃんはこう言った。
「ピラミッドの形は四角推だよね。詩ちゃん、四角推の体積ってどう計算するかわかる?」
「え、よく覚えてないけど、底面積に高さをかけるのかな。」
「そう、正確には底面積に高さをかけて3で割るの。」
「あ、3で割るんだっけ。」
「うん、ここでも3が出てくるけど、その話はまた後でね。まずは、体積がマイナスになることを説明するね。」
詩は、学校で学んだ図形の体積の公式を想い出した。立体の体積の知識なんか将来、何の役に立つのかなと思っていたが、こんな時に必要になるなんて思わなかった。詩は、いっちゃんの口癖を想い出した。彼は、よく言っていた。『人生には無駄なことなんてない。』と。
このときも、そう実感した。彼が亡くなったことも、決して無駄じゃないと私は信じている。実際に、この世界の真理を追究することで、いろんなことを知ることが出来た。きっと、この知識が役立つ日が来るはずだ。人生には無駄なことなんてないから。
参考: Pomegranate I
第三章探究 段ボール箱の山
第四章真理 パリ旅行の提案
ルーブル美術館




