正方形の理由
「でも、ピラミッドはどうやってその設計で、愛や精神の存在を伝えているの?」
詩の問いに、芽依ちゃんは持っている知識を一つずつ振り返るようにこう答えた。
「目に見えない精神は目に見えない虚数で表される。その虚数は二乗すれば目に見える実数にすることが出来る。二乗で設計する建造物の敷地といえば正方形。正方形の土地の広さは底辺の長さを二乗して設計するから。だから、ピラミッドはその敷地を正方形にしたのよ。そうすれば、後世の人はピラミッドの敷地の大きさを正方形で計算することになる。」
「わざわざ、二乗を計算させるために正方形にしたの?」
「そう、こうして真理を追究する後世の人に、二乗の意味を考えさせるためにね。四つの面の存在を伝えるだけなら、ひし形でも長方形でも良かったはず。」
詩は少し考え込んだ。そして、こう言った。
「なるほど、だから私たちも、今考えさせられている訳ね。」
「そういうこと。この世界の真理を追究して、ピラミッドに辿り着いた人にその意味を気付いてもらうために。」
そう言い終わると『それが今回は私達よ。』という顔で、芽依ちゃんが目配せをしてきた。
そうだとしても、詩には疑問に思うことがあった。
「古代の人は虚数を知っていたの?」
詩の疑問に芽依ちゃんは、自信をもって答えてきた。その芽依ちゃんの答えは、まるで古代の神官達はこの世界の真理を知っている神様だと言わんばかりの答えだった。
「詩ちゃん、ピラミッドを設計した人は神様の秘密を知っている人だよ。その人は、時空を超えて遠い未来の知識を持っていたのかもしれない。」
時空を超える…
芽依ちゃんの言葉を聞いて、詩は実家で父親と話した最先端科学のテレビ番組を想い出した。それは『この世界の謎が明らかに!』というタイトルの最先端科学の特集番組だった。人気の女性タレントが出演して、最新の量子力学が遂にこの世界の真実を明らかにしたと伝えていた。
番組では、目に見えない小さな世界の現象を箱に入った二つのボールで説明していた。その二つのボールは白と黒の対になって生まれた小さな粒子を表したもので、箱に入っている間はそのボールの色はわからない。どちらのボールの色が白で、どちらのボールの色が黒なのかは、箱を開けて人間が目にしたときに始めて決まる。
現代科学の量子力学は、この箱の中の様子を白か黒かは不明だとして計算する学問らしい。この量子力学のおかげで、私たちは小さな世界の現象を半導体デバイスなどに応用し、実際にパソコンやスマホが使えるようになっているという。だから、この量子力学は既に正しいことが実証されていて、誰も異論を唱える人はいない。
だけど、問題は箱の中だという。科学者達はこの箱の中の様子を、なぜか可愛い猫ちゃんの例え話で長年、論争していた。その話は、箱の中に生死不明の猫がいるというシュレディンガーの猫という有名な例え話で、ミステリードラマのタイトルにも使われ、詩もそのドラマを自宅で興味深く見たことがある。密室の中の殺人の有無を量子力学の論争になぞらえて、謎の事件を解明しようとする意味深なドラマだった。
参考: Pomegranate I
第四章真理 アンテナ
神様の秘密
虚数とは
第六章終章 科学番組




